第31話 猶予

「お見通しか。ああ。その通りだ。実は高校卒業まで持つかわからないらしい。この前の診断では高校卒業までは大丈夫と言われたが、この傷のせいで病気のほうにも影響が出たらしい。」




「マジかよ。これからどうするんだ?学校に通い続けるのか、学校をやめて自由に過ごすのか。」




「決まってるだろ。学校に通うさ。涼葉は最近になって笑顔でいることが増えた。でもその笑顔が見れるタイミングは俺たちといるときだけだ。だから、俺たち以外ともしっかりと話せるようになってほしいし、そのための環境は俺が整える。それがあの時涼葉を助けた俺が負うべき責任だから。」




 俺は今までずっと考えていたことを隆介に話した。




「お前がそれでいいならいいけどよ、お前気づいてるか?その気持ち。」




「ああ。きっと俺は涼葉のことが好きなんだろうな。でもさ、俺はもう長くない。たとえ付き合えたとしてもそうでないにしろ告白なんてしたら涼葉が悲しむ未来しか見えない。」




 そうだ。俺は涼葉のことが好きだ。彼女と一緒にいる時間が好きだ。少し天然でドジなところも、責任感が強いところも、ふとした時に見せる笑顔も。


 だからこそ、彼女が悲しむ顔は見たくない。




「お前がそういうならわかったよ一。でも、まだ高1の秋だ。時間はまだ残ってるんだからそれまでにたくさんの思い出を作ろうぜ!!」




「そうだな!まだ悲観するには早すぎるよな。」




「そうだとも。それと、柚木や月風さんにはこのことを言わないほうがいいんだよな?」




「ああ、それで頼む。このことを知られてあまり気を使われるのは嫌だからな。」




「そうか。わかった。でも、何かあったら俺には教えてくれよ?相談に乗るからさ。一人であんまり抱え込むなよ。」




 隆介は偶然俺の病気のことを知ったが気にしすぎることなくさりげない気配りもしてくれる。


 とれもいい友人だ。




「ありがとう。隆介。あと、気になることがあるんだが、」




「なんだよ一。何でも聞いてくれ!」




「いや、この前柚木と付き合い始めてたじゃん?」




「あ、ああ。何だよいきなり。」




「いい感じなの?」




「なんでそんなことを聞くんだ?」




 少し顔を赤らめながら聞き返してくる。




「やめろ。顔を赤らめるな。男の赤面は気持ち悪いだけだ。」




「ひでぇなおい!」




「ごめんごめん。それで、どんな感じなんだ?俺は恋愛ができなさそうだからそういうのが気になるんだよ。」




「お前、それ言うのは卑怯だろ。まあ、良いけどさ。」




あきらめたようにそういう隆介。彼は意外とちょろいのだ。




「お前今とんでもなく失礼なこと考えてなかったか?」




ちっ、勘の鋭い奴だ。




「ゼンゼンソンナコトナイヨー」




「なんで片言なんだよ!まあ、いいや。実際まだ付き合ってから日が浅いから手をつなぐくらいしかしてないぞ?」




「まあ、そうだよな~。キャンプ以降デートとか誘ったか?」




「、、、、、」




 隆介はとてもかな疎そうな顔でうつむいた。




「おい。まさか一回も誘ってないのか?」




「ああ。あの後なんて誘えばいいかわからなくて二人でお前の様子を見に行ったくらいだ。」




「マジかよ。なんかその、ごめんな?」




「やめろ!謝るな。余計にむなしくなってしまうだろ。」




 確かに。




「まあ、今度誘ってみたらどうだ?柚木のことだし断らないと思うぞ?幼馴染であるおれが保証してあげよう。それでもだめなら俺が退院した後に四人で遊びに行こう!」




「ありがとう一。お前が退院するの待ってるぞ!」




「二人きりで行かない前提かよ。」




 この後少し雑談をした後に通話は終わった。

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