第5話

 「なんだおまえは!?裸族か?レオをどうした?」


 つんつるてんの着物を着た獣が、木の棒を片手で持って僕に突きつけている。

 その獣は・・・熊?いやタヌキか?

 着物を着て、しかも2本足で立って・・・しゃべっていた。


 そんな獣の周りには、同じように丈の短い着物を着て2本足で立っている獣が3頭、こっちをいぶかしげ眺めていて、その3頭?3人?をかばうようにタヌキが木の棒を構えているって感じに見えた。


 「タヌキ?」

 「ああ、おタヌキ様だぜ。裸族のくせにが高いんだよ!」

 「・・・裸族?僕のこと?僕のどこが裸族?」

 しっかり服は着てるよ。着物じゃないけどむしろ彼らよりしっかりした服を着ている。


 「頭と目の上にしか毛がないじゃないか。どう見ても裸族だろ。」


 いや確かに髪の毛と眉しかないけど、それって普通でしょ?まだひげは生えてこないし。ていうか、そりゃ君たちみたいにもふもふじゃないけど、だからって裸族って言われても、ねぇ。


 いやいや、そういう問題でもないか。

 なんで動物が立って服着てしゃべってる?

 僕は林間学校に来て山の中にいるはずなのに、なんでこんな森の中にいる?

 これは夢?


 にしては、リアルっていうか・・・


 木とか土の匂い。それにじっとりとした湿り気、何より自分の、そして彼らの息づかいが聞こえる。

 夢にしてはあまりにリアルな・・・




 「んなことはどうでもいい。おい裸族!レオをどうした?どこにやった?!」


 1歩前へ出たタヌキが、さらに凄んで言った。


 「何レオって?僕、知らないよ。」

 「んなわけあるか。てめえがなんかやったんだろう!白状しないなら力尽くでも吐かせてやる!」


  言うや否やタヌキが棒を振り上げて襲いかかってきた。


 その勢いやすさまじく、

 思わず目をつむって、


 「来るな!!」


 叫びつつ、僕は両手を前に突き出した。




 ドン!!!



 ウワァーーー



 え?



 まさに殴られた、って思った瞬間、タヌキが大声を上げながら、後方に吹き飛んだ。

 地面に何度かバウンドし、1本の木にぶつかってかろうじて止まる。



 ヒィッ。


 おびえる見学組の3頭の声。


 何が起こったの?


 僕は彼らと、そしてタヌキとを交互に見る。


 3頭はプルプルと首を振り、タヌキは・・・伸びていた。


 「ツワモノだ。」

 「ツワモノを呼び出してしまった。」

 「まさか裸族が現れるなんて。」

 「でも裸族がツワモノだとミチビキテかもしれないって。」

 「裸族はヨコシマかミチビキテの極端だってばあちゃんが言ってた。」


 3頭が口々にそんなことを言ってる。

 しゃべる獣はタヌキだけじゃなかったんだ・・・


 だけど、どうするんだ?この状況?


 僕が戸惑っていると、カサカサと森の奥が揺れた。


 「なんてことを・・・」


 そのときあらたな獣が現れて、言った。

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