第10話 北方鎮守府

 ナーガ王国からの使者がやってきて一週間後、マドスナッザ帝国の北方鎮守府内で、終戦に向けての会議が行われていた。


 航空機を運用するための広大な敷地と、艦艇の運用のための軍港を持つこの基地に、大量の艦艇が帰ってきていた。


 レイはローダを乗せて彼女の父を治すために首都ドレッドノートに行っていた。


 鹵獲されたゴッザの一体が、艦艇用のドックで修理と改修とを受けていた。無線用のアンテナが頭に付いている。


「我々も数機分解しましたが、操縦の仕組みがわからんのです」


 整備士の一人がザックにそう言った。そんなことを言われた彼も、開発者ではない。


「俺もそこらへんは無理だ。何かマニピュレーターで操作できそうな武器はないか?」


 整備士たちの目線は、3mの長さの対水雷艇砲を向いていた。


「……それを元にライフルでも作れるのか?」


「作れる技術はありますよ。理由がなかっただけです」


「わかった頼もう」


 ザックは、一部が改修されたゴッザを見て、異様な点に気が付いた。機体の胸に着けられた海軍のエンブレムが木製なのだ。


「なあ、あれ木じゃないか?」


「そうですよ。金属は重くて手間もかかりますから」


「なるほど」


 ザックは納得し、ゴッザのOSを確認するために胸のハッチを開けてコックピットに入った。


 数人がライフルを作るために資材や工具を対水雷艇砲の所へ集めた。



 保安艇が、一機のゴッザを察知した。すぐさま鎮守府に通達がなされる。


「発進可能な戦闘機をすべて出せ!」


 大きな盾を持ったゴッザは、その盾で機銃や榴弾を防ぎ、乗っていた航空機に多少の傷はありながらも鎮守府の滑走路へ着地した。


「襲撃か」


 整備中だったが、ザックはゴッザを操作する。


「損耗はあまりないようだな。行けるか」


 ゴッザが立ち上がる。


「奴の装備の盾はSSTOを改造したものか。宇宙に行くためのものをあんなふうに使うとは贅沢だな」


「なんだあのゴッザ、木のエンブレムが胸についているぞ。まさかリノリウムじゃないだろうな」


「どうせ木製とかリノリウム製とか言ってるんだろうなあれのパイロットは」


 ザックが増設された無線機を起動する。


「俺が隙を作る。それを狙え」


 リノリウムゴッザが、光の剣を抜き、高軌道で盾のゴッザに近づく。盾で光の剣を防がれたゴッザは、剣を捨てて相手のゴッザの盾とそれを持っていない方の腕をつかんだ。


「掴んだところで……」


 掴まれたゴッザは振りほどこうとするが、同じ力を持つ相手を振りほどけない。そして、背後で艦艇の砲が自信を狙っていることにも気がつけなかった。


「今だ!」


「撃て!」


 それぞれの船で砲手に向けて指示が飛ぶ。そしてすぐ、砲弾が彼らに向けて放たれた。ザックは盾持ちを踏み台にして飛び上がり、それらを躱す。

 

 残されたゴッザは盾も間に合わず、徹甲弾によって粉々に撃ち抜かれた。


 飛んだゴッザは着地するが、中のザックは気を休めてはいなかった。すぐにレーダーの反応を確認する。


「反応はないが、胸騒ぎがするな」


 上空から飛来するそれの方をゴッザが向く。そしてレイを真っ黒にしたような機体が海上に降り立った。

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