四章 護衛のお願い

 レオから話を聞いた後ソフィア達はハンスのお店へと訪れる。


「つまり、ソフィーがまた黒の集団に狙われる危険性があるから私に護衛を頼みたいという事ですね」


「まぁ、簡単に言えばそうなるな」


「ハンスさんお願いできるかしら?」


ズレてもいないモノクルをくいっとあげながら話した彼へとレイヴィンが頷きソフィアもお願いした。


「ソフィーの身の安全を守るためならば喜んで護衛を引き受けましょう。あぁ、何かあると困りますよね。という事で色々と準備をしないといけませんね」


「準備?」


ハンスの言葉に彼女は首を傾げ不思議そうにする。


「奴等と対抗するために色々と錬金術でアイテムを作るのですよ。例えば爆弾とか」


「爆弾は流石に街中では危ないと思うけど、ソフィーの力ならば威力と範囲を絞ったものを作れるかもしれないな」


彼の話に真っ先にイクトが口を開く。その顔は何事か考えこんでいる様子だった。


「そうね。これから黒の集団を捕まえるために色々とアイテムを作っていかないといけないわね」


「騎士団や冒険者からも後日正式に依頼が来ると思う。でも今のうちに作っておくのもありだと思うぞ」


どんなアイテムを作ればいいだろうかと考えこむソフィアへとレイヴィンが声をかける。


「前回の依頼の時と同じで捕縛系や身を護る系とかを中心に作ればいいかしら?」


「戦闘も避けられないかもしれないから攻撃用のアイテムも頼む」


「ソフィー自身の身を護るアイテムも必要かと思いますよ」


彼女の言葉に隊長がそう答えハンスも続けて話す。


「これは今から素材を用意しておかないと。ってことでレイヴィンさんハンスさん。また街の外まで付き合ってもらってもいいかしら」


「勿論。いつでも付き合うさ」


「私も何時でもお供いたしますよ」


ソフィアのお願いに二人がにこりと笑い答える。


「ソフィー。街の外に行くなら俺も一緒に連れて行ってくれないかな」


「え? イクト君お店があるのに大丈夫なの」


何事か考えていたイクトが顔を上げるとそう言って来た。その言葉に彼女は驚く。


「うん。ちょっと調べたい事があってね。それにソフィーを護衛するって決めたんだ。街の外に行くなら俺も一緒に行くよ」


「でもお店は大丈夫なの? アイリスちゃん一人で大変じゃないかしら」


彼の話を聞いても納得できずにソフィアは更に尋ねた。


「アイリスの事ももちろん心配はあるけれど、でも今はそれよりも君を一人にさせられない。隊長は周りに目を光らせていないといけないだろうし、ハンスだけではソフィーに何かあった場合対処が出来ないかもしれないからね」


「そりゃあ、一人よりも二人の方が効率はいいとは思うけれど……」


「お願いできるかな」


イクトの言葉に悩む。そんな彼女へと優しい口調で彼がお願いしてきた。


「分かったわ。あんまり遠くまでは連れていけれないけれどこの周辺でならって事で良ければ」


「うん。有り難う」


決断を下すソフィアへとイクトが嬉しそうに微笑む。


「……ミラさんが亡くなってから一度だって仕立て屋のお店を休むことなくソフィーの護衛もしなくなったイクトが珍しいですね」


「何か考えがあるんだろうよ。それが何かは分からないけれどさ」


二人の遣り取りを見ていたハンスとレイヴィンが小声で話し合っていたことをソフィアは知らない。


それから家へと戻っていったソフィアは心配して待っていたポルトへと話を伝えた。


「と、言う訳よ」


「そっか。不安だったけどハンスが護衛してくれるなら心配いらないね。彼ならこの工房に出入りしてても全然おかしくないっていうイクトの話も納得できるし。お姉さん良かったね」


説明を終えたところでポルトが納得して笑顔になる。


「それから近いうちにイクト君とハンスさんとレイヴィンさんとで木こりの森に採取に行くのよ」


「でもイクトが行くなんて珍しいね。ミラのお店を守るんだって言ったっきり護衛もしなくなったのに」


ソフィアの話に首をかしげならが彼が言う。


「何か考えがあるみたいだけれど私では何を思っているのかさっぱりわからなかったわ」


「木こりの森だろう。それならお姉さんが捕らわれていた山小屋があるじゃないか。そこに手がかりでも探しに行きたいのかも」


溜息交じりに答える彼女へとポルトがそう仮説を唱える。


「そうかもしれないわね。さ、遅くなってしまったから今日はもう工房を閉めて夕ご飯にしましょう」


「は~い」


ソフィアの言葉に彼が元気よく返事をした。


その翌日。ソフィアは錬金術の準備を始める。


「ソフィー。何を作るの?」


「イクト君が何を調べる気でいるのか分からないけれど、アイテムを用意して行けばいいかなって思ったから探知コンパスを作るのよ」


その様子を伺い見ながらポルトが尋ねた。それに彼女は笑顔で答える。


「探知コンパス?」


「そうよ。ポルト探知コンパスは何だったか覚えている?」


「何で必要なの?」といいたげに不思議そうに首をかしげる彼へとソフィアは尋ねた。


「あれだろう。上級者の書に載っていたやつ。えっと確か……あらゆるものを探索するのにどこにあるのか分からない時に使えるアイテム。それが探知コンパスだろう」


「大正解。だからこれを作っておけばイクト君が探している物を見つけられるかもしれないでしょ」


「そっか。そうだね」


話を聞いて納得したポルトが彼女の手元のフラスコへと視線を向ける。


「どんな時でもどんな状況でも探しているものが見つかりますように。……さあ、完成よ」


祈るように願うとフラスコが黄金色に輝き空中に探知コンパスが形作られていく。


出来上がったそれを見てソフィアは微笑んだ。

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