次元を歪めたありえないはずの世界

第42話 違和感

目が覚めると私は悲願の木の前にいた。


「私は一君を救えたのかな、、、」


私を過去に送った神の話が正しければ私がこっちに戻ってきたということは今は一君が生きている世界線ということになる。


「早く連絡しなくちゃ」


私はスマホのロックを開いて絶句する。

一君や柚木ちゃん、清水君の連絡先がすべて消えているのだ。


「どうして、、、」


真っ先に一君のお墓があった場所に向かう。


道のりは過去に戻る前に通った道と変わらなかった。


一君のお墓の前に行って私は安心した。


一君のお墓があったはずの場所には何もなかったのだ。


「よかった。」


この時初めて私は一君が死んでいない、いやまだ生きていることの実感がわいたのだ。


「じゃあ、なんで連絡先が消えてるんだろう?」



…………………………………………………………………………………………………



ずっと昔から違和感があった。

ぬぐい切ることができない違和感。

そこにあったはずのものがない。

いや、そんなものではない。

心臓にぽっかりと穴が開いたような感覚。


「…………じめ」


「おい!一!」


その声で俺は目を覚ます。


「ん?ああ、おはよう隆介。」


「おはようじゃねぇよ一。お前いつまで寝てるんだ。もう講義終わっちまったぞ。」


呆れた顔で言ってのける隆介。


そうだった。今は大学の講義中だった。


「起こしてくれてありがとな。隆介。」


「ん?ああ。まあいいけどさ。お前そんなんじゃ進級できないぞ?」


「ああ、そこらへんは大丈夫だ。勉強はできるからな。」


「はぁ。お前のそういう所むかつくわ。」


少しあきれながら隆介は笑った。


「そういやお前今日は柚木とデートに行くんじゃなかったのか?」


「ああ。もちろん忘れてないさ。俺はそろそろ行くけどお前はどうするんだ?」


「俺は、家帰って適当に暇でも潰しとくさ」


「そうか?お前も早く彼女の一人や二人作ったらどうなんだ?」


(こいつ俺のおかげで柚木と付き合えたようなもんなのに調子にのりおってからに。

けしからん)


「いや、そうなんだけどさ、」


「お前だって結構モテてるだろ?」


そうなのだ。

実際に俺は自分で言うのもなんだがモテているといってもいいくらいには異性から告白をされている。


だが、、、、、、


「いや、そうなんだけどさ。なんか俺には大切な人がいたような気がするんだ。」


「またその話かよ。お前高校のころから言ってたよな。いつも俺達三人だったのにずっと一人足りない気がするって言ってたもんな。」


「ああ。本当にそんな気がしてならないんだ。海に行った時もバーベキューした時も遊園地に行った時もずっと一人足りない気がしてならなかったんだ。」


実際にそうなのだ。

ずっと誰かひとり足りないような、俺には大切な人がいたような気がするのにそれが誰だかわからない。


その人に関する記憶だけモザイクが掛かっているような感じでどうしても思い出すことができない。


「でも、ずっと言ってるだろ?そんなことは無かったってさ。」


隆介はやはり少し呆れたように言う。


「まあ、いいや。俺はそろそろ行くからな。」


「ああ。楽しんで来いよ~。あと絶対結婚式には呼べよ~」


俺がそういって手を振ると隆介は顔を赤くしながら帰っていった。


 誰なんだろう?いや、そもそもそんな人俺にいたのだろうか?

 でも、異性から告白されるたびに罪悪感と忌避感が襲ってくるので何の関係もないとは思えないのだが。


「まあ、いいか。俺も帰ろ。」

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