第45話 既視感

いつ連絡が来るんだろう?


あの衝撃的な出会いがあった月風さんと出会って早数週間

あまりにも連絡がこないため少し不安になってきた。


「おい一?お前なんだか最近上の空だけどどうかしたのか?」


「いや、俺運命の相手に会ったらしい。」


「は?お前何言ってんだ。」


ひどくない?いや確かに意味わからないけどそこまで言うことなくない?


「でも、なんでいきなりそんなこと言い始めるんだ?」


「お前は昔から恋人とかも作ろうとしなかったし、告白されてもいつも断ってきただろ。」


たしかにそうだ。俺はどんな人に告白をされても心が揺らぐことがなかった。

それこそ月風さんに会うまでは。


「この前会ったんだよ。」


「誰に?」


「違和感の正体に。」


「どういう意味だ?」


「俺がずっと前からいっったこと覚えてるか?」


「ん?ああ。俺達と他にもう一人いたとか言ってたやつか?」


「ああ。そうだ。」


「で、結局誰だったんだ?」


「同い年の女の人だった。」


「大学生?」


「ああ。多分な。」


「名前は?」


「月風涼葉って人だったんだけど。」


「なんだ。有名人じゃないか。」


どういうことだ?月風さんは有名人だったのか?

聞いたことないぞ。


「そうなのか?」


「ああ。この大学の人だしめちゃくちゃモテてんだぞ?」


「え、そうなのか。知らなかったな。」


「でも、なんでお前はその人が違和感の正体だと思ったんだ?」


「お前らのことも俺のことも知ってたんだよ。」


「どういうことだ?」


「お前が柚木に告白した時のことや行った場所、日時すべてが当てはまってるんだ。」


「それは確かにおかしいな。俺もお前もそういう系の話は言いふらしたりしないしもちろん柚木もそういう事を言いふらすことをしないしな。」


腕を組みながら考える隆介。


「そうなんだ。あと、俺が誰にも言ったことのない秘密も知ってた。」


「それは俺も知らないことか?」


「ああ。そうだな。」


「俺に隠し事してたんだな。」


「ごめん。」


「なんてな。誰でも隠し事の一つくらいあるもんさ。」


隆介は気さくに笑った。

(こういう所がこいつのいいところなんだよな。)


「今度俺にも紹介してくれよ?もちろん月風さんも一緒にな。」


「ああ。もちろん。」


そんな会話をした日の夜


ついに月風さんからメールが来た。

どうやら次の日曜日に遊園地に誘われた。


やっぱり緊張するな。

こんなにドキドキするのは初めてかもしれない。

俺はその日の予定が空いている旨を送信し二人で時間を決めて今日は寝ることにした。


違う次元の俺はあんなに綺麗で可愛い人といつも一緒にいて緊張しなかったのか?

でも、彼女は最初から距離感が近いから本当にドキドキする。

この前だって名前で呼ばれたときすごい緊張したし、

きっと、月風さんは昔の俺と同じように接してるんだろうな。

だからこそ、少し怖く感じる。

失望されたりしないかとか、昔の俺と違い過ぎて嫌われたり。


(気がめいるだけだし考えるのはやめよう。)


寝ることにしよう。


一は目をつむった。

来週の日曜日に思いをはせながら。



すぐに時間は過ぎて待ちに待った日曜日がやってきた。


俺は少し早めに待ち合わせ場所に向かった。

正直今まで異性の人と二人っきりで遊ぶなんてことは無かったので俺はとても緊張してしまっている。

服なども柚木と隆介と一緒に選んだものだ。

まあ、その時に柚木の着せ替え人形にされて大変だったが。



「俺の心臓持つかな?」


そこから数分後に月風さんが来た。


「ごめん。待った?」


そこには白を基調としたワンピースを着ていて長い髪と相まって清楚という印象を受ける。

正直とてもかわいい。


「い、いや今来たところだから大丈夫。」


「そう?よかった。」


「じゃあ、行こ!」


「うん」


これ、俺の心臓持つかなぁ~~

そんなことを考えながら俺は月風さんについていった。


その日の遊園地は月風さんについていって回ったがとても楽しかった。

だが、それと同時にずっとデジャブのような感覚を覚えていた。

ずっと昔に来たことがあるような、なんだか目の前でカップルのイチャイチャを見せつけられたような。

自身の内側に俺じゃない何かが芽生えるようなそんな感覚。



「今日は楽しかった?一君。」


「うん。すごく楽しかったよ。」


本当に楽しかった。

だが、同時に今俺は強烈な頭痛を味わっていた。


「でも、なんだか顔色が悪いように見えるけど大丈夫?」


「ああ。大丈夫だ。心配かけてすまない。」



そんなこんなで帰っているととある公園が目に入ってくる。


「一君、少しあの公園で休んでいこう。」


「そうだね。ほんとごめん。」


「気にしないでよ。」


柔らかい笑顔を見せてくる月風さんに見とれてしまう。

ほんとに可愛いな。



「っっ」


急にとんでもない頭痛に苛まれる。

頭にノイズが走っているような感覚



「…………………………………まで…………………………………君に…………………………………てくれた。…………………………………とう。…………………………………君…………………………………きです。…………………………………ださい。」


ノイズに紛れて断片的な言葉が聞こえてくる。

だが、ノイズがひどすぎて何を言っているのか聞き取ることができない。


「本当に大丈夫?」


「ああ。大丈夫。今日はそろそろ帰ろうか。」


「うんそうだね。また今度遊んでくれる?」


「ああ。もちろん。次会うときは隆介や柚木も誘ってもいいか?」


「うん!ありがとう。一君。」


満面の笑みを見せる月風さんに俺は見とれてしまっていた。


本当に好きになってしまいそうだ。


「じゃあ、また。」


「うん。またね。」


……………………………………………………………………


その日の夜

久しぶりに夢を見た気がする。

夢の中では少年が少女をかばって刺された。といった内容の夢だった。

だが、それは夢というにはあまりにもリアルだった。


「なんでこんな夢を見たんだろう。」


既視感を覚えながら俺は大学に行くべく身支度を開始した。


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