第3話
バスを降りる。
駐車場からは徒歩だ。
動きやすい服で、という指示だったから、僕はTシャツにコットンのくるぶし丈パンツ。中には体操服を着てる強者もいるけどね。
あとはリュックサックにスニーカー。そして紅白帽。
紅白帽は全員必須ってことになってて、でもやっぱり忘れました、なんて言ってた人もいる。
有料の場所に入場するから、紅白帽がない子は先生の近くにいなさい、って言われてかなりへこんでた。
駐車場からは上り坂だ。
両脇にはお店がいっぱい並んでいて、その間の舗装された、でも凸凹がひどい道を上っていく。
その道を過ぎると、そびえ立つ階段だ。
階段の先にはいくつかのお寺とかがあるんだそう。
みんな、ゴールが全く見えない階段にぶうぶう言ってるけど、文句言いながらも、競争を始めるあたり元気だな、って思う。
「誰が早いか競争だぜ!」
顔を見合わせつつ言うクラスメートだけど、僕と目が合う人はいないのは今更だ。
彼ら曰く、僕はスペックが高いから勝負にならない、そう。
こういう勝負は遠慮すべき、なんだそうだ。
これは、転校してきた小2の頃、男子たちに呼び出されて、泣きながら頼まれてからの習慣っていうか・・・
決してはみぃな訳じゃない・・・はず。
転校してきて、女子の興味を一身に受けてしまって、それにむかついた男子達からいろんな勝負を挑まれ・・・全勝してしまったんだ。
もっとも小2ぐらいの子供だと、成長の差っていうのが強く影響するんだってのがじいちゃんの意見。僕は桜の季節に生まれたから、他の子より成長してて勝って当たり前、そう言われた。
もっとも元気に駆け出す子ばかりじゃない。
運動の苦手な子は、ひぃひぃ言いながらゆっくり階段を上っている。
僕は、そんなクラスメートの最後尾に並び、遅れちゃう子のフォローをすることにした。別に何かするってわけじゃなくて、自分より後ろに人がいれば焦らなくなるかな、って思って。
じいちゃんは経営しているオーベルジュのお客さん相手にネイチャーガイドなんてこともやってるんだけど、僕もたまにお手伝いをする。主に外国からのお客さんの通訳。
僕がこっちに来たのは両親が離婚したから。それまでは東京にあるインターナショナルスクールに通っていたんだ。てことで英語は普通にしゃべれる。
そんなんでじいちゃんの仕事のお手伝いしてるから、山中で一番後ろにいて、みんなの様子を見るのは得意なんだ。
たまに振り返る僕の前の子に「ゆっくり行こう」って声をかけつつ、階段を上っていく。
階段の途中途中には、小さな社へ行く道が出てたり。
ゆっくり上ると周りをしっかり見れるから、僕にとってはこれもまた楽しい。
ん?
僕は、そんな道中、とある社が妙に気になったんだ。
階段から、数歩横にずれると、小さな鳥居。その向こうに小さな社。
?
何か、聞こえる?
歌?
よあけのばんにぃ
つぅるとかぁめがすぅべった~
引き込まれるようにフラフラと、僕は歌が聞こえる方へと・・・
うしろのしょうめん
だ
あ
れ
僕が鳥居の下に足を入れた途端、エレベーターが急に動いたときみたいにフワッて感じ、なんだかグルグルぐるぐる・・・
周りは暗く、上とか下とか分からなくなるようななシェイクされる感じがして・・・
うっ
気持ち悪いっ・・・
ヒュ~~
風?
どこからか吹く風に
あっ
帽子が飛ばされた?
ワン!
え?犬?
真っ暗な中に突然現れた子犬が、僕の紅白帽をくわえ・・・
子犬と目が合った
と思ったら
あっという間にすれ違い・・・
うわぁぁぁぁ
僕は延々と
落ちた
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます