第33話 環境変化
やはり俺は涼葉から少し距離を置くべきだ。俺が彼女と一緒に居ればいるほど彼女は俺がいなくなることを悲しんでしまうのだろう。
自意識過剰などではなく彼女はきっと誰に対しても死んでしまったら悲しく思ってしまうだろう。
それなのに一緒にいる時間が長くなるほどに悲しみの度合いは増してしまう。
そして、俺はもう死ぬことが確定している。
だから彼女から少しでも距離を置かなくてはいけない。
「え、ねえ、一?聞いてる?」
俺が考え事をしていると柚木から声がかけられる。
どうやらずっと俺に話しかけられていたようだ。
「すまん。聞いてなかった。何の話だ?」
「もういいや。じゃあ、私もそろそろ帰るから安静にしとくんだよ。」
「ああ、わかった。今日は来てくれてありがとな。」
「ううん。全然いいよ。じゃあ退院した後遊びに来るのを楽しみにしとくね!」
「了解。」
そう言って柚木は病室を後にした。
柚木が退室してから数十分がたったころだろうか扉がノックされる。
「どうぞ~」
俺がそういうと扉が開かれる。
そこから顔を出したのは涼葉だった。
「久しぶりだね!一君!」
やはり俺は涼葉のことが好きだ。
彼女の笑顔を見て改めてそう思った。
だからこそ俺は彼女から少しづつ距離を取らないと。
「ああ、久しぶりだね涼葉。元気にしてたか?」
「うん!まあまあだな感じだね。でも、太陽君が捕まって噂がデマだってみんなに知られてからみんなが私にいきなり優しくなって男の子からは告白もされちゃった。」
「それは大変だったな。」
そう苦笑いを返す。
それからは涼葉の近況を聞いていた。
最初は掌返しをされたことに少し不快感を覚えていたらしいが最近は前よりましになった学校生活を楽しんでいるようだ。
学校の話を楽しそうにしている涼葉を見ているともう俺が居なくても大丈夫そうだなと思い
少し安心したが、同時に少し寂しくもなった。
どうやら、同性の友達もできたらしい。学校にいた虐めを行っていたグループは全員退学処分
になっているので安心して学校生活を送っていけるだろう。
涼葉と話しをしてから30分ほどたっただろうか俺は例の話を切り出す。
「なあ、涼葉。俺が退院したら隆介と柚木と一緒に遊びに行くんだが涼葉も来るか?」
「もちろん!一君はあとどれくらいで退院できそうなの?」
「数日中には退院できるらしいからそのあとだな。」
「じゃあ、楽しみにまってるね!そろそろ私は帰るね。お大事に一君。」
「ありがとう。またな涼葉。」
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