第40話 過去回帰
貴様の願いはそれか?
私が願いを悲願の木に祈っているといきなり脳内にそんな声が響き渡る。
その声は男性とも女性とも判断がつかないような声だった。
「え、」
悲願の木をもう一度見ると、その木の根元に小さな少女とも少年ともとれる子供が立っていた。
頭髪は白く瞳も白色だった。
身長は140cmほどであり小学生くらいに見えた。
その人は後ろにある満開の悲願の木から落ちる花びらと相まってとても神々しく見えた。
「ん?聞こえなかったのか?貴様の願いはそれだけか?」
今度は、はっきりと子供が声を出す。
やはり中性的な声だった。
だが、決して弱弱しい声ではなく優しい口調ながらも威厳のようなものを感じた。
「私の願いですか?」
子供のお遊びだろうけど、この子はなんだかふざけているような様子はなかった。
「おお、聞こえておったか。して、お前の願いはなんじゃ?望みを一つかなえてやろう。」
私が返事をしたことがうれしかったのか子供は上機嫌でそんなことを言ってくる。
でも、今の私はこんな子供にも縋ってしまいたいと思うほど追い込まれていた。
「なんで、ですか?」
でも、なんでいきなりこんなことを言ってくるのか気になった私はこの子に理由を尋ねてみることにする。
「おぬしはいつもこの木の下で願っておった。健気にほば毎日。陰野一という男のことを。だからおぬしにチャンスを与えたのだ。」
なんで、そんなこと知ってるんだろう?
「そうですか。」
いきなりなんなんだろう?ドッキリにしてもたちが悪い。
ドッキリじゃなかったとしても非現実的だ。
でも、可能性があるならば。
「私の願いは、一君を生き返らせてください。」
やっと見えた一筋の希望。
私はこの時歓喜していた。
この子なら本当に叶えてくれるようなそんな予感がしたんだ。
「それは無理じゃ。」
私が希望を抱いた数秒後
こんな無慈悲な言葉が飛んできた。
この子殴ってしまおうか、、、、、、
本気でこんなことを考えてしまった。
「何でもとはわし言ってないし、その願いの替えになるような事ならできる。」
今となってはこんな言葉信用できるわけがない。
でも、やっぱり私は縋ってしまった。
「それは何ですか?」
こんなふざけた人でもチャンスがあるのなら私はすがるしかない。
私がこの子供に問いをなげかけたその数秒後に返答が帰ってくる。
「君を過去に送る。そして君の望む「陰野一が生きている世界」が確定した瞬間に今の世界に戻る。これくらいならできる。」
本当にそんなことができるのか。
何よりも、こんな子供を信用してしまってもいいのか、
私の中で様々な感情が渦巻いていた。
でも、その中で最も強かった感情はやっぱり一君を生き返らせることだった。
「そんなことがほんとにできるの?」
私は不安になり聞いてみることにした。
「ほっほっほ。おぬしにはいっていなかったの~。わしはおぬしらの言う所の神という存在じゃ。」
え、
「わしは悲願の木に宿っておってのぉ~。毎日健気に同じ願いをするおぬしの願いをかなえたくなったのじゃ。」
自称神様はそんなことを言って豪快に笑っていた。
本当にできるんだ!
3年間も夢見てた。
一君を生き返らせる可能性が、、、、、、
「どうやらそれでいいようじゃのぉ。ではせいぜい頑張るのじゃ。」
自称神様はそういうと手をあげて勢いよく振り下ろす。
すると体から平衡感覚がなくなる。
視界が白く塗りあがる。
体から徐々に視覚、聴覚。触覚、嗅覚が無くなってくる。
もう何も感じない。
地面に足がついているのかいないのかもわからない。
自分が呼吸をしているのかもわからない。
何も考えることができなくなった。
徐々に体に五感が戻ってくる。
地面に足がついた。
そう感じたとき、私は目をあけることができた。
あたりを見渡すと私は悲願の木の下に立っていた。
だが、あの桜に少し違和感を感じてしまう。
私は時刻を確認しようとポケットに入っているスマホを取り出す。
時刻は、ダメだ。スマホが狂ってる。
圏外表記になってるし。
とりあえず太陽の位置的に午前ではありそうだ。
でも、それ以外は今の私にはわからなかった。
ただ一つ、確かなことは私が今過去にいるという事だった。
でも、今がどれくらい昔なのかはわからない。
だから、とりあえずカレンダーなどを探すことにする。
カレンダーなんてどこにあるんだろう?
街には時計などは置いてあったがさすがにカレンダーまではおいていなかった。
適当に近くのコンビニに入ると奇跡的にカレンダーが貼ってあった。
カレンダーを確認するとそこには、2010年3月24日と書いてあった。
つまり、今からちょうど13年前である。
私と一君が7歳の時である。
だが、確か一君の話によると彼は昔は今とは違う所に住んでいたらしい。
場所は一君に聞いてるけど、会えるかどうかは別の問題だ。
頑張らないと。
私は一君を生き返らせるために一歩を踏み出した。
まず、私は電車に乗り一君の故郷にたどり着いた。
電車を二回ほど乗り換えたけど。
意外と予想していたよりも遠かったのだ。
一君は子供のころはよく公園で遊んでいたそうだ。
清水君に聞いたけど病気が発覚するまでは本当に元気な子供だったらしい。
昔のころの写真は一君に見せてもらったので見ればわかるはずだ。
今日は日曜日だったので一君は公園にいるはずだ。
捜してみるしかない。
そうして私は行動を開始した。
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