第002話 絶望②

ルークが呆然としていると、視界に中年の女性が歩いているのが見えた。


このまま何もしないでいるわけにはいかない。情報を集めなければ。


ルークはその女性に声をかける。


「すみません。お伺いしたいことがあるのですが・・・」


「はい。・・・どうされましたか?」


中年の女性がルークを見るや、態度が変わっていく。


無理もない。ルークは歴戦の猛者だ。


なんの心得の無いものが見てもひと目で常人とは違う存在であることが分かる。


さらに、ルークは長年の戦いの影響で顔を含め大小様々な傷が体中にあり、極めつけはその真っ白な髪だ。


異様な雰囲気を醸し出している。


話しかけられた方も警戒して当然である。


「ご存知でしたら、この家と隣の家に住んでいた人たちがどうなったか教えていただけないでしょうか?」


ルークは自分を見た相手がそういう態度をすることには慣れたものなので、終始一貫して低姿勢で話を続ける。


「あそこの家・・・ですか?」


(見知らぬ人に最初にする質問としては最悪だよな。通報されたら速攻で逃げよう)


自分でも不審極まりない質問をしていることに気づいてはいたが情報を得る方法が他に思いつかない。


「あんた・・・」


さらに警戒していた中年女性が何かに気づいたのか口調が変わっていく。


ゴク


ルークは自然と唾を飲み込んだ。


(逃げるか)


「もしかして・・・ルーちゃんかい?」


「え?」


ルークは中年女性の言葉に完全に毒気を抜かれた。


「それは私が子供のときのあだ名ですが、、、」


動揺しながら答えると、


「なんだい、ルーちゃん。やっぱり生きていたんだね!」


バシバシ


中年女性が喜びをあらわにしながら、ルークに遠慮なく叩いてきた。


「えっと、失礼ですがあなたは?」


ルークは戸惑いながら訪ねる。


「そっか、なんせ20年ぶりだもんね。覚えている方が無理があるね。ほら、近所に住んでいたタバサ姉さんだよ」


中年女性が胸をはりながら答える。


「タバサ・・・ああ!タバサおばちゃんか!?」


ルークは漸く目の前にいる人物が誰だったかに気づき、思わず声を上げる。


「だぁれが、おばちゃんだい!姉さんとお呼びよ!!」


バシィィィン


口は災いのもと、タバサの素晴らしいチョップがルークの頭に見事に命中した。








「それで、何が聞きたいんだい」


ところ変わってタバサの家。


あのあと積もる話もあるからと半ば無理やりタバサの家に連れてこられ、リビングでお茶をご馳走になっていた。


ちなみにタバサチョップはあまり痛くなく、タバサの方が痛がっていた。


「はい。私の両親とアメリアの家のことです」


タバサは1度お茶を啜ったあと、真剣な表情で答える。


「それもそうか・・・結論を先のばしにしてもあんたに酷なだけだ。気をしっかりもって覚悟して聞くんだよ」


「・・・はい。教えてください」


ルークは嫌な予感がしながらも知らないままではいられない。覚悟を決める。


「あんたの両親は・・・5年前に亡くなった」


「!?そ・・・んな、、、」


驚きの言葉によりルークの身に衝撃が走る。


「事故だったんだ。近所で火事が起きてね。取り残された家の子どもを助けようとして2人とも」


「そう・・・でしたか。・・・その子どもは?」


「幸いにも無事だったよ」


「それならまだ良かった。両親は正義感が強かったですから助けようとした命を救えたなら本望でしょう。・・・それにしても5年前ですか、、、」


(もう少し早く帰れていれば・・・)


ルークは後悔せずにはいられない。


きっと自分だったら火事現場から子どもを救うくらいわけなかっただろう。それくらいの修羅場は何度もくぐってきた。


落ち込むルークをタバサが気の毒そうに見つめる。


「両親は何か私に残していたりしませんでしたか?」


ルークにはもはや両親との思い出しかなかった。それももう20年も前。絆を確かめるための物や言葉を求めるのも無理はない。


すがりつくようなルークの言葉に、タバサは痛々しそうに首をふる。


「いいかい。心して聞きなよ。あんたは17年前に死んだことになっているんだ」


「は?」


更に予想の斜め上を行く言葉にルークの頭が真っ白になる。


「あんたの両親ともに『そんなことは信じられない。息子の遺体を見るまでは信じないぞ!』といって何度も何度も軍に向かって詳細説明を求めていたんだよ」


タバサが当時のことを思い出しながら涙を流す。


「そんなバカな!?私は毎月欠かさず両親にもアメリアにも手紙を出していたんですから!!」


とんでもない事実に我を忘れて思わず声を荒げるルーク。


「なんだって!?」


タバサも大きな声を出す。


「死亡報告があってからパッタリと手紙も来なくなったって言ってたわよ」


(一体誰がそんなことを。。。ルークの心の中で怒りの炎が燃え上がる・・・まてよ、俺が死んだことになっていたってことは)


ルークはとんでもないことに気づく。


「・・・アメリアは、アメリアはどうなったんですか?」


ルークがタバサに向けて詰め寄る。


「・・・アメリアちゃんは、16年前に嫁いで家族一緒に王都にいっちまったよ」


「結・・・婚、、、そんな」


ルークは目の前が真っ白になり、力なく座りこんでしまった。


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