第15話 一のやさしさ!守りたい笑顔
「俺が月風に叶えてほしいことは、一緒に来てほしいところがあるんだ。そこに来てほしい。」
俺がそう告げると月風はきょとんとしながら答える。
「そんなことでいいの?」
「ああ。これが俺の一番の願いだ。」
「わかった!!いつ行くの?」
「場所は近くのショッピングモールで今週の土曜日だ。」
「わかった!!楽しみにしとくね!!」
…やはり彼女には笑顔が似合う。
俺は彼女の笑顔を見ながら思った。
7月1日土曜日
「ごめん。待った~?」
そういいながら小走りで寄ってくる月風
「いや、今来たところだ。」
「とりあえずこっちに来てくれ!」
俺は月風の手を引きながら言う。
「う、うん。」
わずかに頬を紅潮させた月風が付いてくる。
そして俺たちはフードコートにつく。
「一~。こっちだ。こっち!」
そう俺の声をかけてくるのは俺の唯一の親友である清水 隆介だ。
「すまない。待たせたか?」
「んなこたんねーよ」
そう答える彼の声は楽しそうなものだった。
「柚木はもう来てるか?」
「ああ、もう座ってるぜ!」
「じゃあ、俺たちも良くか!案内してくれ。」
「おうよ!!」
「すまない。月風。少し付き合ってくれ。」
やはり困惑していた月風の手を再び取り隆介についていく。
「やっほ~一。その子が月風さんかな?」
柚木が俺にそう尋ねる。
「ああ、そうだよ」
「とりあえず、一人ずつ紹介するな月風」
「こいつは俺の唯一の親友で清水 隆介」
「よろしく!!」
満面の笑みでそう答える隆介
月風はまだ少し動揺しているが答える。
「月風 涼葉です。」
そういってお辞儀する。
「で、こいつが幼馴染の島崎 柚木だ。」
「よろしくね~」
「はい。よろしくお願いします。」
「月風さ、学校で少し避けられてて、俺しか話相手いなかっただろ?だから俺が一番信用している二人と仲良くなってほしいんだ。余計なお世話だったかな?」
俺は少し心配になりながらそう聞いた。
正直余計なお世話かもしれない。
「余計なお世話なんて、、とんでもない。とってもうれしい!!このためにあんなに勉強をしていたの?」
その問いに柚木が答える。
「そうそう。一ったら涼葉ちゃんのためにほとんど寝ないで勉強したらしいからね。」
にやにやしながら柚木が言った。
「バカっ。それを月風に言うなよ!」
ほんと空気読めよ。
ハズイだろ。
「ねね!涼葉ちゃん!」
「は、はい。何でしょうか?島崎さん。」
「硬い硬い。私のことは柚木でいいよ。」
「えっと、その、」
「お前、相変わらず距離の詰め方バグりすぎだろ。月風が困惑してるじゃないか。」
「え~でもさ一。私、涼葉ちゃんと仲良くなりたいんだもん。」
「それは俺としてもありがたいが、」
「まあまあ、一。柚木が人との距離の詰め方がおかしいのは昔からだろ?諦めな。」
「そうは言ってもだな、」
「一くん。私なら大丈夫だよ!えっとよろしくね。柚木ちゃん。」
「うん!よろしくね涼葉ちゃん!」
「これから私と一緒に服でも見に行かない?」
「え、うん。いいよ!」
「おい、柚木。俺と隆介はどうすればいいんだよ?」
「お二人でごゆっくり。わたしは柚木ちゃんと親睦を深めてくるから~」
そういって柚木は月風を連れて行ってしまった。
「ほんと柚木は相変わらずだな。」
「だな。俺は高校もあいつと一緒だけどほんと昔と何一つ変わらねえよ。」
苦笑いして話す隆介はとても楽しそうだった。
「まあ、今日はわざわざ時間を取ってくれてありがとうな。」
「いいってことよ。それよりもお前学校では大丈夫か?」
「ああ。今のところはな。最近は俺にも月風にもちょっかいは出してきていないよ。」
「そうか。それならいいんだが。困ったことがあれば何でも言ってくれよ?」
「ああ。ありがとうな。隆介。」
「おう!」
そういって隆介は豪快に笑った。
こうして俺の親友と幼馴染が月風と仲良くなったのだった。
そうして夕方
「じゃあ、また今度遊ぼうね!!涼葉ちゃん!」
「もちろんだよ!!柚木ちゃん!!」
そういって、二人は別れる。
この一日で随分と仲良くなったようで安心した。
帰り道に月風は言う。
「ありがとうね。私のためにここまでしてくれて!!」
そういう彼女の笑顔をみて俺は思う。
この子のためなら何でもできてしまいそうだなと…………
「いや、それほどのことでもないよ。それよりも柚木と隆介は信用できそうか?」
仲良さそうにしていたが不安になってつい聞いてしまった。
「もちろん!二人とも優しくて一緒にいて楽しかったし信用できる人だと思ったよ!」
「それならよかった。」
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