第30話 涼葉の気持ち

 一君が刺されてから1日がたった。


 やっぱり私なんかといるとみんなが不幸になってしまう。


 私はいつも一君に迷惑をかけていた。


 今回だって私のせいで一君は刺されてしまった。


 昔だって私を助けたせいで虐められていたのに最後には飛び降りようとする私を助けてくれて、そのあともいつも私と一緒にいてくれた。




 私は一君と一緒にいる時間がとても好きだった。


 でも、私が一君といると彼に迷惑をかけてしまう。


 いつも私だけが助けられて私は一君に何もできていない。


 私は一君といる時間を楽しいと思っているけど一君からしたら迷惑かもしれない。




 そんなことを考えていると5日がたった。


 私は一君のお見舞いにただの一度もいっていない。


 我ながら最低な人間だ。


 自分の命を助けてくれた恩人のお見舞いにすらいかないなんて。


 今日は食材が切れたのでスーパーに買い出しに行っていた。


 買い出しを終えて家に向かう。


 その間も考えることは一君のことばかりだ。




 そうして家が視界に入ったところで私は玄関前に人がたっていることに気づく。


 一君だ。


 私が振り返ってきた道を戻ろうとすると、




「待て。涼葉。」




 その声が聞こえてきた瞬間には私の手は一君に握られていた。


 一君を前にすると罪悪感や後ろめたさ、申し訳なさがこみあげてきて




「放してっ!一君」




 そういって彼の手を振りほどこうとするけど振りほどくことはできなかった。


 そして、一君の近くにいるといやでもこの前の事件のことを思い出してしまい涙がこみあげてくる。




「涼葉、なんで泣いてるんだ?」




 一君はそんなことを聞いてくる


 そうして彼は私の手を放す。




 きっと彼は私を助けることを当たり前だと考えているのだ。


 だから私は今思ってることをそのまま一君に伝えることにした。




「一君、ごめんなさい。いつも助けてもらって、そのたびにあなたは傷ついてるのに私は一君に何もできてない。」




「そんなこと…………」




「そんなことあるよ。私たちが初めて会った時だって君は見ず知らずの私を助けてくれた。そのせいで一君が虐められて、私はその時の虐めに耐えられなくなって自殺しようとしてるところを助けてくれた。私はいつも助けられてて、でもそのせいで一君はいつも傷ついていた。」




 自然と涙がこみあげてくる。


 でも私は精一杯振り絞るように気持ちを吐露する。




「何度も言うけど、君を助けたのは俺の自己満足だ。自分と君を重ねて勝手に助けただけなんだよ。それに、君は俺に何もしていないって言ったけどさ、俺は君といる時間が楽しいし、君といることが僕にとっての救いだった。」




 きっとこれは彼の本心なんだろう。


 今、彼が言ったことは本当にうれしかった。




「でも、私といると君は傷ついてばっかりで、だから君と距離を置こうと思ったのに、そんなことを言われたら私の決心が揺らいじゃう。」




 私はもう彼から離れようと思っていた。


 きっと私といると彼は常に傷ついてしまう。


 だから、彼から離れようと思ったのに。




「そんな決心しなくていいんだよ。俺は君といる時間が好きだし、君といることが僕にとっての救いだった。だからこれからも一緒にいてほしい。」




 本当に彼はどうしようもないほどにお人よしなんだ。


 こんなことを言われたら、、、




「いいの?これからもたくさん迷惑かけるかもしれないし」




「全然良いよ。」




 彼は満面の笑みでそう答えてくれた。




「私といるとまた傷ついてしまうかもしれないよ?」




「傷ついた分君と過ごしたらチャラだな!」




 本当に嘘偽りではないことがうかがえる表情でそんなことを言ってくれる。






 こんないつも道理のやり取りだけどこのやり取りがとても心地いい




「じゃあ、これからもたくさん迷惑をかけるかもしれないけどよろしくね?一君。」






「ああ、こちらこそ!」






 そういって笑いあう。




「なあ、涼葉」




「何?一君。」




「救急車を呼んでもらってもいいかな?」




 そういうと、一君は倒れた。




「えっ、一君?」




 この後救急車を呼んで一君が起きるまで看病してこの日は家に帰った。




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