エピローグ
鳥のさえずりが聞こえる朝。ソフィアはそっと目を覚ます。
「う、う~ん」
「お姉さん。起きて! 隊長が昨日の事で話に来てるんだよ」
大きく伸びをした時ポルトが駆け込んでくる。彼女は急いで身支度を整え一階へと降りて行った。
「おはよう。ソフィー」
「お早う御座います。それで、黒の集団はどうなりましたか?」
笑顔でレイヴィンが挨拶するとソフィアは食い気味に尋ねる。
「俺達が遺跡に乗り込んだ時キングと呼ばれる奴が気絶していた。そこでそいつを捕まえて素性を調べたところガルリオ王国の第二王子だった」
「ガルリオ王国って隣国の?!」
隊長の言葉にソフィアは目を丸めて驚く。
「あぁ。前に山小屋を調べに行った時イクトがガルリオ王国の家紋が彫られた柱を見つけてくれていたから何か関係があるとは思っていたが、黒の集団のリーダーであり何かを企んでいた主謀者であるキングって奴の正体が第二王子ならば納得がいく」
「そう言えば攫われた時に魔法生命体を生み出す装置を使って国を襲うと言っていたわ。それってガルリオ王国の事だったのね」
レイヴィンの話を聞いていた彼女も前にキングの言葉を思い出し納得する。
「政権争いが激しいとは聞いていたが……大方第一王子を亡き者にして自分が国王の座につこうとでも考えていたんだろう」
「それで、装置はどうなったんですか?」
隊長の言葉にソフィアは大量にあった装置について尋ねた。
「勿論全部壊したさ。あんなもの世に出回っちゃいけないからな」
「そうね。どんな理由があれ悲しい思いをする人達をこれ以上増やしてはいけない。レイヴィンさんの行動は正しいと思うわ」
レイヴィンの返答に彼女は微笑み頷く。
「黒の集団の主謀者を捕まえたからな。これから色々と忙しくなる。ソフィーの身に何があって如何して森の中にいたのかはまた今度改めて話を聞かせてもらうから。それじゃ俺はこれで失礼する」
「えぇ。わざわざ教えに来てくださり有り難う御座いました」
隊長が言うとソフィアは返事をして見送る。するとまた扉が開かれ誰かが入って来た。
「はい。ってヴィオ先輩?」
そこにはヴィオルドが立っておりソフィアは驚く。
「アルさんから話は聞きましたよ。ソフィーさん黒の集団とかいう奴等に攫われたそうですね。大変だったでしょう」
「え、えぇ。まぁ……」
彼の言葉に彼女は慌てて答える。
「貴女は昔から危なっかしい所がありましたからね。これを差し上げます。少なくとも身に降りかかる厄を払ってくれるでしょう」
「これはお守りですか。有難う御座います」
ヴィオルドから手渡された小さなお守り袋を手に取るとお礼を述べた。
「私の仕事も終わりましたのでそろそろオルドーラに戻らないといけません。ですが、貴女の事が心配です。今回の様な目に合わないかと気が気ではなくて……」
「以後気を付けます」
「本当に気を付けて下さいよ。それでは、私はこれで失礼します」
彼が言うだけ言うと立ち去る。そのすぐ後にまた誰かが入って来た。
「ソフィー。隊長から黒の集団に襲われたって聞いたぞ。色々と大変だったんだな」
「アル。心配かけてごめんね」
入って来たのはアルフォンスでソフィアは申し訳なさそうに謝る。
「僕もそろそろオルドーラに帰らないといけない。あんたを残して帰るのが心配だからこれを渡しに来たんだ」
「これは身代わりのコイン」
彼女から渡されたのは身代わりのコインでソフィアは目を瞬く。
「これで少しは身に降りかかる厄を払ってもらえると思う。それじゃあ、またこの国に来ることがあったらソフィーの所を尋ねるから」
「うん。アル気を付けて帰ってね」
アルフォンスが言うと彼女は笑顔で見送る。
「アルもヴィオもお姉さんの事相当心配してくれていたんだね」
「えぇ。二人がオルドーラに戻る前に色々と心配かけたお詫びをしておかないとね」
黙ってやり取りを見守っていたポルトの言葉にソフィアは頷く。
「それじゃあ今から行っておいでよ」
「えぇ。行ってくるわね」
こうしてキングと呼ばれていた男が捕まった事により黒の集団との対峙は幕を閉ざした。
ソフィア達にようやく穏やかな日常が戻って来たのである。
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あとがき
これにて黒の集団編は完結に御座います。ソフィーを助けてくれるウィッチとマスターが誰なのかは最後まで明かしませんでしたがちゃんと読んでいれば分かるように書いてありますので「あ~。成る程ね。だからあそこで二人はこう動いたのか!」と分ると思います。次回でいよいよこの錬金術師さんも最後の物語になると思います。最後まで付き合っていただけたら幸いです。ここまでご拝読下さり誠に有難う御座います。
ちなみにお針子さん6でイクトが「委員会の役員になった」ためアイリスから距離を置いている感じになっていましたがその裏側はソフィーの御手伝いをしていたから。でした。後国王より口止めされていたのでアイリスには何も教えれなかったという感じですね。
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