第16話 魔道兵器の登場

「隊長、第二部隊から連絡が来ました!」

「よし、来るまでの間、こいつを食い止めるぞ!」

「俺を食い止める? 図に乗るな」


 地を蹴り、隊長と呼ばれる男の懐に潜る。

 そのまま下から右の拳を突き上げる。


「く、なめんな」


 俺の拳は隊長の顔を掠り、それと同時にカウンター気味の拳がきた。

 反対の手で拳をガードする。

 腹部に目掛けて蹴りを入れる。

 ヅヅッと地面が削れる音をしながら、俺は後方へと下がった。

 隊長は蹴られた腹を押さえている。

 近接戦──接近戦はまだ、俺に分がある。


「隊長……」

「大丈夫だ。まだこのくらいは平気だ」


 このくらいね? 相当痛みを感じてる様子。

 問題はパージが、持ってこようとしている物。

 それがどのくらいの物か、未知数だが、叩き潰す。


「……来た!」


 パージの一人の言葉に俺は身構える。

 次の瞬間、俺の視界に増援と思われる兵隊に、布で大きく隠された物が持っている。

 あれが、俺に勝てる可能性がある物。

 少し様子見をしてから、ぶっ潰すか? それとも今すぐ潰すか。


「坂本隊長。第二部隊遅れながら到着しました」

「大丈夫だ。あれをちゃんと持ってきたな?」

「この通り。そしてあれが破壊者デストリシャですか」


 隊長と話している兵士は、俺に眼を飛ばしてくる。

 なんだ彼奴? 俺に眼を飛ばして生意気だな。

 ジロジロと見てきて、あまりにも気色が悪く、思わず声を掛けてしまった。


「てめぇさっきからなんだ?」

「お前が破壊者デストリシャ? 思ってたより弱そうだな」

「ほざいとけ」


 フゥゥゥと息を吸い、地を踏み込む。

 次の刹那、落雷の速さで男の眼前にまで、近寄り、左の拳を振う。

 男は片手でガードをし、吹き飛ぶ。

 隊長の横を勢いよく吹き飛ぶ。

 ドンッと音が鳴り響くが、手応えが一切ない。


「お、やべぇ! 人並み外れたパワーだ」


 男は楽しそうに言う。

 その様子に不気味さを感じていた。

 その時、男が指をパチンと鳴らす。

 次の瞬間、俺の左手から強烈な電撃が走る。


「く、あぁぁ」


 一体何が起きた? 何故俺に電撃が……この感じ。

 あの時の魔法に近いが、威力も魔素も感じない。

 一瞬驚いたが、すぐに慣れてきた。

 殴った時の手応えのなさ、そして左からの電撃……

 左手を見ると、小さく魔法陣が描かれていた。


「魔流の仕込みの籠手か」


 俺が考え、答えを独り言の様に言った。

 その時、男は可笑しそうに笑いながら、真剣な眼差しで再び指を鳴らす。

 パチパチと電流の音が、左手付近から聞こえる。


「あのな。からくりが分かれば、何も怖くねぇよ」


 再び左手から電撃が走る。

 異能の力の一部を使い、電撃と魔法陣は消え去る。


「一体何をした?」

「てめぇに教える訳がねぇだろ。クソガキ」

「祐二それも……」

「はい。これが本場の魔道兵器です」


 まさか──この世界で、魔道具を見る事になると、思わなかった。

 魔流仕込みの籠手。

 異世界でも、低ランクな魔道具として知られている。

 だが、使い方にしては最強の魔道具にもなり得る。

 それを良い例に、あの男は上手く使ってきた。

 ──魔流の籠手のからくりは簡単。

 魔素の流れを籠手がカバーし、籠手に触れた瞬間に小さな魔法陣を描かれる。

 少しの合図で魔法陣から、魔法を放たれる。

 使い手次第で、魔法の質量も火力も変わってくる。

 でもな、この程度の魔道具では俺には勝てない。


破壊者デストリシャを僕らは、見くびってたかもしれません」

「いやそれはお前だけだ」

「え、嘘!?」


 一体どうする? もう一気にあれを出して殲滅するか。

 いや、あれは奥の手だ。

 こいつら如きに使う訳にはいかない。

 次の刹那、ビューンと風切る音と共に、高圧な魔素が横を遠る。

 今、何が起きた? 理解が追いつかない。

 特に理由もないが背後を見た。

 そこには焦げ平地になっていた。

 ただ、少女が震え怯えている様子が目に入る。


「てめぇら、一体何をした? それにあの少女を巻き込む気か?」

「そんなの逃げないあの子が悪いでしょ」


 このくそ共! 


「何か言いたげそうだね。そんなにあの子が気になるならば、消してあげるよ!」


 次の瞬間、男の前方から、いきなり金色の光が飛んでくる。

 その光は俺ではなく少女に向かう。


「ごめんね若き少女よ」

「チッめんどくせぇな」


 地面を落雷の速さで踏み込み、地を蹴り、少女の前に立つ。

 俺は左手をかざし金色の光を受け止める。

 次の瞬間、俺の手に高圧で高威力の魔素が当たる。

 くそ、想定していた以上に威力が高い。

 だんだんと腕が後方に下がっていく。

 このままだと腕が持っていかれる。

 もし持っていかれたら、俺も少女も直撃する。

 一体どうすればいいんだ? その時。


「もういいです。私の為に体を張らないで下さい」


 と、少女の言葉が聞こえた。

 その時、俺が思った感情はたった一つ。

 不快だ。


「誰がお前の為に体を張るかよ! こんなの掻き消してやる」


 強引に腕を振り抜き、金色の光を消した。


「はぁはぁ」


 腕が重く痺れる、咄嗟に振り切った為、異能を一切使えなかった。

 それにしても喰らった事もない攻撃。


「おいおい。化け物にも程があるぞ!?」


 普通の人間がどうしてここまで、強力な魔素を放てる? 魔流の籠手では説明が付かない。

 今、俺は消す事ができた。

 だが、次も消せれるかは別だ。


「あ、あの」

「なんだ? 今俺は忙しいんだよ」

「だったら反応しなくていいです。でも聞いて下さい!」


 あの感じだと、まだ何発も撃ってると見込んだ方がいいだろう。

 だとしたらどうすればいいんだ? やっぱり殲滅するしかないと思い。

 右手に力を入れた時、少女の言葉が耳に止まる。


「あれは人の力の物ではない。兵器の力を借りてると思われます」

「だったら一体どうしろと?」

「あの光より速く、高威力な物をぶつければいいです」


 そんな簡単に言われてもな? 俺には魔素がない。

 そんな簡単に出せる物なんかない。

 俺が悩んでいる時、背中を押された。

 少女は何も言わず、俺を見ている。

 無言の圧か……


「やればいいんだろう!」


















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