第2話 異世界帰りの化け物
転移魔法は使えた。
ある程度の魔法は使えると、見ていいだろう。
普通の調べ方では、明確な答えに辿りつけない可能性がある。
だからと、言ってどの魔法を使えばいい?
「探知、記憶操作。一体どれを使えばいいんだ?」
「あのクロム様」
「なんだセロス?」
「口出しをお許し下さい。この世界全体に探知魔法を掛けるのはどうですか?」
セロスの言い分を聞いて、少し考える。
世界に探知魔法を掛けて、家族の現在が分かる物なのか? やるだけやってみるか。
「探知魔法、ワールドグリス」
さっきの転移魔法と、同じ要領で確実に世界を、探知させる。
転移魔法とは比べ物に、ならない程の魔素を消費する。
魔法が発動し、右手の甲に魔法陣の紋章が刻まれる。
「……ちっ」
「クロム様」
魔法が発動した瞬間。
俺は目眩に襲われ、体がフラフラになって、倒れそうになった。
その時、セロスが俺を支えた。
「セロス悪い。このまま横にしてくれ」
「はい、分かりました」
あ、くそ! 思っていたより魔素を消費してしまった。
横になって、少しでも魔素を体内に充満させないと。
……起きていても変な想像をしてしまう。
魔素を回復させる為にも、無駄な事を考えている暇もない。
ゆっくり、目を閉じた直後、俺の意識は暗闇に消えた。
眠りに付いてると思われる時、俺は多分夢を見ていた。
家族と過ごした夢。
その夢は素晴しく平和で──幸せだった。
「ロム様……クロム様!」
「どうしたセロス?」
「右手の魔法陣が光っています」
俺はセロスの言葉で起き、右手をみる。
すると、セロスの言う通り、右手に刻まれた魔法陣が光っている。
その光が消えると同時に、俺の頭には映像が流れて来る。
それは俺に取って最悪な物。
「やめて来ないで!」
「逃げろ紗由理」
男と少女が何からか、逃げている。
その何かまでは映像にはならない。
ただ、最後に男も少女も消える。
何一つの欠片も残らずに消えた。
「紗由理、父さん……」
探知魔法によって、映像に流れて来た人物。
それは俺の家族。
確かに存在していた。
だが、何かに襲われ、妹である紗由理も、父さんも消された。
頬から冷たい物が滴れる。
「なぁセロス。俺は今どんな表情をしている?」
「全てに絶望をした様な顔をしています」
「そうか……」
俺は絶望をした表情をしているか。
元々この世界には絶望し、壊そうとしていた。
家族のいない、この世界にはもう未練が一切ない。
ただ魔素が足りない状態だ。
この世界に復讐するのは、次の日でもいい。
時間はたっぷりあるからな。
次の日。
日が経った事により、消費された俺の魔素も回復した。
探知魔法の結果、俺含め、家族の存在が消えている。
あの映像は世界クラスでの探知の為。
副産物として映像が流れて来たに、過ぎなかった。
「じゃあお前ら行くぞ」
「「はい」」
セロスとクリスを連れ外に出る。
もうここからでいい、世界に復讐を始めよう。
まず、手始めにここら辺一帯を消し去る。
「
俺の腕先から赤黒い血の様な、六芒星の魔方陣が展開される。
轟音と共に魔法陣と同色の炎が爆誕する。
「いけ!」
そのまま炎を発射する。
炎は段々と巨大になり、一帯は爆炎に巻き込まれ、炎に呑まれていく。
人の悲鳴も聞く事はなく、一帯は炎に呑まれている。
数分してから──サイレン音が聞こえる。
「クロム様この音は?」
「この世界の犬」
「犬……ですか」
「お前達に分かりやすく教えると、騎士団だ」
「なるほどです」
「ではこの世界の騎士団が向かって来るんですね!」
「ワクワクするなクリス」
クリスは警察が来る事にワクワクしている。
正確には騎士団ではないが、異世界の住人である。
こいつらには騎士団と、言った方が分かりやすい。
サイレン音が先よりも近付いてる。
音も大きくなり止む。
俺らの前にパトカーが五、六台が止まる。
そこから人が降りて来る。
「貴様ら動くな。両手を上げ後ろに手を回せ!」
「そしてゆっくりこちらを振り向け」
「クロム様」
「一体どうしますか?」
セロス達が俺に聞き、指示を待っていた。
全て、俺が片付けてもいいが、流石にこいつらも、そろそろ暴れたい頃だろう。
「お前ら好きにやれ!」
「「了解!」」
「何を話してる。早く両手を上げ、後ろに回せ。さもないと発砲する」
「は? 発砲……? やってみろよ」
クリスは笑顔を見せながら、警察の方に体を向けた。
「クリス。私の分も残して置いてよ!」
「わってるよ」
クリスは体を動かし、準備運動みたいな事をしている。
警察は何度も忠告をした。
だが、クリスも俺も言う事は聞かない。
警察も痺れを切らし──発砲した。
警察の銃弾はクリスに命中したが、ビクともしていなかった。
「なんだ今の? 子供のお遊び?」
次の瞬間、クリスは飛び、地面を殴った。
その直後地面は割れ、数人の警察は地面の亀裂の中に落ちる。
「お前! 公務執行妨害と殺人罪で逮捕する!」
「あのさ、ごちゃごちゃ言ってないで来いよ」
警察の言葉にクリスは煽る一方。
「セロス。多分クリスが一人で片付けるぞ」
「この調子だとそうですね。私も乱入しちゃおうと!」
セロスもクリスに混ざり二人で、警察達を
クリスは素手、その反対にセロスは魔法で戦う。
異能力も魔法も使えない人間では、一方的な物で敵わない。
十分も経ったない内に、警察達は全滅をし、セロス達は不満そうな表情をしている。
「クリスがほとんど、片付けるもんでつまらない!」
セロスは頬を膨らまし、拗ねている。
クリスは手を合わして──謝罪をしていた。
「ごめんって──手応えが無さ過ぎて」
「今度は私がやるからね!」
「ああ、それでいいよ」
「後、クリスは私の魔法の実験体ね!」
セロスの言葉にクリスは、放心状態になっている。
「まぁセロスもあんま怒ってやるな」
「クロム様!」
ポンッとセロスの頭に手を乗せ、警察の方を見る。
ほとんどが瀕死になっている。
周りも俺の家以外は炎や氷で地形破壊をされていた。
「まぁ取り敢えずクリスは諦めろ」
「ちょ!? クロム様まで見捨てないで下さいよ」
「あはははは」
他愛のない会話をしていた時、バンッと銃声音が聞こえ、俺の眼前で銃弾が回転しながら止まっている。
「貴様!」
「まだ生きていたのか」
二人は一気に戦闘態勢に入る。
「何なんだよ。お前ら!」
「ただの
「ば、化け物め!!」
「ゆっくり地獄で眠れ!」
警察は最後の言葉を言い──俺は拳を瀕死の警察に叩き降ろす。
俺の拳から返り血が付き、警察は絶命をしていた。
「化け物か……」
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