十三章 皆でピクニック
今日はリリアとポルトにお店番を任せ、ソフィアは教会のユリアのお店へと向かっていた。
「はぁ……」
「こんにちは。ユリアさん溜息なんかついてどうしたんです?」
いつものように買い物をしようと思っていると盛大な溜息が聞こえ驚く。
「あ、ソフィーさんいらっしゃいませ。実はちょっと悩んでいてね」
「悩みですか?」
困った顔で話すユリアに如何したのだろうと身を乗り出す。
「教会でシスターになってからずっとこの売店を担当してきたのだけれど、変わらない毎日に飽きてきてしまってね。もっと刺激的な事がしたいと思うようになったのよ。神に仕える者がそんなこと思ってはいけないのだろうけれど……」
「確かに毎日同じお仕事だけだと飽きてしまうかもしれないですね」
悩みを打ち明けてくれた彼女へとソフィアは相談に乗る。
「そうだわ、ソフィーさんは町の外に採取に行く事がありますよね。お願いがあります。
私も連れて行ってもらえませんか」
「えぇっ!? でも町の外は危険もありますからそんな所にユリアさんを連れて行くわけには……」
提案してきたユリアへと盛大に驚き断ろうと口を開く。
「神に仕える身として修業を積んできましたので大丈夫ですよ」
「でもユリアさんがお店を休んだら困る人もいるのでは?」
何とかして諦めてもらおうと必死になるが彼女が大丈夫だといわんばかりににこりと微笑む。
「ソフィーさんはサリアにお会いになった事は御座いますか? あの子は私の妹なのですが、私がお休みの日にお店を担当しているのです。彼女に頼めば大丈夫ですよ」
「私は会ったことはないけれど、ポルトが会った事があるって言っていたわね」
ユリアには顔のそっくりな妹が一人いて、彼女がお店を休む日に代わりに売店を担当しているとポルトから聞いたことがあったのでそれを思い出しながら呟く。
「気が向いたらでいいので私を町の外に行くときに誘ってくださいね」
「分かりました。危険な採取地には連れて行けれませんが近くならばお願いします」
押し負けてしまったソフィアは遂に頷く。こうしてユリアを採取地に一緒に連れていけれるようになった。
その日から数日が経ったある日。
「こんにちは。ソフィーいるかしら」
「はい。あ、リーナさん。それにローリエにユリアさんも」
「今日はみんな揃ってどうしたの?」
工房の扉が開かれ入ってきた三人の姿にソフィアとポルトが出迎える。
「皆で始まりの原っぱにピクニックに行こうって事になってね。それでソフィー達も一緒に如何かと思ってお誘いに来たのよ」
「ピクニックですか」
彼女の言葉にソフィアは呟く。
「楽しそ~う。ねえ、ねえ。お姉さん、リリア。おいらたちも一緒に行こうよ」
「そうでしょう。たまには工房をお休みにして息抜きするのも悪くないと思うんです」
ポルトが真っ先に賛成の声をあげるとローリエが微笑み語る。
「最近忙しくて休みもろくに取れていなかったので、たまにはよいのでは?」
「そうこなくちゃ。さ、そうと決まったら早速みんなで行きましょう」
「はい」
リリアの言葉にリーナがにこりと笑うと皆でピクニックへと行く事となる。ソフィアは返事をすると工房の扉に鍵をかけて町の外へと向かった。
「ユリアさんが作ってくれたピーチパイとっても美味しいです」
「ふふ。上手に焼けていて良かったわ」
ソフィーの言葉にユリアが嬉しそうに微笑む。
「このサンドウィッチもとっても美味しいよ」
「あらあら、そんないっぺんに頬張っちゃだめよ。喉が詰まってしまうわ」
サンドウィッチを口いっぱいに頬張るポルトへとリーナが優しく注意する。
「ローリエさんの特性のハーブティーも美味しいです」
「たくさん作って持ってきたので一杯飲んでくださいね」
リリアがハーブティーを一口飲むとローリエが柔らかく微笑みポットを見せた。
そうして穏やかな時間は流れてソフィア達はピクニックを楽しむ。
「採取以外でここに来るのは初めてです」
「私も、普段は工房で過ごしているので、此処に来るのは多分初めてだと思います」
「おいらもこの町に来る時に一度通ったぐらいで、後はソフィーと一緒に採取に来るくらいだったからこんなにのんびりするのは初めてだよ」
ソフィアの言葉にリリアとポルトも語る。
「ここは町の人達の憩いの場なの。ピクニックに出かけるならば始まりの原っぱへって町に住む人たちは小さなころから教わるほど定番の遊び場なのよ」
「私も昔はよく妹と一緒にここに遊びに来ていました」
「植物が多いので花の名前を覚えるのに通ったのが懐かしいです」
リーナが話すとユリアとローリエも子供の頃の事を話す。
「たまにはこうやってのんびり過ごすのもいいものね。リーナさん、ローリエ、ユリアさん。ピクニックに誘ってくださり有り難う御座います」
「また皆で一緒にピクニックに行きましょう」
「こんなに楽しいならおいら毎日でもピクニックしたいな」
「たまにするから楽しいのよ」
「今度来るときは私も何か作ってきますね」
「楽しみにしております」
皆で穏やかに話し合うと日がくれる前に町へと戻って行った。
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