第5話 涼葉の限界と新しいスタート

次の日


案の定、俺に対する虐めが始まった。




種類は様々


ロッカーに大量の画鋲が入っていたり、椅子に画鋲が仕掛けてあったり


陰口や体育館うらに呼び出されてリンチにだってされた。




だが、ここまでくると怒りを通り越して呆れてくる。




そして思う。




「ヒロインを助けたら都合よく虐めはなくならないのだということを、ぜひともラノベ作家は知っていてほしい。ターゲットが少し変わるだけで虐めはなくならないことを知ってほしい。」


じゃないと俺みたいに女の子を助けてリンチにされる人が増えてしまう。




それから約一週間


月風さんに限界が来た………………………………………………………………………

いや、来てしまった。





放課後ふと屋上に行った俺は飛び降りようとしている月風さんを見つけた。




ラノベなどでいうご都合主義とはこういうことか、と思いながら俺は彼女に声をかける。




「こんなところで何しているんだ?」


彼女は答えた


「死のうと思って」


端的な言葉だったがその覚悟が伝わってくる。

実際本気なのだろう。

今俺がここにきていなければ明日は休校になっていたかもしれない。

それも最悪な形で。


「なんでそう思ったんだ?」


俺は問う。


「私には誰一人として味方がいないから。みんな私を裏切った。もう何も信用したくないし、できないの。」


彼女は叫んでいた。

今までため込んだものを爆発させるように。


これまでのことを一人で抱え込んでいたのだ。限界が来るのも当然といえる。

むしろ、よくここまで耐えたと思う。


「じゃあ、最後に俺を信用してみないか?」


俺はこんなことを提案していた。


「何言ってるの?」


彼女はとても困惑していた。

まあ、無理もないだろう。

いきなり対して会話したことのない男子からこんなことを言われて困惑するなというほうが無理な話だ。


「俺もさ、虐められた経験があってさ、気持ちはわからなくもないんだ。でも、君が死ぬことに意味はない。それは君もわかってるんじゃない?」


虐められた奴が自殺しても意味はない。

虐めをしていた奴はそのあとも何も無かったかのようにのうのうと生きていく。

虐めていた奴が死んだからって気にも留めないだろ。



「そんなのわかってる。でも辛いの!!苦しいの!!もう限界なの。」




「だったら、俺が君の味方になろう。辛いのも苦しいのもすべて俺にぶつければいい。一人が怖いのなら一緒にいよう。折れそうならば支えよう。だから一度俺を信じてくれ!!」


言っていて恥ずかしい。

本当にラノベの主人公にでもなったつもりか?

俺は。

でも、目の前の少女を救うにはこうしないといけないと思った。

自己嫌悪はこの子を救った後で十分だ。


「なんで、私なんかのためにそこまで言ってくれるの?」


彼女は本当にわからないといった表情だった。


「言っただろ。俺も同じような経験をしていて、俺の時は味方がいなかった。だから手を差し伸べたいと思った。だから信じてくれないか?」


彼女は少し驚いた表情をしながら笑っていた。


「じゃあ、信じてみようかな?」


その時の彼女の笑顔は入学当初のものだった。


「君、名前は?」




「陰野一だよろしく。」


「わたしは月風涼葉よろしくね!一くん!」




そんな彼女の笑顔はまさに黒髪元気ヒロインの名にふさわしいと俺は思った。


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