第019話 事後処理②
「後は任せて大丈夫か?」
ルークはこれだけの大人数がいれば後は自分にできることはないので帰っていいかメリッサに尋ねる。
(とはいえ、帰る場所などないんだが、、、いつ気が変わって拘束されるかわからんからな)
「はい。問題ありません。お帰りになって結構です」
意外にも簡単にOKが出た。
「・・・そうか。では失礼する」
ルークは短くそう言うと、山を降り始めたのだった。
「隊長、よろしかったのですか?」
ルークが下山するところをずっと見ていたメリッサに向かって部下の一人が問いかける。
「ん?何がだ??」
「助力は大変ありがたかったです。あの男の話をすべて信じるなら本当にぎりぎりであったでしょうし、死者ゼロなら奇跡でしょう。ただ、得体の知れない男の身元も確認せずに帰してしまってよろしかったのでしょうか?」
その言葉にメリッサは笑みを深める。
「そうだな。お前の言葉は正しい」
「では、今から追いかけて拘束して参りますか?」
二人の会話を聞いていた他の部下もメリッサの号令があればすぐさま拘束に行けるように準備をする。
「いや。それには及ばん。そうだな、いくつかお前に確認してみようか」
メリッサは本当に楽しそうな顔をしている。
(こんな隊長の姿を見るのは初めてだ)
部下は困惑しながらも頷く。
「では、まず一つ目。お前たちはあの男を拘束できると本当に思っているのか?」
「もちろんです!」
その言葉にメリッサは溜め息をつく。
「お前達、帰ったら特訓だな」
自信を持って答えた部下に対してメリッサは呆れながらそういうと続けて、
「最初にあの男に遭遇したときに何故私が問答無用で拘束しなかったのだと思う?出来ないと判断したからだ」
「「「な!?」」」
メリッサの言葉に部下たちは驚愕する。
(今なんておっしゃったんだ?近衛騎士でもトップクラスの実力をもつメリッサ隊長をしてしかもあの大人数でもあの男を拘束することが出来ないだと?)
部下達には悪い冗談にしか思えなかった。
「実際のところは拘束しようとすればあの男は甘んじて受け入れていただろうがな」
メリッサはさもおかしそうにいう。
「そして、二つ目。お前達本当に『ルーク』という名を知らないのか?」
「「「???」」」
メリッサの言葉に部下たちは更に困惑する。
(ルーク?聞いたことはない・・・はずだ)
「ふぅ。知らんのか。ならば『剣鬼』という名ならどうだ?」
「『剣鬼』の名を知らぬものは騎士にいるはずがございません。・・・まさか!?」
「漸く気がついたか。あの男こそ北の世界最大強国と呼ばれるジークムント王国をして『絶対に手を出してはならぬ敵』と言わしめ、10年の不可侵条約を結ぶに至った英雄『剣鬼』ルークだ」
「「「!?」」」
「そうでしたか。・・・隊長。思慮の浅い我々をお許しください」
漸く納得した部下達がメリッサに向かって深々と頭を下げた。
「分かればよろしい。他の同僚達にも話しておけよ。間違っても手を出したりするな」
「「「畏まりました!」」」
「先に行って徹底して参ります!」
部下の一人が慌てて主戦場に向かって走っていった。
(やれやれ。私の部下もまだまだ鍛え方が足りんな)
メリッサはもう少し訓練を厳しくしようと決心した。
(それにしても姉上から連絡を貰ったときは私が会うことはないと思っていたが、まさかこのような『縁』ができるとはな。しかも所属無しときた。あの男は是非我が近衛騎士に引き込まねば)
実は、メリッサは姉のエルザードからルークが兵士で無くなったことを聞いていた。
もしそうでなければルークを拘束しようとしていただろう。
危ないところだった。
メリッサは幸運に感謝し、自らも主戦場だった場所に向かうのであった。
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