第18話 三勇傑

「よー禁忌の勇者」


緑髪の男は異世界での呼び名で、俺を呼んでくる。

すると、パージの連中は硬直している。

彼奴と組んでいる事から、勇者についてはやっぱりしているか。

それより、どうしてこいつがこの世界にいる? 


「何故この世界を壊す? お前はヴァハード王国でも、一、二位と名高かっただろ?」

「こんな場面で偉そうに説教か」

「俺はな出来れば、かつての仲間とは争いたくないんだ」

「相変わらずだな、その下らない戯言は」


俺の一言で緑髪の男は一気に、顔を強張らせた。

何一つ言葉を掛ける事もなく、大剣を構え、襲い掛かってくる。

次の瞬間、奴の大剣と俺の刃物が激しくぶつかる。


「チッ相変わらずの馬鹿力やの! クロム」

「お前の短気さもなセルピコ」


刃が全く動かず、俺とセルピコは膠着状態が続く。

さてとどうする? 蹴りを繰り出すか。

いや、それはあまりにも無謀だ。


「馬鹿力でガサツと思われがちやが、お前は戦闘では常に冷静だな」

「何が言いたい?」

「俺に蹴りを入れ、先制を撃とうとしたんだろう?」


バレてやがるか、このまま膠着状態を続けても、さっきの電撃がくるかもしれない。

一体どうやって戦う? 賭けに出てみるか。


「我がディメンションに眠る剣を」

「てめぇ!」


次の刹那、セルピコは俺の刃物を弾き、距離を置こうと後方へ下がろうとする。


「アホが俺はこれが狙い何だよ!」


黒閃の斬撃を振う。

セルピコの胸部に、当たりそうになる直前、セルピコは大剣で防ぎ。

ギリギリの所で、斬撃は当たらなかった。

セルピコが攻撃する前に後方に下がる。

惜しかったな──もう少しの所で、魔素事、ダメージも与えれた。


「はぁはぁ、やっぱお前との戦いは、肝が冷える」

「簡単にやられてくれればいいのに」

「それは無理な話しだ」


だろうな──もう詠唱のフェイントは、多分効かないだろう。

次の打つ手を考えないといけない。

と、考えていた時! 背後から声が聞こえる。


「そこまでだ禁忌の勇者」

「やっと来たか遅せぇよ」

「怒鳴るなよ。それでも紅焔グレンの勇者?」


尻目で後ろを見る。

そこには肩まである黒髪に、西洋の鎧を着た女が、少女を拘束しながら近づいてくる。


「すいません。また貴方のお手数を掛けてしまい」


少女は申し訳なさそうに言ってきた。

俺は少女の言葉に何も答えなかった。

さてと、めんどくさい事をしてくれたな。


「「!?」」


勇者二人は身構える。

俺は自然と殺気を出していた。

どこで少女を見つけ、拘束をした? 俺が一切気配を感じなかった。


「まさかこんな所で三勇傑が、揃うとは思わなかったね」

「まぁその一人が、敵になるとも思っていなかった」

「リズ。その少女を一体どうする気だ?」

「さぁ? 君の態度次第かな」

「一体何が目的だ?」

「禁忌の勇者の捕縛と、ヴァハード王国に転送さ」


三勇傑と呼ばれたこいつらが、ヴァハードの世界から、こっちに来るのは理由が、あるのは予想はできた。

だが、まさか俺を連れ帰る事とは、思いもしなかった。

一体どう動けばいい? 俺一人ならばどうにでもなるが。

唯一の情報源である、少女を失うかもしれない、


「さぁどうするクロム?」

神光ディラルの勇者が、関係のない少女を、人質に取るとは」

「何が言いたい!」


リズはセルピコと違い、戦闘の中で冷静さも煽り耐性もない。

俺の言葉にリズは怒り心頭を示す。

それが一刻の危機とも知らず、次の刹那。

カキンと鈍い音がする。

俺の放った斬撃は、セルピコの大剣より防がれてしまう。

リズと少女は何が起きているか、理解を出来ていない様子だった。

セルピコは斬撃を、防いだが隙だらけ。

左の拳で突くように殴る。

セルピコは再び大剣で防いでくる。

だが、俺の拳の威力は大剣に浸透し、セルピコにダメージを与える。

次の瞬間、セルピコは大剣を落とし、硬直していた。

すぐさまに、大振りの拳を振う。

拳は空を切り、風圧を生んだ。

俺の拳が当たる直前に、リズがセルピコの服を引っ張り躱した。


「何をしているのセルピコ!?」

「あ、ああ、体が痺れ……」


リズはセルピコに集中し、少女の事を忘れていた。

その瞬間を狙って──少女の体を引き寄せ、後ろ回し蹴りをする。

セルピコの胸部に炸裂する。


「グッ!?」


止めを刺す為に斬撃を、繰り出そうとした時、二方向から強力な魔素を感じ取れた。

少女を引っ張り、俺の後ろへと回す。

一つは真正面、もう一つは左斜めから。

刃物これでは対処しきれない。

だったら! 俺は体内の血液を異能の力で、循環させ、魔素に近いエネルギーを誕生させる。


「俺の傍から離れるなよ」

「は、はい!」


少女に殺気に近い圧力を掛ける。

体内で魔素に近いエネルギーを作れた。

後はこれを使うだけ、完璧な魔法は一切使えない。

だが、擬似的な魔法は使える。

イメージをしろ! 魔法の根本は創造力!


「擬似魔法、黒刻クロド


俺が詠唱した擬似魔法は、二方向から来る魔法に黒い影が覆い被さり消滅する。

消滅した魔素を反転させ、相手にそのまま返す。

次の瞬間、轟音が鳴り響く。

それと同時に火花が散る。


「危ないな。何が擬似魔法よ! 普通の魔法と変わりないじゃん」

「くっそ! 片腕持っていかれた」


男の嘆く声が響き渡る。

どうやら俺の擬似魔法で、片腕を使用できなくなった見たいだ。

グッ!? 擬似魔法──思っていた以上に疲労感が溜まる。















  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る