第45話



それからスティーブンの幼馴染である公爵令嬢ブレンダ。

ラベンダーブルーの髪は腰まであり、ドレスもセレニティとは比べ物にならないくらい高級そうだ。

グレーの瞳がスッと細まると冷たくて近寄りがたい印象を受ける。

そんなブレンダはセレニティを興味深そうに見ている。



「皆、セレニティの事情を理解してくれている。君のことを傷つけたりしない。年上ばかりで緊張するかもしれないが楽しんでくれ」


「スティーブン様、ありがとうございます」



セレニティは子爵令嬢である。

普通に生活していたら王族と公爵家に関われることはほとんどないだろう。


それかジェシーのようにブレンダの機嫌をとりながら少しずつ距離を縮める方法もあるが、こんな風になんの苦労もなくこのメンバーに囲まれることはないはずだ。


(……豪華すぎるわね。スティーブン様が相当、わたくしに気遣ってくれてのことでしょうけど)


ハーモニーとのこともそうだが、恐らく高位貴族達との仲を深めておくことで、他の令嬢や令息達がセレニティに傷のことで何も言えないように手を回してくれたのではないかと思った。

 

これから大きなパーティーに出て行く際に、皆がセレニティの盾となり剣となる。

忙しいハーモニーや王女のトリシャ、令嬢達が多いのはそういうことになるのではないだろうか。


スティーブンはセレニティを連れて一人ずつ、紹介していく。

口々に「辛かったわね」「大丈夫?」と声を掛けてくれている。


そして次はハーモニーに隙間なく張り付いているトリシャの番だ。

彼女はスティーブンに声を掛けられると「ヒッ!」という声と共に肩を揺らした。

しかし顔を見たら安心したようで「スティーブンね」とホッとしている。

その隣にいるセレニティを見てトリシャは視線を合わせるように屈んでからセレニティの右頬を撫でた。



「まぁ、可愛らしい。あなたがセレニティね。いつもスティーブンから話は聞いているわ」


「トリシャ王女殿下、ごきげんよう」


「挨拶も上手。すごいわね」



そう言ってセレニティの頭を撫でるトリシャは先程、スティーブンにビビっていた時とは別人のように見える。

今は金色の髪は美しく女神のようだ。

先程、スティーブンを見て怯えていたトリシャの表情は柔らかい。

ハーモニーは横から「男性と女性の前では色々と違うんだ」と言って小声で補足してくれた。


スティーブンや血の繋がっている兄弟、兄であるベレットや弟のナイジェル、父親の国王は平気らしいのだが、その他になると蕁麻疹が出るほどに苦手意識を持っているというのだから驚きである。

セレニティは内密に、とハーモニーに言われてセレニティは頷いた。

スティーブンもトリシャを気遣ってか、後ろで待機している。


本編でレオンが出てくる時には、この人達の子供達が活躍するとなると感慨深いものがある。

それから姉のジェシーと関わりがある公爵令嬢でスティーブンの幼馴染ブレンダを紹介された。



「幼馴染のブレンダだ」


「セレニティ・シャリナです。よろしくお願いします。ブレンダ様」


「まぁ……」


「どうかしたか?ブレンダ」


「いいえ、少しセレニティと話をしてもいいかしら?」



ブレンダがそう言うとスティーブンが心配そうにこちらを見ている。

セレニティが「わたくしも是非、ブレンダ様とお話したいですわ」と言うと、スティーブンは頷いた。



「挨拶ばかりで喉が渇いたでしょう?」



そう言ったブレンダから手渡されたグラスを受け取って飲み込んだ。

甘酸っぱいフルーツのジュースは緊張で乾いていた喉を潤してくれた。



「気が利かないんだから。スティーブンは、あと一歩が足りないのよね」


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