第19話 思念波
「人の悲鳴が、頭の中でこだましてる」レイの中でローダが呟いた。その目には、涙が浮かんでいる。
「あの黒いのの思念波のせいで、通信装置が壊れたか?」レイが自身の機能の不調を探すが、そんなものはなかった。
彼女は、思念波の影響を何も受けないというような都合のいい体質ではなかった。思念波は、精神の奥深くを蝕んでいた。
いくら援軍が到着したとしても、数の差は莫大であり、地球艦隊は撤退を始めていた。宙域の戦闘の光が徐々に減少していく。
しかし、大打撃を受けたバズン共和国の駐在艦隊は地球艦隊を逃がすわけにはいかなかった。
「ジャマー艦を前進させろ!地球艦隊を逃がすな!」
巨大な球体を抱えた見た目をした艦が、二隻の戦艦に守られながら前進する。
「行かなきゃ、逃げられない」ローダは涙を拭って操縦桿を握った。
レイが飛んで行った。二隻の戦艦に向けてレーザーを打ち込み、ジャマー艦の艦橋を殴りつけて破壊する。
そしてジャマー艦の球体を殴り、穴を開けてから距離を取ってレーザーをその中に向けて放った。脆弱なジャマー機構はたちまち破損し、周囲の艦艇を巻き込みながら爆散した。
レイが日向に再び帰還し、地球艦隊もあさなぎの艦も転移をした。
艦隊は、たちまち地球のような青い星の上に到着した。日向が隊列から外れ、惑星に降下していった。
北方鎮守府の付近の海域に爆音と水柱を立てて着水した日向は、そこへ寄港した。
ローダはレイに乗ったまま日向から降りた。
「うう。だめだ」
「なら、休もう。操縦は任せて」
レイはそのまま飛び上がり、去って行った。
ローダの頭の中には、人の悲鳴が響き続けていた。
「なんで。ローダは何も言わずに……」リリーが、レイの切り裂いた雲を眺めて言った。
「疲れてるんだろう。休ませてやってくれ」ザックが同じものを見ながらそうリリーに言った。
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