五章 教会へ
ハンスと出会った日から数日が経過したころ。ソフィアは悩んでいた。
「う~ん。やっぱりそこまで危険はないとはいえ、イクト君とポルトと木こりの森へ行くのだから、傷薬くらいは持って行った方が良いわよね。でも、今ある素材では作れそうにないし……」
「ソフィーおはよう。……そんなに悩んでそうしたの?」
工房へと入ってきたリーナが驚いて尋ねる。彼女は以前お花屋さんを教えてもらったことを思い出し聞いてみようと口を開く。
「リーナさん。この町に薬品とかを作るのに適した素材を売っているお店とかありませんか?」
「薬品? この前頂いた風邪薬みたいなものを作るための素材って事かしら? それなら教会に行けば探している素材が売ってあるかも」
ソフィアの問いかけに彼女が考えを巡らせながら話す。
「教会ですか? 有難うございます。今度行ってみますね」
「今日は貴女のお店に興味を持ったご近所さんの話をしに来たのよ。前に作ってもらった枯れない花を見てどこで売ってるの? って聞かれてね。それでこの工房を宣伝しておいたから、近いうちにここに来ると思うわ」
お礼を述べる彼女へとリーナが微笑み語る。
「いつも有難う御座います」
「ふふ。早くあなたの工房の事が広まると良いわね。……それじゃあ、お仕事頑張ってね」
いつもお客様を紹介してもらって有り難いと頭を下げるソフィアへと彼女がにこりと笑い工房を後にする。
「さて、今日もお仕事頑張るわよ」
「おね~さん! おはよう。ご飯できてるよ。冷めないうちに食べてよ」
「はーい」
意気込む彼女へとキッチンからポルトの声が響く。それに答えるとソフィアはテーブルへと向かっていった。
それから三日後。工房でのお仕事もひと段落した頃にリーナに教えてもらった教会へと向かう。
「ここが、この国の教会なのね。凄く大きな建物。ポルトに店番を頼んであるから早く用事を済ませて帰らないと」
巨大な建物を見上げ呆気にとられながら早く用事を済ませようと中へと入る。
「こんにちは、教会へようこそおいでくださいました。本日はお祈りでしょうか、それとも見学の方でしょうか?」
「あ、えぇっと。リーナさんからお話を聞いて、この教会で物を売っている場所があると聞いてきたのですが」
「ラミネル教団が運営する売店をご希望の方ですね。それでしたら、右の廊下の突き当りに御座います」
エントランスへと入るとその広い敷地で迷子になりそうだと左右に顔を振る彼女に、神父が近寄って来る。話しかけられたので用向きを伝えると彼が柔和な微笑みを浮かべて説明してくれた。
ソフィアは言われたとおりに右側の廊下へと向かい突き当りまで歩いて行く。
「あ、あった。ここが売店ね」
「協会へようこそおいでくださいました。本日はどのようなお品をお探しでしょうか」
彼女が近寄ると売店を担当するシスターが微笑み声をかけてきた。
「こんにちは。私は錬金術師で、この教会に錬金術の素材になりそうな物が売っているかもしれないと聞いてここに来たのです」
「まぁ、錬金術師様ですか。オルドーラ王国にお住まいの錬金術師様もよくこのお店をご利用なさいます。貴女もオルドーラから起こしなのですか?」
ソフィアの話に驚いた顔をした後微笑み尋ねるように言われる。
「いいえ。私はこの国で錬金術の工房をやってます」
「この国で錬金術の工房を……それは凄いですね。このお店に置いてある素材はこちらになります。お探しの品は御座いますでしょうか」
この国で錬金術の工房を開いているという言葉に驚いたシスターだったが凄いと褒めると、商品の中から素材となりそうなものを見せてきた。
「これ、これを探していたんです。頂けますか」
「畏まりました。こちらをお包み致しますね」
素材の中から探していた品を伝えるとそれを包んでくれる。
「私はこの教会のシスターを務めておりますユリアと申します」
「私はソフィア。ソフィーって呼ばれているわ」
ユリアと名乗った少女へとソフィアも自己紹介した。
「ソフィーさんですね。またいつでもこの教会へお越しください」
「えぇ。これからも度々素材やアイテムを買いに来させてもらうこととなると思います」
柔らかく微笑むユリアへと彼女もにこりと笑い答える。
こうして教会で購入した素材を基に傷薬の作成のため工房へと戻って行った。
「さて、始めるわよ」
「おいらもお手伝いするよ」
鍵を閉めてクローズの札に変えたら錬金術を行うために準備する。そんなソフィアへとポルトが意気込み声をかけた。
「それじゃあポルトは教会で買ってきたキノコを使って青の薬の生成をお願いね」
「分かった。まっかせてよ」
アイテムを作る素となる青の薬の生成を任せるとソフィアは傷薬に必要な綺麗な水を作る。
「ソフィー。出来たよ。これで大丈夫?」
「えぇ。有り難う。さて、それじゃあこの青の薬と綺麗な水そして教会で買ってきたこの樹の実を使って傷薬を作るわよ」
ポルトが見せてきた青の薬を見て微笑むとそれらをフラスコへと投入して融合させると念を込めた。すると黄金色に輝きだしたそれから光の球体が浮かび上がってくると傷薬が姿を現す。
「完成よ」
「やった~」
にこりと笑うソフィアの言葉にポルトも嬉しくなって飛び跳ねる。
「これをもって明日は木こりの森へと向かうわよ」
「明日が楽しみだなぁ~。早く明日にならないかな」
彼女の言葉に彼が浮かれた様子で話す。
「ふふ。楽しみすぎて眠れないなんてことにならないようにね」
「うん」
ソフィアの言葉にポルトが元気良く返事をすると、二人は夕飯を食べて翌日の採取の為にこの日は早めに休んだ。
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