第4話ファーストコンタクト

扉を開けると入学当初は月風の金魚のフンのようについて回っていた女子が三人とその女子たちに囲まれるような形で月風は座っていた。




「あんたがそんな奴だとは思わなかった!!」


一人の女子がそういって月風を蹴っている。…………


あまりにも理不尽だ。


自分が勝手に月風はこういう人間だと定義づけたあげく、噂を鵜呑みにして勝手に失望して…………


本当にどうしようもない人間だ。




「パパ活とかしてて恥ずかしくないの?もう学校にこないでよ!」


そんなことを言いながら暴力をふるっている。

パパ活をしている奴は悪い奴だ。

だから、暴力を振るっていい。


そんなはずないのに自分を正当化して、

あたかも自分は正しい行いをしているといわんばかりに。



もう月風は抵抗するそぶりすら見せずにいた。




完全に心が折れてしまったのだろう。


気持ちはわからなくはないが、それは悪手だろう…………


人間は自分に反抗してこない人間には調子に乗りどんどんその行動はエスカレートしてしまう。




ここにいるのが俺ではなくラブコメの主人公なのだとしたら、真っ先に助けに行っただろう。


だが、俺は面倒ごとに関わるのはごめんだと思い踵を返して屋上を去ろうとしたとき、


聞こえてしまったのだ




「たすけて、、、」


そんなか細く小さな声が俺の鼓膜を打ってしまったのだ。




ああ、本当にめんどくさい


ただ、俺は思い出していた。


自分が何もしていないのにひどい仕打ちを受ける気持ちを、


俺の時は手を差し伸べてくれる奴が一人もいなかった。

正確にはいたが、そいつらに迷惑をかけるわけにはいかないと拒んだ。



俺もどうせ一人だ。


それならば周りからいなくなる人間なんてこの学校にはいない。


いつもどうりだ。

一人で机を突っ伏して高校生活を終えるくらいなら一人くらい手を差し伸べてもいいはずだ。

自己満足でいい。


だから、俺が手を差し伸べよう。




「あのー虐めですかー?」




俺のその問いかけに女子三人は動揺しているように見えた。




「そ、そんなことしてねーし」


「そうだよ、ね」


「わ、私たち帰るカラー」




動揺しすぎではないだろうか?


俺は女子たちが屋上から出ていくのを見てから、その少女に話しかけた。




「大丈夫?」




「え、あ、その…………」


何か怖がらせるよなことをしただろうか?

特にそんなことをした覚えは無いのだが、


「ど、どうして助けてくれたんですか」


「いや、通りかかったから?」


実は見て見ぬふりをしようと思ったことは伏せておく。

言う必要はないしね。



「いきなりみんなが私の前からいなくなって、無視されるようになって、変な噂がながれてて、ぅぅっ、否定しても誰も信じてくれなくて、暴力まで振るわれて、私何もしていないのにぃ」


彼女は泣いていた。


当然だそんなことがあればだれでも泣きたくなるだろう。


俺も経験したことがあるからわかる。


誰にも信用されないということはとてもつらいことだ。


だが、ここで俺が彼女を慰めることは許されない。

だって、俺も傍観者の一人だったんだから。




「とりあえず立てる?保健室に行こう。」


「どこかけがしているかもしれない。」


あんなに殴られたり蹴られたりしたらどこか怪我をしていてもおかしくない。

していなくても一応見てもらったほうがいいだろう。

そう思って聞いたのだが、




「それは大丈夫です。ありがとうございます。」


大丈夫ならいいのだが、、、

いや、いいのか?


「それでは、助けてくれてありがとうございました。」


そういって彼女は屋上をあとにする。




それを見送った俺は一人呟くのだった。




「俺の平穏な青春生活、、、終わった。」


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