4. ロマンシング サガ ミンストレルソング~運命の出会い~


 そして時は流れ。

 スーファミからプレステの時代となり、ほぼ同時期に自分はゲームから離れてしまいました。

 単純にプレステが家になかったからというのもあるし、プライベートがとにかくゲームどころじゃなかったというのもある。

 人生のあれこれを山ほど経験し、うんと紆余曲折を経て、再びサガシリーズに触れたのは結婚してしばらく後、2014年に購入したミンサガでした。

 ロマサガ3から実に約20年(!)


「あの」怪作ロマサガ1のリメイクとして、2005年にプレステ2にて発売された「ロマンシングサガ ミンストレルソング」。通称ミンサガ。今書いてて気づきましたが、発売から10年近く経過してからプレイしたんだな自分……


 しかしその内容は、ロマサガ1とは全くの別物と言ってもいいレベルで一新されていました。

 中でも度肝を抜かれたのがやはりあの、特徴的なキャラデザ。ロマサガ1とのあまりの差に、ファンの間では大きな賛否両論が巻き起こり、今でも拒否反応を示すかたも多いと聞きます。

 アルベルトが羽ベルトになったり、アイシャが露出の極みな恰好になっていたり、ジャミルの耳が尖っていたりグレイは謎の毛玉になりホークは三つ編み髭のオッサンになりシフがツフになったりガラハドはガラハゲになったり……で、さすがの私も初見ではドン引きしたのを覚えています。特にアルベルトとアイシャ。


 しかしいざ、実際にミンサガに触れてみると。

 スーファミからプレステ2になり、グラフィックもシステムも何もかもが大きく違っていましたが、ストーリーと世界観、そしてキャラ設定自体はそこまで変貌していない。

 外見こそ大きく変わったけれど、基本的な中身はそこまで変わっていませんでした。

 むしろ、非常に良い方向へ洗練されたと言えるでしょう。元々ロマサガ1で表現したかったのはこういうことだったのか!と納得できるレベルで、それぞれのストーリーやイベントが収束していったイメージがあります。

 フリーシナリオ、シンボルエンカウントは勿論のこと、LP、閃き、連携といったロマサガ1以降のサガシリーズの要素もふんだんに盛り込まれており、まさにサガシリーズの集大成と言ってもいいかも知れません。



 そして、このミンサガにおいて。

 私は人生を揺るがすレベルの推しに遭遇することになりました。



 それは主人公の一人・踊り子バーバラのマネージャー的存在たるエルマン。

 そう、ロマサガ1においては非常に影が薄く、特有のイベントも皆無で、バーバラ主人公でしか仲間にならない無口な眼鏡のオッサンというイメージしかなかった彼です。

 しかも自分はバーバラ主人公でやった時、彼を外したことにすら気づかなかったという。



 しかしこのミンサガで、エルマンは驚くほどの変貌を遂げました。

 髭と眼鏡のオッサン姿からなんと、糸目の出っ歯、奇妙な黄色の帽子を被った若者に。

 年齢不詳ですがかなりの小柄なので(設定では161センチ体重49キロだそうで)見ようによっては少年にさえ見えます。

 親父と息子と言ってもいいレベルで彼は変わりました。ロマサガ1からミンサガで他にも大きく変わったキャラは多いですが、エルマンの変わり方は一番凄いんじゃなかろうか。

 通常時の台詞自体は殆どなく、固有イベントもないのはロマサガ1と同じ。しかし!


 彼の魅力はそんなハンデを覆して余りある、バトル時のボイスの数々!!

 戦闘苦手設定らしく気弱な台詞もあれば、会計係だからかお金に執着しがちな台詞も多い。声は阪口大助さんですが、新八(銀魂)やレオナルド(血界戦線)とは全く別のイメージの声です。芸達者ぶりに驚かされる。

 何といってもピンチに陥った時の


「何とか切り抜けて、早く帰りましょ!」


 が非常に良い! この一言で推しになったと言っても過言ではありません!!

 普段ヘタレな台詞ばかりだからピンチになったらどうなってしまうのかと思ったら、ほぼ開き直って腹を決めたこの言葉。普段逃げ腰なキャラがピンチ時に見せる、この胆力はたまりません!


