戦場の英雄、上官の陰謀により死亡扱いにされ、故郷に帰ると許嫁は結婚していた。絶望の中、偶然助けた許嫁の娘に何故か求婚されることに

千石

第001話 絶望①

「やっと故郷に帰って来れた。・・・約20年か。長かったな・・・」


ルークは自分が生まれ育った故郷・・・カランの町に帰ってきていた。


実に20年ぶりの帰郷である。


というのも、ルークは11歳の時に戦争に行かなくてはならなくなり、それからずっと必死で戦ってきた。


激戦をくぐり抜けることでとうとう勝利を納めることに成功したが無情にも20年の時が流れていた。


「やっと、アメリアに会える」


ルークは、許嫁の名前を呟く。


ルークとアメリアの両親の仲が良く、二人の子どもであるルークとアメリアを結婚させようと許嫁としていた。


当事者の二人も幼いころから一緒でお互いに想い合っていたので満更でもなく、成人である15歳になったら結婚しようと約束していた。


しかし、不幸にも戦争が激化し、11歳だったルークも徴兵されることになってしまったのだ。


別れがやってきたその日、二人は泣きながらある約束を交わす。


「絶対生きて帰ってくる。その時は結婚しよう」


「はい。あなたの帰りをいつまでも待っています」




ルークはその時の約束だけを拠り所に戦場で必死に生きてきた。


その結果、敵国からは『剣鬼』と恐れられ、味方からは英雄と呼ばれるまでにいたった。


ルークは昔のことを思い出しながら歩いているといつの間にか自分の家があった場所の近くまでやってきていた。


「たしか、この道を曲がると我が家があるんだったな」


そう言いながら道を曲がると、


「あれ、何もない・・・な」


自分の家が無くなっていた。


そればかりか、


「アメリアの家もないぞ・・・」


ルークは呆然と呟くのだった。




「いやいや、なんせ20年ぶりだからな、きっと道を間違えたに違いない」


ルークはそう思い直し、周りを確認するために歩き出す。


時間にして30分くらいだろうか、ルークは一つの結論に至る。


「・・・やっぱり、ここが俺の家だった場所に間違いない」


ルークに一つ目の絶望が降りかかった。


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