第2話

「·····ここか」


ホウエン帝国 東部 ケルヒャー市。


「えーっと、この街にもギルドがあるんだっけ」


依頼をかけたのは、この町の市長と王室。

とりあえず、ドラゴンの現在地の確認をするためにギルドに向かう。


「こんにちはー赤星の欠片《スターレット・ピース》でーす」


「わぁ!! アイラ様じゃないですか!! 本当に来てくれたんだ·····」


感激している受付のお姉さん。


「アイラだって?」


「あのS級冒険者か?」


「はぁ!? S級だぁ!? 嘘だろ!?」


そして近くにいた冒険者達がざわめき始めた。


「どうもー! きらっと参上、空に輝く赤き一番星! 愛の宣教師 シロガネ・アイラでーす!」


「「「「うおおおお!! 本物だあああ!!」」」」


アイドルの名乗りをあげると、その場にいた男の目がハートになる。


「はい! アイラブユー!」


手でハートを作って、ウインクをすると更に盛り上がる。


「そうだ、お姉さん地図くれませんかあとオレンジジュース1杯ください」


「はっ、はい! ただいま!」


カウンターに座って彼女の準備ができるまで待つ。


「·····けっ、なにがアイラブユーだ」


「ちょっと、ユーゴ! やめなよ!」


えっ、なに? こわっ、アンチ?

絡んでこないで欲しいんだけど、文句言うなら私が居ないところでやって欲しいなー


「すっ、すみません! アイラさん!」


「何謝ってんだよ、ミソラ。S級のくせにチャラチャラ有名人気取りしやがって、冒険者なら真面目に仕事しろよな!」


·····クソムカつくんですけど!?

なに!? 私が仕事してないとでも!?

この前だって、魔女退治したし、ダンジョン攻略、さらに高難易度クエストを数々クリアしたこの私がなんで、蔑まれないといけないんですかぁ!?

しっ、しかも! 数々の人々に愛を振りまいて、幸せを届けている私がなぜキレられなきゃいけないんですかぁ!?

まじ許すまじ! このクソガキ!!


「有名人気取りじゃなくて、本物の有名人なんだけどなぁーアイドル、シロガネ・アイラって王都以外じゃ流行ってないの? お姉さん」


「何言ってるんですか!! ファンです! 握手してください! サインも下さい!」


丁度よくお姉さんがオレンジジュースと地図を持ってきたから巻き込んだ。


「まったく、ユーゴ! アイラ様に嫉妬するのはみぐるしいですよ! 大口叩くのもいいですが、宿題はやったのですか!? それとギルドに来てることお母さんにバレたら怒られますよ!」


「うっ、うっさい、リオ姉!」


「えっなに? この子冒険者じゃないの?」


「えぇ、ユーゴはまだ12歳なんです」


街の子供 ユーゴ・エストニア


「なんだよ、悪いかよ」


「いやぁ、その可愛いなって思ってさ」


歳を聞いた瞬間、怒ってたのが馬鹿らしくなった。

いやぁこれくらいの歳って色々気に食わないよね分かるわ~


「ばっ、バカにしやがって!!」


半笑いでそう言ったら彼は顔を真っ赤にして怒る。


「でそっちのこは? ガールフレンド?」


「いっ、いえ!! ちっ、ちがいます! その·····私はお父さんを待ってるんです」


「ミソラのお父さんは冒険者なんです。今日も仕事の帰りを待っているんですよ」


街の子供 ミソラ・ミストラル


「そうだぞ! ミソラの父ちゃんはすげえんだ! お前と違ってチャラチャラしてないんだぞ!」


「·····はいはい、私だって結構強いんだけどなー」


「へっ! どうだが! 俺がすぐに追い越してやるぜ!」


「ユーゴ!! もぅ·····すみませんアイラ様」


「あーいいよいいよ、じゃあ仕事終わったら勝負してあげる。勝ったら赤星の欠片に入れてあげるよ」


「えっ!? マジ!? いいの!?」


「勝てたらね、言っとくけどユーゴくんが思ってるよりお姉さんクソ強いから。そんじゃ、行くわ。これお代ね」


「絶対だかんな! 忘れんなよ!」


はぁー面倒臭いキッズに絡まれてしまった。

仕事前にこういう事があると調子狂うんだけど·····


「はぁ·····」


ため息をつきながら車を飛ばして目的地まで急いだ。

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