 そして技を閃いた瞬間、カッと見開かれる糸目!! これを思いついたスタッフは間違いなく天才です。

 糸目キャラは目を見開いた時美形になるパターン多いですが、エルマンはそうじゃなく完全にギャグ方面に振ってるあたりも逆にポイント高いw


 何気にLPは18と、仲間キャラの中ではトップレベルを誇ります。

 序盤から仲間にしやすいし、サブキャラの中ではかなり強い部類に入る。

 私は毎周、当然のようにエルマンを最後まで使ってラスボスを倒しております!



 これ以上はエルマンの話ばかりになってしまう上、とあるイベントの結構重大なネタバレにも触れてしまうので、推しの話はこのへんでということで(;´∀`)

 ブログの方ではネタバレ全開で散々語りまくっておりますので、興味がおありのかたはそちらもご覧いただければ幸いです♪



 ロマサガ1から時代を経て幾多の変貌を遂げ、ミンサガとなって生まれ変わった世界。

 元からあったけど未完成だったイベントがコンプリート可能になったのは勿論、新規のイベントや新たなキャラクターも多く、より深く世界観を楽しめます。

 語られることのなかった多くの伝説が詩人によって語り継がれ、数多くの仲間との出会いによって世界は広がり、主人公たちはそれぞれ重い運命を背負いつつも、果敢に冒険へと乗り出していく。

 まさに『神は人をつくり、人は物語を作る』のキャッチコピー通り!


 中にはイベント自体は変わらないが、内容が変わったイベントもあったり。

 あのアイスソードイベントも、「殺す」選択肢自体は健在。しかしロマサガ1と同じようにそっちを選ぶと……?と、結構な罠が待ち構えております。


 しかしほどよいスピード感とドライさでぽんぽん進む物語は変わらない。むしろドライさが増したような気さえします。

「お前をシメる!」「こういう女は嫌い」「役には立たないな、絶対」「この手の顔は遠慮しておこう」「ナメてんじゃねぇよ!」などなど、選択肢の切れ味も相変わらず抜群。

 主人公たちをはじめ、キャラクターの感情表現も必要最低限にとどめ、空白部分はプレイヤーの想像にお任せ、というのも変わりません。もう少し説明が欲しい!どうなったのか知りたい!というところでイベントが終わってしまうのがニクイというかなんというか。

 ほどよいところで放り出される感は好みが分かれると思いますが、自分は好きです。自分の創作だと不必要な部分まで語りすぎてしまいがちなだけに、ここは見習いたいものです……


 このドライな感じは、台詞自体はロマサガ1からそこまで変化していないせいもあるのでしょうか。

 特にモブキャラの台詞はロマサガ1とほぼ一緒に思えます。モブキャラの台詞に妙な味がある気がするのはそのせいか(ゴールドマインのモブ台詞「ノルマがきつくて」とかも、声がついてさらに味わい深いw)

 ロマサガ1ではモブ海賊の台詞だった「おれたちゃかいぞく」はカッコイイ歌になってるしww


 その一方、台詞の内容は普通なのに声自体が特徴的過ぎてインパクト絶大になってしまったネタキャラも複数いたりします。殿下とかジャァンとかやる代さんとか殿下とか。

当時は非難囂々だったと思いますが今や公式でも半ばネタ化。



 ロマサガ1では全てを集めるのは不可能だったデスティニィストーンも、ミンサガではコンプ可能に。

 そして、とある条件を満たすと――

 当時RPG史上最強とまで言われたラスボスが登場します!!

 詳細は敢えて語りませんが、これがまた本当にヤバイ。

「ミンサガ 握手会」で検索すると出てくるのがコイツです。

 ロマサガ2のラスボスと同様、クイックタイムのような外道術を駆使しないと普通は無理なレベルです。

(※ただし、明確な意図をもってやらない限りその最強ボスは登場しない。つまり、偶然にも条件を満たしてしまって偶然最強ボスと戦わされるハメになって詰んだという事態には(多分)ならないので、あまり難しいのは苦手という方も安心)


 それでも主人公一人旅で、勿論外道術とか使わず撃破してしまうプレイヤーがいたりする。極める人は本当にスゴイ……



 ただ、このミンサガというゲーム。

 非常に面白いのですが、人を選ぶ面も多いです(サガシリーズ自体、その傾向強いですが)

 まず「進行度」という概念が存在し、戦闘をするたびにゲーム内の時間が進み、進行度も進む。すると、各地でイベントが発生したり、起こっていたはずのイベントが終わってしまったりもします。

 それだけならロマサガ1の時からあったシステムですが、ミンサガでは


 進行度の進みがとにかく、早・す・ぎ・る!


