第22話 神の干渉

 ここは何処──いやこの感じ夢の中。

 こっちの世界に戻ってからやたらと、夢の中で意識を保たれている。

 きっと何か意味がある筈。

 目の前にある視界は全て真っ白。

 次の瞬間、前の時と一緒で人の声が聞こえる。

 だが、その声は何処かで聞いた事があり、神秘的な声。


「彼の者、君はこの世界で何を求める?」


 この世界? この声は今までの夢とは違い、現在進行形で語ってきている。

 彼の者──この言い方、少し引っ掛かる。

 それにこの世界の事を聞いてきた。

 普通の人間ではない──そもそも、夢の中に語り掛けてきてる時点で、普通ではないのは明白。

  一番の問題はこの声は誰か。


「もう一度問う。彼の者はこの世界で何を求める?」


 俺がこの世界に求めるのは一体なんだ? 復讐はこの世界を壊す為の方法。

 だとしたら俺は一体何を求めるんだ? 分からない。


「俺は何も求めていない」

「ならば何故、異世界からこの世界に来た? 君は何かを求めて来たんだろう?」

「別に何も求めてない。ただこの世界に復讐をする」

「それが無謀と分かっていてもか?」


 その言葉に俺は黙る。

 無謀か……確かに今の現況を見れば、無謀と捉えられるかもしれない。

 普通の人間ではなく、異世界人──神からすれば尚更。

 神と推測したが、外れているかもしれない。

 だが、異能を持っている人間とは、到底思えない。

 だとしたら必然的に神と推測ができる。

 それに俺は神様とは切っても切れない関係。


「無謀? 異能を持ってない現代人に、俺が負ける訳がない」

「そうだな。現代人は異能を持ってない。だが異世界人に匹敵を、する力を持つ集団も存在する」


 多分、偉大なる神と名乗る人物──集団の事。


「その集団に付いて知っているのか?」

「知っているとも」


 知ってはいるが、簡単に教える訳がない。

 大体がそう答える。


「全てを話す事はできない。ただ聖女の名を司る人物には気を付けろ! 司る者は決して君の味方ではない」


 聖女の名を司る者ね? 全然一人しか心当たりがない。

 もし、彼奴だとしたらば何故? あの時協力して俺を殺さなかった。

 いやこれはまだ俺の仮説に過ぎない。

 断定する事はできない。


「どうしてあんた俺にそこまで、情報を教える?」

「ただの気まぐれさ。神の気まぐれ──少年よ。自分の味方を見誤るなよ」


 次の刹那、眩しい光が俺を襲う。

 光が止んだと思ったら、次は真っ黒。

 真っ白から黒に変わったって事は、神は消えたのだろう。


「俺の推測。案外当たる物なんだな」


 味方を見誤るなよか、俺はセロスもクリスも敵に奪われた。

 それで味方とは一体何の事だ? それに聖女の名を司る物。

 今現在で心当たりに、あるのはジャンヌだけだ。

 彼奴は俺の敵ではなく、中立の立場と言った。

 俺は馬鹿みたいにそれを信じている。

 本当に彼奴を信じていいのか? それとも神を信じるか。

 どっちにしろ──今すぐ決断はできない。


「それにしても俺はいつまで、夢の中にいるのだ?」


 神と話す為に夢の中に入ったのじゃないか? もう話しが終わった。

 だから夢から覚めてもいい筈。

 それなのに俺の視界は黒いまま。

 まだ、夢の中で俺に何かを見せる気か?


「次は一体何が起きる?」


 と、考えていた時、視界は黒から街中の景色に変わる。

 本当に今度はなんだ? 街には黒のフードを被った人物がいる。

 黒の人物は体中から魔素を溢れ出し、街を破壊している。

 まるで、それは俺と同じ様に、世界へ復讐をしている様だった。

 だが、この世界で俺以上の魔素を持つ奴はいない。

 次の瞬間、俺の視界に映る景色は消え、ズキンと痛みがでる。


「く、痛てぇぇ。あれここは……家か」


 どうやらあの光景を最後に、夢から覚めた様だ。

 あの黒いフードを被った人物。

 今後、俺に何か関わりがあるのか? もしないとしたら何故、俺にあの景色を見せた? 考えれば考える程分からない。

 それに考えると、激しく頭痛がする。


「夢の中での会話。あれは神からの干渉と見た方がいいのか?」


 姿、形を見る事ができなかった。

 だが、何処か昔あの声を聞いた気がする。

 俺の気のせいかもしれない。

 ──起き上がろうと、体を動かすがビクともしない。

 どうやら完全に疲労感は消えてない様子。


「防衛省が設立をした部隊を殲滅した。少しの間現代人が動く事はないだろう」


 取り敢えず──擬似魔法の疲れが取れるまでの間。

 束の間の休息かもしれないが、休むしかない。

 俺はそのまま目を瞑る。

 三日後。

 完全な疲労感は取れていない。

 だが、ある程度──動けるまで回復できた。


「そろそろ、復讐を再び始めるか」


 疲労感は溜まるが、擬似魔法を使うしかない。

 その前にニュースとか見るか。

 俺はソファに座り、テレビをつける。

 何か情報を得られるかもと思いつけた。

 ニュースの時間ですと長く続き、俺がテレビを消そうと思ったその時!!


『国家転覆を狙っていると思われるテロリスト。破壊者デストリシャですが、防衛省が設立した部隊を殲滅をしました。その事に国の首相達は、各国に救援を依頼しました』

「あれは人間ではない。魔王だ! 人類を滅亡させる為に魔王が来た!」


 ピッ、俺はテレビを消す。

 各国ね? 助けてくれるとは思わないな。

 どっちでも関係ない。

 俺はこの世界の全てを壊すに過ぎない。


「魔王か……あの少女の言葉通りになってきたな」


 もしこの世界に偉大なる神がいるならば、俺は魔王だな。

 そろそろ外に出て、暴れ回るとするか。

 指の骨をポキポキ鳴らしながら外へ出る。

 助走をつけて思い切り跳ぶ。

 俺は空中に浮く。

 近くにあるビルへと乗り移る。

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