清楚姫は女子会中 〜眞尋side〜
仕事を終えた私は、一花さんに連れられてカフェに来ました。
かまたカフェ。蒲田駅から徒歩5分ほどの場所にあるカフェです。
「お疲れのとこ悪いね〜。付き合ってもらって」
そう言いながらクリームソーダのアイスを突っつく一花さん。
昔ながらなクリームソーダを持つ姿がなぜか似合っています。
「いえいえ、こちらこそお誘いいただきありがとうございます」
そう言って私は、ブレンドコーヒーを啜ります。
有名チェーンのコーヒーもいいですが、街の小さなカフェで飲むコーヒーも格別です。
私がコーヒーに舌鼓を打っていると、クリームソーダのさくらんぼを咥えた一花さんがニヤニヤとしています。
「ところでさ。まひろんってしのむーのこと好きなの?」
んんっ!?
危うくコーヒーを吹き出すところでした……。
「な、な、なぜそれを!?」
「なぜって、あんだけ好き好きオーラ全開にしておいて気づかない方が難しいよ〜」
動揺を隠せない私を前に、より一層ニヤケ顔になる一花さん。
それよりも、です。
「好き好きオーラ!?そんなにわかりやすいですか!?」
まさか……!完璧に隠せていたと思っていたのに。
「わかりやすいってレベルじゃないよ。もうだって、しのむーを見てる目がハートになってるよ?」
そ、そんな……。
私としたことが、再会できた嬉しさのあまり態度に出ていたなんて。
ということは、まさか篠村くんにもバレてる!?
「いーや、しのむーは全く気づいてないと思うよ」
焦りと不安で狼狽える私の心をナチュラルに読んでくる一花さん。
余裕しゃくしゃくでクリームソーダをストローで吸っている仕草がなんだか無性に腹立たしいです。
私はこんなに焦っているのに。
とりあえず再びコーヒーに口をつけ、心を落ち着かせます。
冷静さを取り戻した私の様子に気づいたのか、一花さんに問い詰められます。
「それでそれで。好きってことでいいんだよね?」
「……はい」
「もちろんLOVEだよね?LIKEじゃないよね?」
「…………はい」
「おぉ〜そうかそうか。若いねぇ〜」
有無を言わせぬ圧に耐えきれず正直に話してしまいました。
このままだと一花さんのペースにのまれて色々喋ってしまいそうです。
腹を括って開き直ることにした私は一花さんに相談することにしました。
「でも篠村くんは私のことを特に何とも思ってないと思うんです……」
自分で言って悲しくなりました……。
ふと正面に座る一花さんを見てみると、またもやニヤニヤとしています。
「その辺は大丈夫でしょ。まひろん可愛いんだから押せばしのむーだってオチるって」
なぜか自信満々にそういう一花さん。
本当にそうでしょうか……?
「でも私、胸もないですし」
これです。ネックになっているのは。
男の人はきっと大きい方が好きなのでしょう。
あぁ、余計に悲しくなってきます。
そして私の視線は一花さんのたわわな胸部に。
すると一花さんはアハハと笑います。
笑い事じゃありません。
「大丈夫だよ〜。まひろんみたいなスリムなのも男受けいいだろうし」
面と向かって、遠回しに小さいと言われてしまいました。
改めて現実を突きつけられます。
「一花さんが羨ましいです」
そうだ。一花さんみたいにナイスなバディの女性が言い寄ってきたらきっと勝ち目はありません。
その時ふと気づきました。
1番のライバルは一花さんでは?
私より先に、篠村くんと同期として入社して2年間働いていますし、今日見た2人での観光の写真も楽しそうでした。
これはまずいのではないでしょうか?
不安と動揺が隠さずにいると、一花さんがまたもやニヤニヤとこちらを見ていました。
「もしかして、うちがしのむーのこと好きだと思ってる?」
「ぎくっ!?」
思っていたことをずばり言い当てられて、思わず声が出てしまいました。
「……はい」
「アハハ!ないない!そもそもうち彼氏いるし」
そう言って店員さんを呼ぶ一花さん。
「そ、そうなんですか!?」
驚きました。いや、一花さんはお綺麗ですし、いてもおかしくないとは思っていましたが。
「言ってなかったもんね。紹介するね。これが彼氏の雄二。ゆーくんって呼んでね」
そう言って、先ほど呼んだ店員さんがテーブルに来ました。
「一花がお世話になってます。
礼儀正しく挨拶してきた相原さん。まさか店員さんだったとは。
「姫野眞尋です。よろしくお願いします。相原さん」
「ゆーくんでいいって」
「何でお前が決めてんだよ」
一花さんと相原さん、いやゆーくんさん、仲が良いです。
「ゆーくんさんはここの店員さんなんですね」
「店員というか店長だよ〜」
なんと!?さらなる驚きです。今日は驚いてばかりです。
その後、ゆーくんさんが仕事に戻り、いい時間なので私たちも解散することにしました。
一花さんが奢ってくださるということで、ありがたくご馳走になりました。
「そういえば、やけに素直にゆーくん呼びしてたけど、しのむーのことは苗字呼びでいいの?」
お店を出た時、ふと一花さんがそう言ってきました。
「それは……」
それはもちろん、下の名前で呼びたいですが。
いかんせん恥ずかしいのです。
「いいじゃん。明日から朔くん〜って言いなよ。いつのまにかしのむーも眞尋呼びになってたし」
それは紆余曲折がありまして……
でもそうですね。いつまでもウジウジしてたって何も変わりませんから。
「わかりました。明日、名前で呼んでみます!」
そう宣言した私の足取りは、軽くてどこかワクワクしたものになっていました。
社会人3年目、高校時代に“清楚姫”と呼ばれていた同級生の教育担当になりました。 海野 鯵 @aji-umino
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