第47話
こうして女の子達と一緒に化粧品について話したり、恋について話したりするのは長年の夢だった。
(セレニティになってからどんどんと夢が叶っていくわ…!)
無意識にハラリハラリとセレニティの頬に涙が伝う。
「セレニティ、大丈夫!?」
「あっ、申し訳ございません……!」
「無理しないでいいのよ?」
「本当に、本当にありがとうございます!わたくし、とっても嬉しいんです」
「セレニティ……」
「お姉様方のおかげで、わたくしの心が救われましたわ」
セレニティの様子を見ていた三人は、傷のことを気にせずに受け入れてくれたことを喜んでいると思ったことも知らずに、ハンカチですぐに涙を拭う。
ブレンダとトリシャは優しくセレニティの体を抱きしめてくれた。
それから「何か言う奴がいたらわたくしに言いなさいね」「パーティーでも暫くはわたくしと一緒にいなさい」と、心強い言葉をもらった。
「わたくし妹がいなかったから欲しかったのよ。トリシャお姉様って呼んでちょうだい!」
「ずるいわ。わたくしもブレンダお姉様って呼んでいいわよ」
「うむ、わたしはハーモニー隊長と呼んでくれ!」
「そこはハーモニーお姉様でしょう?」
「ハーモニー、空気読みなさいよ」
「ハハッ!セレニティはわたしが今から鍛えるからな」
「まぁ……!ゆくゆくはわたくしの護衛に?嬉しいわ」
「気が早いぞ、トリシャ」
「ハーモニー隊長に色々と教わりながら頑張りますわ!」
そんなセレニティを優しい瞳で見つめているスティーブンが嬉しそうにしていることにも気づかずにセレニティはまた一つ願いを叶えて天にも昇る心地だった。
楽しい時間はあっという間に過ぎ去って、帰りの馬車ではスティーブンとハーモニーが送ってくれた。
「もしシャリナ子爵邸に行ってジェシー嬢に何か言われたら俺に言ってくれ」
「わたしが一応、牽制するが女の嫉妬は怖いからな!それはトリシャやスティーブンの近くにいてそれはよくわかっている」
「……姉上」
「お二人とも、ありがとうございます」
最後まで手厚い対応してくれたスティーブン達には感謝してもしきれない。
二人に御礼を言っているとシャリナ子爵邸に到着する。
心配そうにしているシャリナ子爵達とすぐにでもスティーブンの前に駆け寄ろうとするジェシーの前にハーモニーが立ち塞がった。
ハーモニーはジェシーに圧をかけているようだ。
その迫力にシャリナ子爵達も圧倒されている。
どうやらハーモニーのような真正面から向かってくるタイプが苦手なのかジェシーは珍しくたじろいでいるようだ。
その間、セレニティはスティーブンに改めてお礼を告げていた。
「スティーブン様、今日は素敵なお茶会に誘ってくださり感謝しております。ありがとうございました」
「いや、無理矢理はよくないかと思ったが今日誘ってよかった」
「はい!スティーブン様のお陰で夢が叶ったんですもの!わたくし、とても幸せですわ」
「トリシャ王女殿下のために度々開催しているんだ。よかったらまたおいで。皆も喜ぶよ」
「お誘いありがとうございます。わたくしも嬉しいですわ」
セレニティの言葉にスティーブンは優しい笑顔を浮かべた。
そっとこちらに手を伸ばしたスティーブンはセレニティの右頬を優しく撫でた。
「セレニティ嬢の楽しそうな笑顔をまた見ることができて、本当によかった」
「……!」
風が吹いてカシスレッドの髪が靡いている。
バイオレットの瞳が細まるのを見て、セレニティは今まで感じたことのない気持ちになっていた。
ギュッと胸が締め付けられるような感覚にセレニティは息を止めて考えていた。
(もしかして……これは発作の前兆!?)
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