十三章 救出

 ソフィアは前を走るウィッチに手を引かれ遺跡の外を目指していた。


「ここまで来ればもう大丈夫です。それではこれで」


「待って! 貴女はこの前も私を助けてくれた。それマスターって人も……あなた達は如何して私を助けてくれるの?」


遺跡から大分離れた森の中へとやって来た時ウィッチがそう言って踵を返す。その背を呼び止めソフィアは尋ねた。


「……私達は貴女と出会って救われた。人間らしく生きていくことが出来るようになった。だから」


「私と出会ってってどういう?」


「「「「ソフィー!!」」」」


彼女の言葉の意味を理解しかねて尋ねた時ソフィアを呼ぶ声が聞こえて来た。


「皆」


背後から駆け寄って来る皆の姿に彼女は心底安心して体の力を抜く。


「お姉さん、大丈夫? 怪我とかしてない」


「黒の集団に連れて行かれたと聞いて心配しましたよ。何かされていませんか?」


「兎に角、無事なようで良かった」


ポルトが心配してソフィアの体中を確認する横でハンスが尋ねイクトが笑顔で安堵する。


「でも、どうしてここが分ったの? 導きのペンジュラムは奪われてしまったのに」


「これですよ。この探知コンパスのおかげで貴女の居場所を突き止めたんです」


不思議がる彼女へとハンスが探知コンパスを見せながら説明した。


「何処も怪我していないみたいだし。良かった。ハンス、イクト、ポルト。このまま彼女を連れて街まで」


「そうだ、レイヴィンさん。急いで遺跡の中に。マスターがキングと対峙しているの。早く助けに行って!」


レイヴィンの言葉を遮りソフィアは頼む。


「それはどういう事だ」


「仲間割れですかね?」


驚く隊長と考えるディッド。ソフィアは急いで助けに行って貰いたくて再び口を開く。


「事情は後で説明します。兎に角急いで行って下さい」


「分かった。ディッド、マルセン隊列を組め。遺跡の中へ突入するぞ」


「はい」


「あぁ」


彼女に再度頼まれレイヴィンが言うと指示を出す。ディッドとマルセンが動き兵士や冒険者達を連れて遺跡の方へと向かって行った。


「さ、私達は街まで帰りますよ」


「隊長達に任せていれば大丈夫だよ」


「そうだよ。お姉さん大変な目に合って疲れただろう。リーナ達も心配してるから帰ろう」


「えぇ」


皆に促されソフィアは頷く。そうして街まで戻っていった。


「……」


その様子を木の陰から見ていたウィッチは転移魔法を使いその場から姿を消す。


「……彼女は無事に騎士団に保護されました」


「そうですか。ウィッチ報告ご労様です」


ウィッチがやって来たのは森の奥深く。そこにいたマスターへと見て来た事を知らせる。


「これから如何しますか」


「キングが捕まった以上黒の集団は崩壊する事でしょう。我々の身も危うくなります。ウィッチ。皆に速やかに身を隠すよう伝達を」


「はい」


尋ねてくる彼女へと彼がそう答えた。


「私達もこの国から、いえこのまま姿をくらませたままにしましょう」


「それは彼女の為ですね」


マスターの言葉にウィッチが分っていながら尋ねる。


「そうです。これ以上彼女を危険な目に合わせないために。私達は消えてなくなるのですよ。黒の集団自体、ね」


「……イエス。マスター」


二人のやりとりはそこで終了し森の中には静寂だけが残った。


こうして黒の集団が組織自体解散することとなったのだがその事実をソフィア達が知ることはない。


その頃街まで戻ったソフィア達は心配して工房で待っていたリーナ達に出迎えられていた。


「お帰りなさい。あぁ~良かった。無事に帰って来てくれて安心したわ」


「リーナさんからソフィーさんがいなくなったって聞かされてすごく心配しましたが、でも、こうして戻って来てくれて良かったです」


「一体。何があったのですか?」


安堵するリーナに微笑むローリエ。不思議がるユリアの様子にソフィア達は顔を見合わせる。


「実はね……最近巷を騒がせている黒の集団を捕まえるために私達は協力していたの。それで、ちょっと色々とあってね」


「成る程ね。それで最近工房にこもりきりだったのね」


これ以上隠すことは無理だと判断した皆の了承を得て彼女は三人へと説明した。


「攫われたのもその黒の集団が関係していたってことですね」


「でも、もう心配はないんだ。隊長達が今頃捕まえてくれていると思うから」


ローリエの言葉にポルトが笑顔で語る。


「さ、皆お腹空いているでしょう」


「皆さんが帰って来るまでの間に料理を一杯作っておいたんです」


「どうぞ、召し上がってください」


安心したのかリーナ達がそう言って微笑む。


「遠慮しないでたくさん食べて下さいね」


「有難う御座います。それでは」


「「「「頂きます」」」」


ユリアの言葉にソフィアは言うと四人そろって声をあげ料理に食らいつく。


「おいし~い。お姉さんの事心配で一杯走り回った身体に染み渡る~」


「本当に美味しいです。有難う御座います」


「ふふっ。一杯食べて元気出してくださいね」


ポルトとソフィアの言葉にローリエが微笑む。


「俺達までご馳走になってしまって、すまない」


「あら、いいのよ。イクト君達も頑張ったんだから。確り栄養採らないと」


イクトが申し訳なさそうに謝るのでリーナが笑って答える。


「本当に今回はくたびれてしまいましたよ」


「ハンスさんも大変だったのですね。さ、沢山食べて体力回復して下さいね」


盛大に溜息を吐き出すハンスへとユリアが微笑み料理を差し出す。


こうしてリーナ達の作ってくれたご馳走を食べて過ごした後、ソフィアもポルトも疲れているだろうからという事でイクト達が帰って行き二人はベッドで休むこととなった。

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