25.開戦-爆弾と地獄、そして匣③
……あれは数日前の記憶。
─
蓮夏「……そういえば、紅音さんの異能って具体的にはどんな異能なんですか?」
紅音「……あ?」
蓮夏「……いや、爆発物が作れるのは分かるんですけど……もう少し、何か応用が利いたりは?」
紅音「……いや、知らねェ」
蓮夏「……じゃあ、ここで試してみませんか?手榴弾って作れます?」
紅音「……おう、それくらいなら作れるぜ」
そう言って紅音さんは手榴弾を無からぽん、と生成してみせた。
蓮夏「……なるほど。では今度は閃光手榴弾をよろしくお願いします。」
紅音「……なんだ、ソレ」
蓮夏「……え、知らないんです……!?」
紅音「知らねェ……どんなヤツなんだ?」
蓮夏「……分かりました、今から一緒に勉強しましょう!」
紅音「はァ!?めんどくせェよ!」
蓮夏「ダメです!これで紅音さんはもっと強くなれるんですよ!」
─
この後、私と紅音さんは一緒に様々な爆発物の資料などを読み漁った。
……この時の経験が活きる、はず……!
蓮夏「……紅音さん。」
紅音「あァ!?なんだよ!こんな時に……!こっちはこっちでやべェ……あ?」
……なんだ?……やけに落ち着いてやがる……
それどころか、顔が”笑ってる”?
……もしかして……この状況に狂っちまったか?
紅音「……お、おい蓮夏?どうしたんだよ!?」
いや……狂ってねぇ、コイツ正気だ……笑いながら、しっかり攻撃を避けてやがる……!
じゃあ、一体何が……
蓮夏「……私達、勝ちますよ」
紅音「……は?何言ってんだよ、どう考えてもジリ貧だろうが……!オレでもわかんぞ!?」
蓮夏「……今は黙って私の指示に従ってください。紅音さん、覚えていますか?あの時に見た発煙弾。」
……発煙弾……アレか、この前に無理矢理蓮夏に見せられたヤツ。何だかんだで途中からは楽しかったけどよ……
それがどうしたってんだ?
蓮夏「……それを、兎に角投げまくってください。」
紅音「……はァ?それじゃ勝てねェだろ……!」
蓮夏「大丈夫です。信じてください、私を。」
……蓮夏、お前がそこまで言うなら、仕方ねェ。
紅音「……分かった。これで勝てなかったら承知しねェぞ?」
蓮夏「良いですよ、勝ちますから。」
紅音「……言いやがる。」
天音「……さっきから、何を話しているのですか?いい加減倒れてくれませんかね……」
紅音「……うるせェな、今からお前は負けんだよ。」
そう言ってオレは蓮夏の指示通りに発煙弾を兎に角投げまくった。
そしたらたちまち部屋ん中が煙に包まれて……なんも見えねェぞ?
天音「……目くらましですか?今更そんな物に頼ったところで……どうなると?」
……ありがとう、紅音。私は紅音がしっかりと発煙弾で部屋を煙で包んだのを認識すると、自分の息を殺す。
必死に、彼女がいる場所を探す。
微かな音でも、聞き逃さないように……
ゆっくり、ゆっくりと、歩みを進めていく。
天音「……しかし、見えませんね。これでは牛頭馬頭の攻撃もままならない……」
……あぁ、ありがとう、間抜けに声を出してくれて。
おかげで分かったよ、貴女の位置が。
……私は、”ソレ”の先を力強く握って、振り上げる。
そして……煙が晴れた瞬間に。
紅音「……蓮夏!大丈夫なのか!?煙もう……足した方がいいか!?」
蓮夏「……大丈夫ですよ。これで終わりですから。」
それを、彼女の後頭部に振り下ろした。
天音「……なっ!?」
……煙が晴れて、その場にあるのは、彼女の倒れた姿。
そして……勝利した、私達。
もう部屋に牛頭馬頭は居なくて、彼女が死に……はしないように手加減はしたつもりだけど、それでも一旦異能が解除されるくらいの衝撃を与えられたことを示している。
……きっと、気絶だろう。
紅音「……おい、蓮夏、ソレ。」
紅音は私が手に持っているものを見て言う。
蓮夏「……あぁ、これ?……偶然部屋が寒かったから、ペットボトルの水、凍っちゃったみたい。」
……私は、部屋が冷気に包まれた時から、隠し持っていたペットボトルに水を満たしていた。
それは私の予想通りすっかり凍っていて、人を気絶させるには充分な硬さになっていたようだ。
蓮夏「……ま、作戦勝ち、だね?」
紅音「……そうだな。ありがとな、蓮夏。お前が居なかったら……オレだけだったら、絶対に勝てなかった。」
蓮夏「……それはこっちのセリフだよ。紅音が時間稼ぎしてくれたり、発煙弾で目くらまししてくれたり……紅音が居なきゃ、勝てなかった。」
紅音「……は、二人で掴んだ勝利、ってことか」
蓮夏「……そうだね、さぁ、先に進もう。きっと皆が待ってる。」
私達は、その部屋を後にした。
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