第017話 掃討
裏門側の敵を一掃したルークは正門側に回っていた。
(・・・さっきの少女。中々肝が据わっていたな)
満身創痍の中、相討ち覚悟で敵に向かって行ったことや自分の怪我の治療よりも他の戦況を優先する発言。
ルークが今も兵士であったら軍に勧誘していたかもしれない。
まぁ、副隊長だったとは言え、そういった人事には疎く、大体がアジスがやっていたが。
(それにしても、誰かに似ていたな)
ルークが少女の顔を見たのはほんの数秒だったので、誰かに似ていたくらいの印象しか持たなかった。
正直、行動の方がインパクトが強かった。
そんなことを考えていたらルークの目に正門側の戦いの状況が見えてきた。
村人側が何とか耐えているという感じである。
(まぁいい・・・今は、次の敵に集中する)
それから数分後、全ての襲撃者が戦闘不能になり、この辺りは漸く落ち着きを取り戻したのだった。
「「「ありがとうございました!」」」
村人達からお礼を言われるルーク。
重傷者は数えきれないほどいたが奇跡的に村人に死人はいなかった。
「礼には及ばない。それよりも、劣勢状況の中で良く戦ってくれていた騎士たちにこそ礼を言ってやってくれ」
ルークはやれるときにやれることをやっただけなのだ。
正直、自分がそうしたくてしただけなので、礼を言われるのはどうにも落ち着かない。
村人達はルークの言葉を聞いた後、一度頭を下げ、騎士たちの方にお礼を言いに行った。
「さて、襲撃者たちの身柄を確保しておくか」
運悪く死に至ったものもいるかもしれないが、なるべくそうならないように手加減をしていたので気が付いて逃げ出す前に確保する必要がある。
ルークはそう考え、まずは早い段階で気絶させた連中の身柄を確保するため、村へ来る途中の道を引き返した。
「お嬢ちゃん、ありがとう」
「あんたは命の恩人だ」
「助かったよ」
あたしは、村人さんたちからお礼を言われ、みんなが無事で本当に良かったと心の底から安心した。
痛む体を引きずって正門に向かおうとすると、村の女性が肩を貸してくれた。
「よかった。先輩方も無事だったんですね」
正門にたどり着くと騎士の先輩方が村人によって治療を受けているところだった。
「おう!お前さんも無事だったか!って状況じゃないみたいだが、生き残ってくれて本当に良かったよ」
「よかった。安心したぞ」
意外としっかりとした応答をしてくれていたが、二人とも満身創痍であった。
「ありがとうございます。あの後どうなったんですか?」
あの後とはもちろん、二手に分かれてからのことだ。
「ああ。何とかぎりぎり襲撃者から集会所を死守していた村人達に加勢したまでは良かったが、その中に何人か手練れがいてな。かなりやばかった」
「あの人が来てくれなかったら、俺たちも村人も全滅だったろうな」
先輩方が事情を話してくれる。そうだ、あの人はどこへ行ったんだろう。
「私も死ぬ寸前でしたが、あの人が助けてくれたんです。いまはどこにいらっしゃるんですか?」
もう一度しっかりお礼を言いたかったので場所を尋ねてみる。
「そっちも激戦だったようだな。あの人は、多分村に来る途中で倒した襲撃者の身柄を確保しに行ったんだと思う」
「俺もそう思う。気づいているか?襲撃者のほとんどが死なないように手加減されているのを?」
「え?」
あたしは先輩の言葉にはっとし、無事な村人に捕縛されている襲撃者を確認する。
・・・確かに、大体の襲撃者が捕縛されていっている。ほとんどの襲撃者が死んでいないようだ。
なんという人だろう。あの状況で手加減までしていたなんて。
世の中にはとんでもない人がいるんだとあたしはそのとき初めて知ったのだった。
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