第15話 防衛省の特殊部隊

「そろそろ情報を教えて貰うか」


 少女に近寄りながら言った。

 その時、背後から再び銃声音が聞こえる。

 弾丸は俺ではなく、少女に迫る。

 弾丸の方向に右手を伸ばす。

 次の瞬間、弾丸はその場に落ちる。


「はぁめんどくせぇな! 次から次となんだ?」


 銃声音をした方に振り向き、少女を守る様な立ち位置にいる。

 振り向いた先には、さっきの兵士達とは比べ物に、ならない程の厚い装備に魔素が纏っている。

 こいつは一体なんだと、考えていた時、後ろにいる少女が言う。


「防衛省が設立させた。破壊者デストリシャを殲滅させる為の特殊部隊パージ」


 パージ……意味は粛清か。

 俺を粛清する為の部隊。

 面白えじゃねぇか、潰し甲斐がある。

 数は兵士達の様に有象無象ではない。

 少数精鋭と見てもいいだろう。

 それに魔素の出力が段違い。

 最悪、を使わないと、いけないかもしれん。

 それまでの間、このナイフでどうにかする。

 右手に持っているナイフを、逆手にし左に変える。

 瞬間的に下半身に力を入れる。

 その一瞬の間でも、パージの連中は銃を乱射してくる。

 右手を前に出し、地を思い切り蹴る。

 疾風迅雷のスピードで切る!


「おぉぉ!」


 ドドーンと轟音が俺の近くで、鳴り響く。

 右手で弾丸を相殺している時、強烈な爆風がもろに当たる。

 だが、そんなのは関係ない。

 このままスピードを殺さずに切る。

 一瞬でパージの下に忍び寄り、切り掛かろうとした。

 その時! 横から銀閃が迫ってくる。

 躱すか? いや無理だ、このまま切られる。

 だったら……! 俺は迫ってくる銀閃に、肉を切られる覚悟でぶつかる。

 右腕を少し切られるが、そのまま腰を捻り、近くにいる奴を切った。

 ナイフの刃っ先は抜かずに、右の奴に頭をぶつける。

 グシャっと鈍い音がすると同時に、俺の腕からナイフが落ちた。

 そのナイフを右手でキャッチし、投げる。

 距離を取って、狙い撃ちしようとした奴に当たる。

 ナイフを抜き、大きく後方に下がる。


「はぁはぁ」

「隊長!」

「大丈夫だ。この程度へでもない」

「チッ、くそったれ」


 俺がナイフで切りつけた奴は、平気そうに首を回す。

 あの一瞬で三人に攻撃したが、隊長と言われる奴の感じを見ると、全くダメージが与えれてない。

 思っていた以上に装甲が厚い。

 しかも更に魔素で、もっと硬くなっている可能性は高い。

 くそ、切る事ばっかを考えていたせいで、横からの気配に気付かず、右腕を少し切った。


「隊長。彼奴一人で俺らと互角じゃないすか?」

「互角? 馬鹿を言うな。あれは人の人智を越えた化け物だ」


 冷静に的確な悪口を、言われているのが地味に腹立つ。

 だが、否定はできない。

 俺はとっくの昔に人間をやめている。

 だから、この世界に戻って復讐をしている。


「はぁ、本当に面白くなってきたな」


 髪を掻き上げ、さっきと同じ態勢を取る。

 そして、ナイフを投げる。

 パージの目線は──ナイフに集まる。

 それが重大な隙だ。


「ボキッ」

「え、な!?」


 俺は一人の背後に回り、首を回した。

 それに気付いたパージの連中は怯んだ。

 だが、隊長と呼ばれる男の声で、冷静を取り戻し、銃を構えてきた。


「音も気配も感じさせずに、背後に回ったか」


 この男、あまりにも冷静過ぎないか? 普通、ここまでの冷静さは可笑しい。

 まるで一度経験をした事が、ある様に感じ取れる。

 一番厄介かもしれない。


「お前何者だ?」

「特殊部隊パージの隊長。ただそれだけに過ぎない」

「そうか」

「……やはり普通の武器では、貴様に勝つ事は出来なさそうだな」


 いきなり何を言ってやがる? まずそもそも武器以前に、俺に勝とうとしているのが間違いだ。


「はぁー、第一部隊。第二部隊に連絡をしあれを持って来い!」

「り、了解しました」


 こいつら少数精鋭で、何部隊で結成しているのか。

 それにこいつの言い振り的に、俺に勝てる可能性がある物。

 それを持って来ようとしている。














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