27.開戦-拳と鋼鉄と真実②
零「……参ります!」
そう言うと、零はこちらにその巨体を進めて、大きく振りかぶった。
それは空を裂いて、こちらに勢いよく迫ってくるが……
遥「遅いね」
私は自慢の身体能力を活かして、その場で高く跳躍する。
そしてそのまま、零の顔面に蹴りを入れる。
……が。
零「……先程実感したばかりでは?私の硬さは。」
遥「……全く、その通りだ。全然ダメージが入らないなんてね……」
零「……しかし、お互いにこのままでは埒が開きませんね」
遥「……ま、別にミコトが話終わるまでの余興だからな。お互いダメージが入らない程度がいいんだよ」
零「……おや、そのような理性がある方とは思っていませんでした」
遥「……心外だなぁ、それ!私一応精神科医なんですけど!」
零「……おや、これは失礼。そんな方には見えませんでした。」
遥「……全く。というかさ、この肩のってなによ」
私は零の肩に乗って質問する。
零「……さも当然かのように乗りますね。まぁいいです……これはミサイルポッドですよ」
遥「ほー……結構色んな武装があんのね」
零「はい。実弾兵器以外に、生命エネルギーを素に放つ武装なんてものもありますよ。」
遥「……え、なにそれ。こわ」
零「この実弾兵器達で攻撃した相手から生命エネルギーを奪い取って、それで特殊な武装を動かすことができるんです。」
遥「はー……そりゃ強いな……あ、そうだ」
─
……扉の向こうから、音がしなくなった。
ミコト「……嘘?もう終わった?早くない?」
沙織「……いや、流石に……そんな事ありますかね……?」
ミコト「……まぁ、死んだなんてことにはなってないだろうし、話を続けようか?」
沙織「……え、それでいいんですか?」
ミコト「いいよ、遥さんは丈夫だから」
沙織「……はぁ……なるほど?分かりました……」
沙織「……では、あの、先程も言いましたけど……」
ミコト「……今のこの異能力研究所は、本来のものからかけ離れている、だっけ?」
沙織「……はい。どういうことか説明しますと……」
沙織「……この研究所は元々、平和のために作られたんです。」
ミコト「……それは、どういうこと?」
沙織「……私がペンタゴンとして、ここに呼ばれたときです。所長が言っていました。」
沙織「『いずれ異能力者が世間に知れ渡る日が来る。その時、異能力者がその特性から迫害なんかをされないよう、異能力者を研究しているんだ』、と。」
ミコト「……なるほど」
沙織「……その為には研究対象が必要でした。ペンタゴン以外にも、様々な異能力者が。所長はたしかに、異能力者を連れてくるように言いました。」
沙織「……でも、それがどこかで上手く伝わらなかったのでしょう。所長はそんなこと望んでいないのに、職員達は手荒な方法で異能力者を連れてくるようになりました。」
ミコト「なるほど……でもそれなら、所長に伝えればいいんじゃ?」
沙織「……いえ、所長は研究熱心な方でして……四六時中研究に没頭していて、話す機会がなく……それで、今まで止められなかったんです。それに私が職員達に交渉しに行こうとしても、皆逃げてしまいますし……」
ミコト「……なるほどね。分かった……それなら、私達の目的も変わってくるよ。」
沙織「……え?」
ミコト「……私達の目的は今から研究所との和解だよ。争わずに終わらせるんだ、って言っても……今頃私の仲間達は他のペンタゴン達と戦闘をしているだろうけどね」
沙織「……本当、ですか?」
ミコト「……うん、一緒に研究所を元の姿に戻そう、沙織ちゃん」
沙織「……!ありがとう、ございます……!よろしくお願いします!」
ミコト「うん、よろしくね。じゃあ戻ろうか。」
そう言って私が扉を開けると……
遥「……んじゃ、ここはこうじゃない?」
零「……なるほど、学びになりますね……」
……普通に、打ち解けていた。
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