第8話 クロム対自衛隊

「本当に始まったし」

「おい、撃たれた子供を回収し、離れていろ」

「はいはい仰せのままに」


 ジャンヌは軽口を言いながら、子供の元に向かった。

 その中でも自衛隊が放った銃弾は、一直線に飛んでくる。

 俺は銃弾の雨を掻い潜り、命令した男の前に立つ。


「な、銃弾の雨を避けただと!?」

「お前さ、喋ってる暇があるならば──攻撃しろよ」


 刹那、男は懐から拳銃を出し、俺に向けて来る。

 そのまま引き金を引こうとした。

 引き金を引かれる前に、側頭部に強烈な蹴りを叩き込む。

 次の瞬間、男は白目を剥きながら倒れた。


「バーカ、近距離ならば、ナイフとか使えよ」


 俺が男に向かって言葉を、掛けていた──その時、再び、銃弾の雨が俺を襲う。

 司令塔がやられても、攻撃をしてくる。

 流石は日本を守る軍隊だ。

 だけどな、たかが銃火器程度で、俺を止める事なんかできない。

 だが、流石に数が数の為、全てを避けきる事はできない。


「チッ、めんどだな!」


 司令塔である男を倒した事により、全ての場所が射線に入る。

 銃弾が当たっても……大したダメージはない。

 だが、自衛隊の時間稼ぎになってしまう。

 あんま時間を掛けていると、今より強力な武器か来るかもしれない。


「くそ何だこいつ!?」

「銃を撃ってるのに全く聞いてる様子がないぞ!」

「本当に人間か?!」


 自衛隊の隊員達は俺が、銃弾を喰らっても効かず、ましては怯みもしない。

 そんな俺を前にし、弱気な言葉を出す奴もいる。


「馬鹿野郎! なに弱気になっている! こいつをここで仕留めないとだろ」

「確かにそうだ!」


 一人の隊員が弱気に、なっている人物に喝を入れ、士気を上げた。

 さっきより銃弾の嵐が俺に迫ってくる! くそ。

 あの男邪魔だな──まずは彼奴から潰す。

 握り拳を作り、そのまま勢いを付け……拳を振う。

 ヒューと音が鳴ると同時に、強烈な風圧と共に数十人単位の隊員が吹き飛ぶ。

 吹っ飛ぶ中──情けない叫び声が聞こえた。


「化け物かよ」

「その通りだよ」


 俺はお前達からすれば、ただの化け物に過ぎない。

 続けさまに下から上に向かって、拳を振り上げる。

 再び──強烈な風圧が生まれる。

 銃弾も風圧に巻き込まれ、自衛隊に当たり痛みで踠いてた。


「俺が特攻するから、お前ら後方支援をしろ!」

「「了解!」」


 さっき喝をいれた男は、手に持っている銃を投げ捨てた。

 左手と左足を前にだし構えている。


「さっきの男と違い。お前は懸命な戦い方をする様だな」

「国を守る人間を舐めんなよ!」


 俺と男は軽口を交わし、数秒、数分の間。

 睨み合いが続く。

 俺も男同様に構える。

 この男の度胸に免じて、魔法も異能を使わずに潰す。

 こいつ……ステゴロの戦いに慣れているな。

 普通、銃弾を簡単に躱し、撃たれても効かない奴と、真正面から殴り合おうとは思わない。

 もし、俺が逆の立場ならば、絶対にそんな事はしない。

 スゥゥゥと息を吸い、攻撃をする機会を伺う。


「何だこの緊張感」


 刹那、拳が交差する。

 さっきに攻撃をしたのは、男だった。

 俺はカウンターで拳をだした。

 だが男には当たらず、お互いの拳が交差する形になった。

 やはりこの男、手慣れているな、俺の攻撃を一歩手前で躱している。

 拳を引き抜き、片足で軸を作り、後ろ蹴りする。

 男は上半身を反らし躱した。


「あ、危ねぇ! 一発でも当たったら死ぬ」

「普通、これで終わるんだけどな」


 この男、手慣れにも程がある。

 俺は異世界で人間離れの身体能力を、手に入れた。

 それなのにこの男は躱している。

 少し──真面目にやるか。

 異能を使った時と同様に、力を入れる。

 今回は足と腕の部分的に力を入れ、拳を連打で繰り出す。

 男は避けたり受け流しで、俺の攻撃を完全に無力化した。

 一体どうしたらこいつに、ダメージを与えられる? 次の瞬間。

 俺の頬に弾丸が掠り、頬から血が流れる。


「初めてダメージを与えられたぞ!」

「ば、馬鹿野郎! ぬか喜びしてるんじゃねぇ」


 この男だけは冷静だな。

 だが、俺にダメージを与えた人間は、油断をしている。


「ダメージを与えたのならば、次の動作をしろ」


 俺は忠告をしながら、銃を撃った人間の元に向かい、拳を叩き込む。

 ……拳の先から血がポタポタと滴れる。


「もう後方支援はいい。この男に小細工なんかしても意味がない」

「真正面からやれば勝てるってか?」

「そんな事思ってねぇよ。まだ正面からの方が、一パーセントの勝つ可能性があるだけだ!」

「フフ、アハハハハ」


 男の言葉に思わず笑ってしまった。

 拳を交わしたのに、俺に低い確率で勝てると、まだ思っている。

 このくらいの能天気の方が面白い! 


「そんなに俺の言葉は可笑しいかよ」

「ああ、可笑しいさ。まだ俺に勝つ気でいる事にな」

「お前見たいな、国家転覆を目指しているテロリストをほっとく訳には行かない。国に危険が落ちるならば、俺達は国を守る為に戦う!」

「見事な国愛だな。そして、反吐が出るほど不快だ」


 この国、いやそれ以前にこの世界には守る価値もない。

 全部俺がぶっ壊す。


「ほざいとけよ、クソガキ


 男は地を蹴り、俺の所に向かい、殴り掛かる。

 その攻撃を首を傾け、躱す。

 再び、睨み合いが続く。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る