第20話 謎の少女視点

 クロムが三勇傑の二人と、パージを殲滅している間。

 少女はクロムのコートを、羽織ったまま走りしていた。

 少女は必死に走っていく中、自分が遊びに来た遊園地が、荒地になりかけている事に悲しさを覚えた。

 それと同時に、少女はクロムに対して抱いていた疑問が確信に変わる。

(やっぱりあの人は、私が見た夢の人で間違いない)

 少女がクロムと出会う前、不思議な夢を見た。

 その夢の中に合ったのは、街──崩壊する。街には人々が悲惨な姿になっている。


「一体何が起きている!?」


 少女は夢の中で疑問に思った。

 どうして街が崩壊し、人々が悲惨な姿で倒れているのか。

 その疑問が吹き飛ばされる様に、空から──白く光る銀色の髪に、真っ赤な真紅の瞳を持つ少年が降りてくる。


「綺麗」


 少女は空から降ってくる少年をみて、一言そう言った。

 少年は確かに、神々しく凛々しい顔立ちをしている。


「神様?」


 少女は神々しい少年を見て、神と勘違いをしてしまう。

 だが、その少年は神とは程遠く、街を破壊する元凶である。

 少女は少年に恐怖を覚えた。

 次の瞬間、脳内に声が響く。

 その声は神秘的で、少し哀しげに感じ取れた。


『彼の者、世界を破滅に導く災厄の魔王。または世界を救う英雄』


 その言葉で少女は夢から目を覚ます。


「なんで今、夢の事を思い出したんだろう?」


 少女は腑と夢の内容を思い出し、頭を悩ませていた。

 少女は再び無闇に走る。

 疲れて足を止めた。

 すると、少女と同年代の人間話し掛けてきた。


「あれ? 琴音じゃん」

「本当だ。こんな所で何をしているの?」

「え?」


(なんでこんな所にユキちゃんがいるの?)

 少女は不思議に思っていたが、同年代の人物の後ろにある。

 立派な建物を見て理解する。

 自分が今何処におるのか。


「そろそろ学校に来てよ!」

「え、そ、その内ね」


 少女は琴音の名で呼ばれている。

 琴音と同年代の女子の発言に対し、琴音は少し嫌悪感を覚えた。


「まだあの人の事を気にしているのは分かるけど、いつまでも引きずってはダメだよ!」

「あの人?」

「琴音の幼馴染の先輩だよ!」

「あ、うん。そだね」


 琴音は同年代の女子の言葉に、作り笑顔で応対する。

(そか、ユキちゃん達の認識では先輩はいない。それでも先輩は生きてる)

 少女は心の中で呟く。

 決して口に出さない。

 その時、同年代の男子がスマホを取り出し、琴音に見せ言う。


「なぁ琴音。こいつの事どう思う?」

「え? 話しの意図が読めないけど?」

「あー最近噂の魔王」


 魔王という単語を聞き、琴音の目が大きく開く。

 同年代の男はスマホを操作し、一つの映像を琴音に見せる。

 琴音は男子に近づきスマホの映像を見る。

 そこには琴音が驚く映像が流れる。


「これやばくない?」

「一番問題なのはcgじゃなく、これが現実って事」


(なんで!? いつ映像を撮られてたの?)

 スマホの映像にはクロムが、パージと戦闘を繰り返している姿が映った。

 その映像を見ている中で、琴音は自分が見た夢とクロムを重ねる。

(このままではあの人は……)

 少女の思いとは裏腹に、映像は全国──全世界に拡散された。

 この映像を公けにし、クロムはテロリスト破壊者デストリシャではなく、魔王と呼ばれ始める。

 琴音は映像を見て誓った。

(私の命を懸けてもいい。には、させない)


 ◆◆◆


 クロムは魔道具を拾い、重たい体を無理やり動かし、帰路へと着いていた。














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