 という問題が。

 戦闘を2~3回こなしただけでイベントが終わるとか、当たり前のように起こります。

 そして敵は(ロマサガ1ほどの物量ではないものの)、主人公を見つけると恐ろしい速度で追ってくる。逃げることも出来ずに戦闘を強いられることもかなりあります。

 だから、最初からイベント全て完璧に網羅したい!という人にはあまり向かないゲームかもしれません。そもそも1周目ではクリア不可能なイベントもある。

 当然最初は未解決のイベントが多く発生してしまいますが、そういうプレイが実は公式でも推奨されていたりしますw(youtubeサガ公式チャンネル「開発スタッフインタビュー特別編『ミンサガ/ミンサガリマスター』の裏側に迫る!」など参照)


 何周もかけてあぁでもないこうでもないと、試行錯誤を繰り返してキャラを成長させ、世界を知っていく。それもまたミンサガの醍醐味と言えるでしょう。



 失敗に失敗を重ね、今度こそ助ける!今度こそ守る!今度こそ倒す!!という想いが強くなり、キャラクターへの感情移入も強くなる。

 キャラ描写が必要最低限であるにも関わらずサガシリーズのキャラ人気が根強いのは、こういったゲーム性からかも知れません。



 また、基本的にキャラクター性能の差はLPとBP(バトルポイント。技や術を使うと消費するが、ターンごとに増加。増加量はキャラごとに違う)、もしくは固定装備の有無のみ。後は仲間にしやすいか否かぐらいしかありません。

 中盤ぐらいまではステータスに差はあるものの、育てていけばほぼ全員強くなれるし、様々な武器や術を駆使して戦うことも出来ます。

 一見貧弱そうなキャラが大剣ぶんぶん振り回して敵を叩き斬ることも可能。

 きちんと育てれば、大抵のキャラは最強ラスボスに挑めるほど強くなれる!というのがまた良いところ。この種族はこの武器が装備できないから使えないとか、このキャラじゃ理論上絶対無理!というケースが非常に少ないのはかなり自分好みです。

 そういうキャラも全くいないわけじゃないですが、他のシリーズと比べると少ない印象。



 このミンサガ、当時でさえ神ゲーだったのですが。

 つい最近の2022年12月、リマスターが発売され、さらなる神ゲーへと進化を果たしております!

 移動速度などUIの改善は勿論、新規キャラに新規シナリオ、そして新規の裏ボス追加。それに加え、周回を重ね一定条件をクリアすると進行度の調整やキャラクターの成長限界突破も可能に。

 周回ごとに強さを引き継ぐ、いわゆる「強くてニューゲーム」は元からある程度可能でしたが、リマスターでは引き継ぎ可能な要素が大幅に増えました。


 そして勿論、あの最強のラスボスも――

 さらなる究極体となって復活!!

 私は全主人公をクリアし現在9周目をやっていますが、未だに倒せておりませんw ありとあらゆる知恵と勇気とお祈りを総動員しなければ無理です。

 しかし、こんなの絶対にどうやっても無理!というほどの無茶苦茶な強さではなく、装備を整えてしっかり仲間を強くすれば行けそうか?と思えるのも良いところ。



 巷では日本RPG10傑入りもあるとまで言われる、ミンサガリマスター。

 是非この機会に、皆様も一度はプレイをオススメいたします!


 出来ればもっと多くの人にプレイしてもらいたいし、色々な実況者様の反応を見たいゲーム。

 しかし装備集めやキャラ育成などにかなり時間がかかる為か、配信には不向きなゲームなのが玉に瑕……他のサガシリーズ全般にも言えますが。



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