第23話 過去の思い出

「さてと……擬似魔法を使うか?」


 俺は下を眺めながら言う。

 とはいえ、俺が今いる場所はセロスと、クリスが警察相手に大暴れした為、ほとんど地形が変化している。

 もう少し街中でした方がいいと思い、ビルを渡り跳ぶ。

 ある程度、街中に着き──俺は足を止める。


「ここならば一番被害を喰らうだろうな」


 俺は手を合わせ、擬似魔法を放ったとした。

 その時、俺がいるビルの場所をを指を指しながら、大声で叫ぶ奴がいる。


「あれって魔王では!?」

「もしそうならば逃げないと!」


 一人の男か女か、分からないが、そいつが叫び、他の人々は混乱に陥り、逃げ惑っている。

 チッ、めんどくさい事をしてくれたな。

 こんだけ騒がれると、また防衛省やら警察が来るじゃないか。

 今から擬似魔法を使おうとしているのに、また余計な数の連中が、来られたらめんどくさい。

 ただでさえ、まだ体に馴染まない為に疲労感が溜まる。

 それで余計な連中と戦闘するのは、なるべく避けたい。

 だとしたら一体どうした物か……ん?


「これは? フフ──面白い」


 俺は近くに合った物を拾い、思わず頬が緩む。

 ビルの屋上に合ったの鉄パイプ。

 普通の場合、鉄パイプ何てただの棒切れ。

 だけど、俺が持つと凶器に変わる。

 鉄パイプを持っている左手に、思い切り力を入れ、そのまま横に振う。

 次の瞬間、俺の前方に風圧が生まれ、建物を切り裂いていた。

 建物は切れた場所から崩れ落ちる。

 まるで雪崩れの様に崩れた。


「鉄パイプくらいならば、剣同様に斬撃は飛ばせれる」


 俺は下の人々を眺める。

 崩れ落ちる建物に、巻き込まれない様に逃げ惑っている。

 俺はその光景を見て思った。


「まるで阿鼻叫喚だな」


 意味の通りに人々は逃げ惑っている。

 悲鳴に近い声もいくつか聞こえる。

 もう一振りしとくかと、鉄パイプを振り下ろそうとした。

 だがその時、俺がいるビルの扉が勢いよく開けられ、防弾服を着た男達が入ってくる。

 俺を見るなり、盾を横に一線と盾を構える。

 警察か? 俺は盾を持つ警察を見て理解をする。


「機動隊か」


 生前の頃、テレビで機動隊の特集があり、見たのを思い出していた。


「そこにいるテロリスト──いや、魔王よ。手に持ってる武器を地面に置き、大人しく投降をしろ!」


 機動隊の言葉に思わず、俺は笑みが溢れる。

 声も出てしまった。


「ぷっ、アハハハ。俺を魔王と言ってる癖に大人しく投降? お前ら馬鹿か?」


 俺の煽りの言葉に対し、激昂する事も怯む事すらなく。

 盾を構えている。

 やっぱ煽っても無駄か、心構えだけは立派だ。

 でも、すぐに分かるだろう。

 その心構えは無意味って事をな! 俺は機動隊に鉄パイプを向ける。

 機動隊は盾をかまえながら突進してくる。

 確か特集だと盾で姿勢を崩し、囲み捕縛する。

 複数の盾が俺に衝突する。

 次の瞬間、俺が吹き飛ぶ事──ましては姿勢すら崩されてない。

 その代わり俺に、衝突してきた機動隊は地面にへばりついてた。


「自分から衝突して地面にへばりつくって、情けないにも程があるだろう」

「貴様!」


 機動隊の一人が俺の言葉に激昂し、右手に警棒を握り、俺に突進してくる。

 ワンパターンだが、俺に攻撃されてもいい様に左手で盾を構えている。

 激昂しながら多少考えて動いたか。

 だけど、そんな脆い盾で俺の一振りを防げない。

 鉄パイプを肩にまで回し、突進してくる機動隊に向けて振る。

 俺の一振りは機動隊の盾にぶつかる。

 ドンッと激しい音がすると、同時に機動隊は吹き飛ぶ。


「カハッ」

「どうした? 俺を投降させるんじゃなかったのか?」


 俺は再び機動隊に挑発をする。

 だんだんと機動隊から殺気を感じ取れる。

 そんな殺気だっても怖くない。


「舐めやがって!」


 アホか舐めるもくそもない。

 お前らにそんな価値は一切ない。

 ただ、ひたすら俺に蹂躙されるだけだ。

 俺を地を蹴り、立っている機動隊に近寄る。

 鉄パイプが当たる領域まで近寄り、グッと左腕に力を込め鉄パイプを振う。

 機動隊は鉄パイプの一振りを、盾で防ぐが吹き飛ぶ。

 複数人は地面に倒れる。

 だが、一人だけ根気よく立っている。

 それでも足はガクガクと震えている。


「俺らがここで倒れる訳にいかない」

「へー。大した 正義感の事や、だけど無意味消えろ」


 俺は機動隊の側頭部を蹴る。

 機動隊は前のめりで倒れてきた。

 俺に持たれ掛かってきた──半歩、体をずらす。

 機動隊は倒れる。


「全く手応えがなかった」


 さてと、警察の機動隊を撃退したし、擬似魔法を使うか。

 と、思ったその時、腑と俺の頭にはあの少女が遮る。

 今……何故、俺の頭にあの少女が遮るのだ? 意味が分からない。

 ここであの少女が、出てくる意味が理解できない。

 俺の脳内に再び少女のシルエットが映る。


「あの少女の目。特徴的なオッドアイ。何処かで見た事ある気がする」


 そうだ──俺が生前の頃に慕ってくれた少女。

 その少女とあの少女が重なる。


「まさかな……」


 俺が死んだのは最低でも十年以上前。

 それに俺は生前の頃、青春を謳歌する高校生? いや全く謳歌してない。

 何ならば虐められていたし、学校でも腫れ物扱いをされていた。

 それでもあの子だけは俺を慕ってくれた。

 くだらない記憶を少し思いだしたら、ちょっと余計に腹が立ってきた。

 それに俺の唯一の情報源である彼奴。

 それとあの子は同じとは思えない。

 俺が死んで転生して、成長するまでの間も時間は進んでいる筈。

 だとしたらあの子はもう立派な大人だ。

 だから彼奴とは別人と断定する。

 そうしないと、俺が俺として保てない気がした。

 彼奴はジャンヌ同様に、いい意味で悪い意味でも、厄介であり危険。


「少し感傷し過ぎたな」


 あの子を思い出し、情が移る前にこの世界を壊す。

 

 

  

 




  















 

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