第44話 違う次元の話
インターホンが鳴った。
(何か荷物を頼んでいただろうか?)
俺はそんなことを考えながら俺は玄関を開けインターホンを押した人物を見る。
「すいませんが、どちら様ですか?」
その人はとても可愛い人だった。
でも、俺はその人を知らなかった。
いや、見覚えはある気がするのだが、どこで見たのかを思い出すことができない。
そもそも、仲のいい知り合いなんて俺はあの二人くらいしか思いつかない。
そんなことを考えていると目の前にいる女性の瞼から一筋の雫がこぼれた。
「え、あの大丈夫ですか?」
慌てて声をかけるが返事はなく聞こえてくるのは嗚咽だけ。
でも、何故だろう。
こんな変な場面なのに懐かしく感じる自分がいた。
こんなことが昔にあったような感覚がする。
いや、確かにあった。
でなければ今のこの気持ちは何なのだろうか。
「すいません。俺達どこかであったことありますか?」
俺は気になって聞いてみることにした。
俺がその言葉を発するとさらに女性の嗚咽がおおきくなった。
(まずった、今聞いたらダメだったかも。)
そして、今この状況ははたから見れば男が女性を泣かしているようにしか見えないため、そろそろ周りの視線が痛くなってきた。
「とりあえず、中で話しませんか?」
周りの視線に耐えかねて俺は今もなお家の前で嗚咽をこぼしている女性にそういった。
「うん。」
とりあえず、俺はその女性を家に招き入れて話を聞くことにした。
「飲み物はお茶で大丈夫ですか?」
「あ、うん。」
冷蔵庫からお茶を取り出してコップに入れて女性の下へと持っていく。
「どうぞ。」
「ありがとう。」
そう言いうと目の前の女性はコップを受け取り飲む。
「少しは落ち着きましたか?」
「はい。ありがとうございます。」
(いきなり敬語になったな。)
「じゃあ、事情を聴いてもいいですか?俺の名前と住所を知っていた理由とか。」
俺は今一番気になっていることを聞いてみることにした。
「それは、」
話しにくそうに眼をそらす女性
そんな一挙手一投足を俺は懐かしく感じていた。
「いや、無理に聞こうとは思わないんですけどやっぱり気になって。」
「そうですよね。」
女性は再び黙り込んでしまう。
「じゃあ、お互いに自己紹介とかしませんか?」
「自己紹介ですか?」
「ああ。君はもしかしたら俺のことを知っているのかもしれないけど、
俺は君のことを知らないからどうせならお互いに自己紹介しない?」
「そうですね。じゃあ、私から。」
「私の名前は月風 涼葉。大学二年生です。」
「俺は陰野 一。同じく大学二年だ。」
どうやらこの女性、月風さんは同い年だったらしい。
「で、月風さんはどうして俺の住所と名前を知ってのか聞いてもいいですか?」
「私たちは同い年だから敬語じゃなくていいよ。」
「あ、そう?って話そらすなよ。」
露骨に話を逸らそうとする月風さん
「バレたか。すごい荒唐無稽な話だけど信じてくれる?」
少し不安そうに目の前の女性、月風さんは一に目を向ける。
「聞いてみないとそれはわからん。」
「わかったよ。まず最初に言うけど私たちは違う次元?みたいなところで出会ってるの」
(いきなりすごいのが来たな。)
「で、そこでは私は虐められててそのとき助けてくれたのが一君だった。」
「そのあとは、仲良くなって遊ぶときは一君と私と清水君、それから柚木ちゃんと遊んでたの。」
(あれ?それってつまり俺が感じてた違和感の正体じゃないのか?)
一は今まで自身が感じ続けていた違和感の正体に少しづつ近ずいていっている感覚があった。
「それで一君は最後不治の病で死んじゃったの。」
「で、君が死んじゃってから三年後いきなり神様が現れて私を過去に送ってくれたの。」
「待ってくれ。もしかして君はあの公園で俺に病院に行くことを進めてくれたお姉さんなのか?」
「そうだよ。でもそのあとこっちに戻ってきたら一君たちの連絡先が全部消えてて、家に行ってみたら一君は私のことを覚えて無くて。」
そう言いながらまた彼女は涙ぐみ始めてしまった。
(それなら、確かに筋は通ってる。)
「ごめん。でも多分君の話は本当だと思う。俺の友達のことを知ってるのもそうだし、俺の病気のことも知ってる。何より昔のお姉さんの話は誰にもしてないのに知ってるってことはきっと本人なんだと思うし。何より君といるとなんだか懐かしい感じがするんだ。」
「本当に?」
「本当だよ。」
「そっか、じゃあさ一つお願いなんだけど私と付き合ってくれない?」
「え?」
「あ、言い間違えた。今度一緒に遊園地に行ってほしいの。」
顔を真っ赤にしながら早口でそういう月風さん
「う、うん。わかった。じゃあ、連絡先交換しようか。」
「うん。そうだね。一君。」
そういって俺たちは連絡先を交換した。
やっと、心臓に空いた穴がふさがった。そんな感覚を俺は覚えた。
「てか、名前呼びなんだ。」
「あ、ごめん。いや、だったかな?」
少し不安そうに聞いてくる月風さん
「いや、あっちの僕に接してたように接してくれて構わないよ。」
「ありがとう一君。じゃあ、遊園地に行くとき連絡するね。」
「わかった。」
そう言って月風さんは帰っていった。
「多分、あの人が本当のことを言ってるんだろうな。じゃないとこの安心感には説明がつかない。それに、さっき告白みたいなことをされたけど今までみたいに罪悪感や忌避感は感じられなかった。」
一は涼葉を見送った後に玄関で腕を組みながら考えていた。
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