第6話
「なんてことを・・・」
茂みから現れたのは、ここにはじめからいた獣たちよりも一回りか二回り大きいやつで、そのしわがれ声からして、老人ぽかった。
僕は、呆然と手を突き出したまま、新参の獣を見る。
それは、僕と、おびえる3匹と、転がった一匹を、順繰りに見ると、持っていた背のたけほどもある杖の頭を僕にむけた。
「まわりまわりていましめん。わがせいがんききませい。」
口の中でもぞもぞとそいつが何か言うと、
!
僕の足下からなんかツタみたいなのが上ってきてグルグル巻きにしていく。
前に突き出している手もツタに強引に引き寄せられて、僕は気をつけの姿勢をとらされるとバランスを崩してそのまま地面に転がったんだ。
「んん~。」
そのとき地面を転がって気を失っていたタヌキが起きたみたい。
目をしぱしぱしたあと、半身を起こし、ぐるっと辺りを見回して、僕と目が合った。
「おまえ!この裸族め!」
目が合うと同時にはじかれたように立ち上がり、拳を振り上げつつ僕に向かってきた。
けど・・・
「かぁつぅ!」
杖を持った奴がでっかい声を上げた。
僕もビクッてなったけど、タヌキも「ひっ。」って声を上げて固まった。
そして、恐る恐るって感じで首を回し、杖を持った奴を見る。
「長老・・・」
「ポンよ。起きたんならその裸族の子を担いでついてきなさい。」
「でも!」
「だまらっしゃい。おまえ達もじゃ。その子と一緒にわしのうちへ来なさい。」
固まっていた子達が渋々とうなずく。
「まったく、あれほどおとなしくしとれというたのに。・・・裸族の子を召喚してもうたとは、ほとほと困ったもんじゃ。」
長老、といわれたその老人は、きびすを返して草の中をズンズンと歩いて行く。
そして、それに慌てて従う、3人。
僕と、残されたタヌキだったけど・・・
そいつは転がっている僕の前に忌々しそうに歩み寄って、すぐ側に立ってしばらく見下ろしながらじっとしていた。
どれだけ、そうして地面を転がる縛られた僕を見下ろしていただろう?
やがて、そいつが、
「さっきのはおまえがやったのか?」
って、言った。
そんなのわかんないよ。
僕は正直にそう言う。
「・・・・そっか。」
そいつはそう言うと、しゃがみ込んで僕を肩に担ぎ上げた。
そのまま、他の奴らが消えた茂みへとゆっくりと歩き出す。
そのあとは、互いに無言で、僕は日本昔話に出てくる村みたいな場所へと運ばれていったんだ。
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