第35話 絶叫
俺たちはジェットコースターの乗り場にたどり着いて今は列に並んでいる最中だ。
そんな状況でもイチャイチャしている前の二人は今度本気で注意しようかと迷っている最中でもある。
「ねえ、一君。」
「どうした?涼葉。」
「一君って好きな人とかいるの?」
「いきなり何でそんなことを聞くんだ?」
「まあまあ。良いから答えてよ!」
「まあ、良いけどさ。一応居るけど叶わぬ恋ってやつだよ。」
そういって俺は笑う。俺は近いうちに死んでしまうからこの恋はきっとかなわない。
「その人ってどんな人なの?」
「優しくて明るくて、元気な人だよ。」
「そうなんだ。」
「そういう涼葉は好きな人はいるのか?」
「えっ、私もいるけど秘密かな。」
「俺のは聞いといて涼葉は秘密かよ。まあ、良いけどさ。」
そんな会話をしているうちに列はどんどん進んでいく。
やがて俺たちは最前列にやってきていた。
「たのしみだな!一。」
「そうだな。隆介。だけどあんまり人前でイチャイチャするなよ。」
「あ、ああすまん。」
「別に謝ることじゃないさ。」
「じゃあ、行こうか柚木。」
「うん!行こう隆介。」
そういって二人はジェットコースターに乗る。
「俺たちも行こうか。涼葉」
「そうだね!行こう。一君」
こうして俺たちもジェットコースターに乗り込む。
隆介と柚木は最前列に乗り、俺たちはその後ろに腰を下ろす。
「涼葉?少し顔色が悪いけど大丈夫?」
「だ、大丈夫!余裕余裕。」
涼葉はそういうが、やはり顔色がわるい。
「なら、良いんだけど。」
こういう会話をしているとスタッフの人が安全バーを下げる。
これで俺たちは逃げられなくなってしまった。
「では、行ってらっしゃーーい」
スタッフさんの掛け声とともにジェットコースターが動きだす。
前の二人はすでに二人の世界に入っており話しかけることができない。
隣に座る涼葉は目をつむって震えている。
「おい、涼葉?本当に大丈夫か?」
「ぜ、全然大丈夫。」
そういう彼女の声は震えていた。
あまりに震えているものだから少し心配になってきた。
だが、今の涼葉に何かしようかと迷ったが、今何かしてしまえば彼女から距離を置くことが難しくなってしまう。
こんなことを考えているうちにジェットコースターは急降下を始める。
「きゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああ」
その数秒後一人の少女の絶叫が鳴り響いた。
「楽しかったな!一」
「だな!隆介。久しぶりにジェットコースターに乗ったけど楽しかったよ。」
今はジェットコースターに乗り終わって柚木と涼葉が前を歩き、俺と隆介が後ろをを歩いている。
「にしても、お前なんか月風さんと距離を置いてないか?」
隆介は俺にだけ聞こえるような声でそういってくる。
「やっぱ、隆介には隠し事はできないか。」
「いや、そういうわけじゃないけどさ、なんか今までと違和感があるんだよ。」
「ああ。正解だ。俺はもう長くない。だから距離を置こうと思ってな。」
「そういう事か。まあ、そのほうが二人のためか。」
「そうなのかな?」
「俺にはわからないけどさ、頑張れよ!」
「ああ。ありがとう。」
この時の俺はこれが最善の策だと信じて疑わなかった。
俺はこの時の選択を悔やまずにはいられなくなる。
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