第2話

 僕の名前は大竹桜康おうこう

 小学5年生の男子だ。

 僕は今、ちょっとだけワクワクしつつ、ちょっとだけ不安を感じている。

 なんたって、生まれて初めてのなんだ。


 夏休み。

 8月に入ってすぐの5年生のイベント、林間学校。

 山の中にあるお寺の宿坊で一泊するイベントだ。


 僕は、残念ながら、友達の家に泊まりに行ったり、逆に泊まりに来てもらったり、なんてことの経験がない。

 ボッチかって?

 うーん、ある意味そうかもしれないけど、けどそれなりに人気者でもあるんだよ?

 少なくとも嫌われたりいじめられたりはしていない。

 ただ、他の子達は生まれたときからの知り合いだけど、僕は途中から来たから、完全には仲間になれないって言うか・・・

 それに、僕の見た目が・・・ちょっとね・・・



 ま、それはいいとして、とにかく初のお泊まりイベントです。

 校庭に集合して、校門からバスで出発。

 いつも以上にみんなは賑やか。

 でも、15分交替で僕の隣が替わるってのは、落ち着かないな。

 女子の取り決めでそうなったらしいけど、替わるたびにお菓子を渡されても、そんなに食べられないんだけど・・・


 「恨むなら無駄にイケメンに生まれたのを恨むんだな。」

 そんな風に男子には慰め・・・られたのか?

 イヒヒって笑うその顔は、面白がってるだけじゃないか!

 はぁ。

 僕に渡されたチョコを持っていった男子に制裁を加える女子軍団を見ながら、みんな仲いいよな、なんて思う。

 完全にはその中には入れず、3年経ってもお客様な僕。

 この林間学校で、できればこの輪に加わりたいなぁ、と思って、でもやっぱり外から眺めている自分がいた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る