最悪の起源

さけ

 いつか魔獣を滅ぼすために

いくら倒しても魔獣は一向に引きません


死屍累々、残り僅かな騎士達は身も心も限界に達していた

未だ絶えず魔獣が向かってくる

己が国の平穏の為、奮い立たせた心は既に折れ、

逃げ出す気力など残っている者などいなかった。


それでも魔獣は引きません


この苦しみから解放されたい

そう思い絶望に身を委ねようとしたその時、

天より星が降って来た。


見た目は華奢で花の様に美しい

その鎧に輝くは誰もが目指した龍の紋

我らが国の最強の証


彼女は慈愛に満ちたその目をこちらに向け微笑み

魔獣を指してこう言った


「汝ら此処より先は墓場であると知れ

それでも進むと言うのなら此処にて息の根

止めさせてもらう」


その目は澄んで真剣だった


それでも魔獣は引きません

              

それでも進む魔獣を見て彼女はまじないを紡ぐ



"万物の加護を此処に受ける

この世を創りし者の光は消えた

我が国、護りし旗達は

幾ら無惨に折れようと

私が救い、再びの掲揚を約束する

我は旗を照らす者、意を介さぬ残酷なる救世主"


光りを放つ彼女を見て憧れぬ者はいない

僕もまた、それに照らされた一人に過ぎない


夢から覚めて少し弾んだ気持ちで今日も

僕は訓練に向かう




いつか魔獣を滅ぼす為に


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最悪の起源 さけ @sake1728

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