② 構成の魅力
派手なアクションに目がいきがちですが、色々と削ぎ落としてみると、キャッチコピーの『使命か友情か』と二人の対比をかなり意識した造りになっていて興味深いです。
ビームの使命は攫われた少女の奪還、ラーマの使命は大量の武器を故郷に届けることです。
ラーマとビームは互いに、使命への最初の足がかりであり、達成間際の障壁であり、使命をおいても救いたい相手であり、それぞれの使命を実現させる存在でもあります。
(一応、以下にまとめます)
【使命への足がかり】
警察官になって目立つ活躍をしても出世の道が拓けなかったラーマにとって、ビーム一行を捕らえる命令はチャンスでした。
一方で少女の消息すら掴めなかったビームにとって、手がかりになるジェニーとの橋渡しをしてくれたのがラーマです。
【達成間際の障壁】
ジェニーから得た情報で、ビームは目的へと大きく近付きます。もう少しで少女を取り戻せる、というところで立ちはだかるのもまたラーマなのです。
ビームはラーマを即座に切り捨てられません。それでも少女を救うことを選びますが、ラーマによって阻止されます。
結果、ビームは捕らえられ、ラーマはその功績で特別捜査官になります。
あと一歩で故郷に武器が届けられるタイミングでうまれた迷い、そしてビームの公開処刑の失敗。
ラーマの中で親友を見捨てても良いのかという迷いは決意に変わります。
【使命をおいてもお互いを救う】
ひっそりとビームを少女とともに逃すことにしたラーマ。大怪我を負いながら二人を逃がすために奮闘します。
ビームはラーマに留めを刺す機会を得るも、そのまま走り去ります。
おかげでビームは少女とともに逃げおおせ、一方でラーマは捕われの身になります。
捜索の手が厳しく、故郷に帰れないビーム一行。あわや捕まるというところで、ラーマの婚約者シータの機転に救われます。
シータの口から初めて真相を知ったビームは、ラーマ奪還をシータに誓い、単身ラーマの元へ向かいます。
【使命の実現】
そうして二人は手を取り合い、最強の肩車、もとい神話になります。
武器庫を爆発させるラーマ。ビームは、危険な武器庫から大量の武器を持ち出します。
勝利を掴んだ二人が、使命を成し遂げて故郷へと帰り、物語は終わります。
(まとめ終わり)
全体を通すと、こんな筋書きになっていてかなり綺麗にまとまっています。
さらにこの大筋に『炎と水』それぞれの男の物語が絡んできます。
お互いの存在に影響を受けて、炎の男だったラーマに水の要素が加わり、水の男だったビームに炎の要素が加わっていく。
そんな作りをしている気がします。
使命のためイギリスの下に付き同朋であるはずのインド人を傷つけてきたラーマ。
ビームを鞭打ちながら浮かべた涙を皮切りに、立ち位置をイギリスの下からインド側へと移します。
牢に入れられながらも「充填、狙え、撃て」と言い放つシーン。ここまでの彼であれば、一時的に本音を
隠してやり過ごしそうでしたが、あえて真正面から徴発としかとれないような言葉を吐いています。
これはビームが鞭打ちのときに見せていた姿勢で、彼の不服従の意志を強く感じます。
また、最後に留めをビームに託したのは、誰かを頼れるようになった変化というか回帰を示しているように思いました。
一方で、子供を取り返すために、森から降りてきたビーム。
彼はいわば、怒りも不条理も知らないままに森で生きてきた虎です。力では勝っても、人の知恵に絡め取られて、眠らされてしまう存在でもあります。
ラーマとの出会いで、ビームは駆け引きを知り、知識を知り、これまで見えていなかった大義を知りました。
全編通してビームが銃を撃つのは最後だけ。
こうして、ビームは故郷を護る炎のような力を新しく得たのではないでしょうか。
RRRの構成を面白くしている要素として、ラーマの目的、使命が後半になるまで語られないことがあると思います。
まず、ラーマの『出世への執着』と『実力があるのに評価されない現況』だけが見せられます。
ビームと過ごすラーマは、頼りになって優しい兄貴。ナートゥダンスのあたりとか最高に格好良いですよね。
相容れない印象の二つの顔。
捕らえた羊飼いへの拷問からも見て取れる『使命への強い覚悟』。余命が一時間とわかると、真っ先に拷問相手を逃がす『本質的な優しさ』
本来優しいラーマを、鬼へと駆り立てる使命の内容は一切語られません。
だからこそ、襲撃時に対峙した二人に対して、観客は心からビームに感情移入できるのだと思います。
兄貴、嫌だよ、と心で咽び泣きながら、再び連れ去られていく少女の悲痛な叫びに葛藤するのです。
そして、後半。
やっとラーマの背景が語られます。
想像以上に壮絶な彼の生い立ち。亡くなった弟の存在。ビームとの食事風景とか、あの面倒見のよさとかがすでに被って辛い。
こんなの知っちゃったら、さあ……。ああぁぁぁぁ。
からのビームの公開処刑。私は二人のこんなシーン観たくないぃぃぃ。
ラーマが鞭を打つたびに、どうか膝をついてくれと祈るような気持ちで、誇りのために膝をつかないビームを見つめていました。
でも一方で膝を付かないビームは、ラーマにとっては光だったんじゃないかなぁ。
このシーンは、冒頭のラーマの初登場シーンと対になっているように思います。
一方で描かれるのは、鉄条網を乗り越えそうな怒れる民衆。
ラーマはたった一人外に出て、暴力によって指令を達成。火だるまになって戻り何事もなかったように鎮火したあと、無表情で上官の前に立ちます。
結果、民衆の怒りは霧散し、鉄条網の周りは無人に。
もう一方は、鉄条網越しに静かに見守る民衆。
ビームは暴力で跪かされそうになっても、誇りを貫き歌い続けます。
ラーマは血飛沫とともに涙を払い、鞭を打ちます。他の警察官も加わり、ビームを暴力で抑えつけようとしても、ビームは挫けません。
民衆はビームのために怒り、鉄条網を越えます。
自分自身がたった一つの武器だったラーマが、故郷に届ける本当の武器を見つけた場面なのかな、と思いました。
このシーンのビームの例えが、『火山』なんですよね。
観ているときも、山火事と洪水の出会いと表現された『洪水』担当のビームが『火山』なのが気になっていました。
反対に、ラーマの目には涙。
物語的にすごく重要なシーンなのに、ラーマの涙の美しさで色々ふっとんでしまいました。すみません。
そして、このあたりからのラーマは見ていられない……。もう祈るしかない。
ビーム一行とシータが出合うあたりまで、「うあ゛あ゛ぁ」と観ていたところに、不意打ちで過去編の続きがきてさらにダメージが……。
ここから始まって(過去編①②)、ああなって(冒頭)、色々あって、今こうでしょう!?
流石に酷すぎませんか……?
だからこそラーマを救うビームを心から応援し、最強の肩車にフィーバーしてしまうのですよね。うう。
このあとあたりは、クライマックスのはずなのに「え? え? えぇっ!?」と思っている間に進みました。
とりあえずすごいものを観た、とだけ。
すごいよ、RRR!(むりやり)
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