第8話

 結局。

 僕のことを大人の間で話す必要があるから、と、長老が出て行き。

 僕は子供達から、事情ってやつを聞かされることになった。


 タヌキの子がポン。

 キツネがコム。

 イタチの少女で、長老に突っかかったのがシェン。

 僕に謝ったりお願いしてたのがチェン。

 シェンとチェンは双子の姉妹で、長老のひ孫に当たるそうだ。ちなみにシェンがお姉さん。


 彼らはあの鳥居の前で異世界からの勇者召喚をしていたんだそうだ。

 なんでも鳥居は世界をつなぐ扉なんだって。

 時と力がうまく交じり合った時に世界は繋がるそう。

 かごめかごめの歌はその媒体で、繋がる世界にはこの歌が伝わるんだとか。

 僕もこの歌を知ってるって言ったら、おおいにうなずいていたけど。


 この歌で繋がった世界は、等価交換って呼ばれる力が働くんだって。

 世界には魔力ってのがあって、それはどの世界にも、どんな生き物にもあるけど、認識できる者は少ない。認識できれば魔法が使えるんだって。

 長老がやったのも、そんな魔法。

 そして僕がポンを弾き飛ばしたのも魔法のはず、だそうだ。


 当然僕には魔法なんてものわかんない。

 けど、どうやら世界を渡るってことをすれば魔法にってのができて、ツワモノ=魔法使いになれることが多いんだって。

 そしてそれを期待して、召喚の儀を行ったんだ。


 召喚には何かしら交換しなきゃなんない。

 だから人を呼び出すときは、あちらの世界にも人を渡す。

 そうしないと世界がバランスを崩しちゃうらしい。

 僕がこっちに来るときに、実はもう一人いたレオって子がいなくなっちゃったんだって。僕と入れ替わりに僕の世界に行ったはず、なんだそう。


 僕とレオは、世界が交換しても良いぐらいに魔力が同じ、なんだそうです。

 そういう人がたまたま同時に鳥居の前にいて、しかも月とか大地の時が一定になった場合に召喚の儀をする。

 それが召喚成功の秘訣、なんだそう。

 まさかで成功してレオが消え、僕が現れたんでパニックになったらしいけど。

 本当にできるなんて思ってなかったけど、わらにもすがる気持ちでやってみたらできちゃった、ってことらしいです。


 だから・・・


 次の月と大地の時が良いときに、同じように再召喚の儀をするんだそう。

 それまでにレオと僕の魔力が合わなきゃなんないけど、ってことらしい。

 よくわかんない。


 でも、そうまでして僕を呼び出したのは、彼らも切羽詰まってたからみたいです。

 僕は子供達と長老しか逢ってないけど・・・


 今、この村には老人と子供たちしかいない。

 ちゃんとした大人、正確には子供を作ることのできる世代の人、っていうのが全員いなくなっちゃったんだって。

 数ヶ月前、とある新月の晩のこと。

 夜中に変な音、笛みたいな音が一晩中鳴り響いたんだそう。

 そして翌朝。

 村から若い大人が消えていた。

 連れ去られたんじゃなくて、家から自分たちで出て行ったんだ。

 夜中、出て行く大人の気配を感じた子供達は結構いたみたい。

 夢遊病者みたいに、ぞろぞろ大人達は出て行って、呼びかける子供たちに気づかない感じだったって。

 何人かの子供達は追いかけたものの、夜中に村の外へ行くのは禁じられていたことと、大人の足が速いってこともあり、見失ったって。


 その後明るくなってポンたちも探索したんだけど、森の奥へと行ったことしか分からなかった。

 もうなすすべがないのか、と思っていたとき、伝説のミチビキテを呼ぼう、なんて話になったそう。

 伝承を長老の蔵書からひ孫たちが盗みだし、そして今に至る。


 「なぁオーコー。おまえは強い。この村一番の俺がなすすべもなかった。頼む。力を貸してくれ。頼める義理じゃないけど、最後の希望なんだ。」

 ポンが姿勢を正して深々と頭を下げた。

 つられるように他の子達も頭を下げる。


 「あぁ、もう。分かったって。でも僕も自分がそんな魔法なんて使えるかわかんないんだから。だから助けられるって約束はできないよ?それでいいなら、ね。」

 「ありがとうオーコー!やっぱりおまえは俺の見込んだ良い奴だ!」

 そう言いながらポンは僕にハグして、バンバン肩から背中から叩いてきたよ。

 ていうか、痛い、痛いって!

 まったく調子が良い奴だなぁ。

 僕は苦笑しつつ、ポンの強いハグから逃れようと身をよじったんだ。 

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