第9話 私と彼の出会い
「あのー虐めですかー?」
突然屋上の扉開けたのは、黒髪で髪が少し目にかかっていて、身長は175CMくらいの細身で気だるげな雰囲気の男の子だった。
男の子がそういうと、
女子たちは動揺しながら
「そ、そんなことしてねーし」
「そうだよ、ね」
「わ、私たち帰るカラー」
と言って屋上を去っていった。
彼は彼女たちが屋上を出ていくのを見てから私に声をかけてきた。
「大丈夫?」
そんな端的な一言だったがその一言が今の私を救ってくれた。
そんなことを考えていると、答える言葉が思いつかない。
「え、あ、その…………」
返事をしようにも自分自身動揺しすぎていてうまく言葉を紡ぐことができない。
だから、私は疑問に思ったことを聞いてみる事にした。
「ど、どうして助けてくれたんですか」
彼は少し目をそらしながら言った。
「いや、とおりかかったから?」
この言葉は何よりも素直なものだと私は思ったし、なにより、久しぶりにしっかりと私のことを見て会話をしてくれる彼に感情を吐露してしまった。
「いきなりみんなが私の前からいなくなって、無視されるようになって、変な噂がながれててぅぅっ、否定しても誰も信じてくれなくて、暴力まで振るわれて、私何もしていないのにぃ」
人前でこんなに涙を流したのは久しぶりかもしれない。
しかも、その相手が会話もしたことのない男の子。
そんな私を彼は先ほどのように気だるい表情ではなく真剣な表情で見つめていた。
まるでとても遠いものを見ているかのような目で…………
「とりあえず立てる?保健室に行こう。」
彼は少し困ったような表情でそういってきた。
「どこかけがしているかもしれない。」
彼の声音はとても真剣なものだった。
でも、私はそんなことより今までの自分の行動で恥ずかしさが込みあがってきた。
なに?いきなり初対面の男子の前で泣くってっ!!
恥ずかしい。恥ずかしいぃよーー
そんなことを考えてはいるが彼の言葉を無視するわけにもいかないので
「それは大丈夫です。ありがとうございます。」
冷たい言い方になってしまっただろうか?
とりあえず私はそのあとすぐに家に帰った。
自室にて
私は今日のできごとを思い出していた。
助けられることはないと思っていた。
でも、手を差し伸べてくれる人がいた。
それがどうしようもなくうれしかった。
そんなことを考えながら私は眠りについた。
この瞬間だけは虐めのことを忘れて。
私を助けてくれた男の子のことを考えながら。
次の日からも私への虐めは続いた。
だが、今日から私を助けてくれた彼も虐めを受けるようになっていた。
それから一週間こんな日常が続いた。
もうとっくに限界だった。
あれから私への虐めはどんどんエスカレートしていった。
彼が虐められているのを何度も見た。
きっと私のせいだ…………
私なんかを助けたから…………
この時私の中の何かが切れたんだろう。
辛い苦しい辛い苦しい辛い苦しい辛い苦しい辛い苦しい辛い苦しい辛い苦しい辛い苦しい辛い苦しい辛い苦しい辛い苦しい辛い苦しい辛い苦しい辛い苦しい辛い苦しい辛い苦しい辛い苦しい辛い苦しい辛い苦しい辛い苦しい辛い苦しい辛い苦しい辛い苦しい辛い苦しい辛い苦しい辛い苦しい辛い苦しい辛い苦しい辛い苦しい辛い苦しい辛い苦しい辛い苦しい辛い苦しい辛い苦しい辛い苦しい辛い苦しい辛い苦しい辛い苦しい辛い苦しい辛い苦しい辛い苦しい辛い苦しい辛い苦しい
死にたい
この日私は死のうと思った。
これ以上辛い思いをしないために。
これ以上苦しい思いをしないために。
屋上のフェンスの向こう側へ行き飛び降りようとする。
呼吸を整える。
そして飛び降りようとしたとき……………………
また、屋上のドアが開かれた。
やってきたのはまた彼だった。
「こんなところで何しているんだ?」
彼はこの前のような気だるげでやる気のない声ではなく、とても真剣な声音で私に問いかけた。
「死のうと思って」
確かな覚悟を持って、私はこの言葉を紡いだ。
本当にもう辛いの…………
そして前助けてくれた彼は私のせいで虐められて、私を恨んでいてもおかしくない…………
でも彼は、
「なんでそう思ったんだ?」
こんなことを聞いてきた。
だから、私は彼に本心を告げる。
そうじゃないと彼に対して失礼だと思ったから。
「私には誰一人として味方がいないから。みんな私を裏切った。もう何も信用したくないの。」
私は叫んだ。裏切られるのは怖い。
だから、信用するのもとても怖い。
信用してまた裏切られたらと思うと怖くて怖くて仕方がなかった。
そんなことを考えていると、
「じゃあ、最後に俺を信用してみないか?」
彼は、こんなことを提案していた。
意味が分からなかった。
彼は私のせいで虐められているようなものだ。
恨まれていてもおかしくない。
なのに、どうして…………
「何言ってるの?」
私はその疑問を彼にぶつけた。
純粋な疑問だった。
彼にそんなことを言うメリットなんてない。
むしろ、デメリットのほうが大きいはずなのに。
「俺もさ、虐められた経験があってさ気持ちはわからなくもないんだ。でも、君が死ぬことに意味はない。」
彼はまた遠いものを見ているかのような目で言っていた。
死ぬことに意味がないのはわかっている。
「そんなのわかってる。でも辛いの!!苦しいの!!もう限界なの。」
本当に限界なの。
だからもう、
「だったら、俺が君の味方になろう。辛いのも苦しいのもすべて俺にぶつければいい。一人が怖いのなら一緒にいよう。折れそうならば支えよう。だから一度俺を信じてくれ!!」
謎だった。
彼にそこまでするメリットがあるとは思えなかった。
だから聞いた
「なんで、私なんかのためにそこまで言ってくれるの?」
彼は穏やかな笑みで答えた。
「いっただろ。俺も同じような経験をしていて、俺の時は味方がいなかった。だから手を差し伸べたいと思った。だから信じてくれないか?」
私は驚きながらも笑っていた。
きっとこれは彼の本心だと確信が持てたから。
最後の一度でいいから信じてみようと思えた。
さっきまで信じることがあんなにも怖ったのに目の前の彼なら信じてもいいんじゃないかって思えた。
「じゃあ、信じてみようかな?」
自然とそんな言葉が出てきた。
最後に一度だけ彼を信じてみよう。
きっと、これが最後のチャンスだから。
「君、名前は?」
ただ、名前を聞くだけなのに今までで一番緊張している。
心臓がうるさい。
彼は少し笑顔を浮かべて答えた。
「陰野一だよろしく」
良い名前だと思った。
何より私は今の彼、いや一くんの笑顔を見てドキドキしてしまっている。
まだこの気持ちが何なのかはわからないけど、今はただ新しいスタートを楽しみにしている。
「わたしは月風涼葉よろしくね!一くん!」
この時の一くんが見せた困ったような照れたような表情を私は生涯忘れないと思う。
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