第020話 涙
あの後、あたしや騎士の先輩達は駆けつけてくださった近衛騎士第二部隊隊長のメリッサ様達によって助けられ、事態も速やかに収束していった。
その際、メリッサ様に
「君が騎士学生にも関わらず、勇敢にも襲撃者に立ち向かったミリーナ・インスパイア君か。本当に良くやってくれた。騎士学校卒業後は是非とも我が部隊に来てくれ」
と言われたことがとても嬉しく、忘れられない。
口約束ではある。あたしが卒業する三年後には覚えてもいらっしゃらないだろう。
でも、あたしが今日立ち向かったことは無駄では無かった。
そのことを確信できる最高の言葉だった。
満身創痍だったあたしは病院に搬送中に衛生員の方にあたしを助けてくれた男の人のことを尋ねると、
「我々と山の中腹で合流した際に後のことを託し、そのまま立ち去られた」
と教えてくれた。
あたしはまた会えると思っていたので酷くがっかりしたのを覚えている。名前すら聞けなかったし。
「ミリーナちゃん、無事で良かったよぉぉぉ」
今は病室で、あの時応援を呼びに行ってくれたアリスに抱きつかれていた。
重症を理由に面会謝絶になっていたので、あの件から3日経っていた。
「いたたた、ちょっとアリス、痛いって。まだ全然傷が塞がってないんだから」
あたしは痛みのあまり涙が止まらない。
「ご、ごめん。ミリーナちゃん」
アリスが申し訳なさそうに謝る。
あの後の話をアリスに聞いたところ、応援を呼びに行ったときにたまたま遠征に出ていたメリッサ様たちに出会い、ダメ元でご助力を要請したら2つ返事で引き受けてくれてすぐに駆けつけてくれたらしい。
「メリッサ様、とてもステキだったわ・・・」
それからのアリスはよくその時のことを思い出してはそんなことを言っていた。
ちなみに、マークとトーマは自主退学したらしい。
「なんか、あの時のことがあって騎士学生でいるってことにも怖くなっちゃったみたい」
アリスが淡々と説明する。
「あいつらのことはコメントする気にもなれないわね」
あたしは溜め息混じりにそういうほか無かった。
ふと窓から外を見ると見覚えのある人が病院に向かって歩いてきているのが見えた。
あれは・・・お母様だ!!
「アリス!お見舞いありがとね!悪いけど、お母様が来たから今日のところは帰ってくれる?!もしかしたらあなたまでとばっちりが来るかもしれないから」
「う、うん。分かった。じゃ、じゃあまたねミリーナちゃん!が、頑張って!!」
アリスもあたしのお母様に会ったことが何回かあったので普段超絶優しいお母様が豹変するところを目撃したことがある。
そのため、すぐに事情を理解してくれ速やかに病室を出ていってくれた。
「ふぅー」
あたしは覚悟を決めた。
・・・寝たふりしちゃ駄目かな?
「ミリーナ!!」
「お母様!来てくださったのですね。ありがとうございます!」
その後、病室を訪れたのはやはりお母様だった。
「ああ、無事で良かった!」
お母様が涙を流してあたしの無事を喜んでくれる。
「・・・ありがとうございます」
あれ、何でだろう。お母様を見ていたらあたしも涙が止まらなくなっちゃった。
あの村に加勢に行くと決めてからずっと張っていた緊張がお母様の姿を見て漸く緩んだ瞬間だった。
お母様とあたしの二人はしばらくの間無言のまま静かに再会を喜んだのだった。
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