19.ペンタゴン①

……倉橋さんと別れて、私は異能力研究所に戻ってきた。


光「……おや、御出迎えですか?萩山さん。正面口で立ち惚けているとは」


私はそう言って、目の前の赤いショートヘアの女性……そして、同じくペンタゴンである、萩山天音さんに声を掛けた。


天音「……敷山さんが珍しく外出許可を貰って外出すると思えば、帰りがあまりに遅かったものですから。何をしていたんです?」


光「それについては……そうですね、もう夜も遅く、十一時を迎えそうですが……個室にいる他のペンタゴンを全て、招集してもらえますか?そこで伝えましょう。」


天音「はぁ……?……分かりました、連絡をとってはみますが……あとの三人、全員集まるか分かりませんよ?」


光「どうせ集まるでしょう?やることも無い暇人の集まりのようなものなのですから」


天音「それは……否定できないですね……分かりました」


そう言って萩山さんはズボンのポケットからスマホを取り出し、他のペンタゴンに招集をかけた。


……そして、数分後。


光「……どうですか?」


天音「全員、来れるそうです。では私たちは先に幹部室へ向かいましょうか」


光「そうしましょうか。何せ今回の話は重要な話ですからね。」


そう言って私たちは数分かけて、研究所内に置かれている幹部室に入った。


光「……しかし、毎度思いますが。私たち五人の為だけに、こんなに無駄に広い部屋を用意しなくてもいいと思うのですがね」


私は椅子に腰掛けながらそう萩山さんに問いかける。


天音「……それに関しては、私も同感ですが。もう少し狭くしても良いでしょうに……あぁ、そんな話をしていれば、早速一人来ましたね」


そう言われ扉の方を見ると、茶色いロングヘアの少女が居た。


光「……これはこれは、三角さん。夜分遅くに申し訳ありませんね。しかし、どうしても伝えたいことがありまして。」


……三角沙織さん。私は萩山さんと同じくペンタゴンの一員であるが、その中でも最年少だ。

彼女も……いや、萩山さん以外の全てのペンタゴンは何かしらの騒ぎを幼少期に起こしてここに来たと聞きますが……


沙織「……な、なんですか……?そんなに見ないでください……」


彼女の場合は、異能を用いた一つの市の消滅が、それに当たる。

異能が制御しきれず……そんなパターンが、私たちペンタゴンの基本的なここに来た理由だ。


???「……用とはなんだい?敷山」


そんなことを頭で考えていると、三角さんの後ろに大柄な男性が立っていた。


沙織「……わ、屍哉さん……!す、すいません!今退きます……!」


光「……おっとこれは、屍哉さん。夜分遅くに申し訳ありませんね。」


……屍哉梓忌さん。深緑色の髪がボサボサとしていて、あまり手入れをしていないように見える男性。

彼はペンタゴンの中では最年長であり、何やら所長とも創設時からの付き合いらしい。


梓忌「……問題ないよ。敷山、君が呼び出すということは、相当なことなのだろうからね」


光「話がわかるようで助かります。そして……来ましたね、最後の一人が」


???「……ったく、あいっかわらず辛気臭い奴らだな、おい光、何の用だ?つまんねー事だったらぶっ飛ばすからな」


そう言って、白いロングヘアの少女が、今度はやってきた。その身を宙に浮かせながら、だ。


光「……白雪さん。夜分遅くに申し訳ありません。」


白雪貉さん。この中で一番危険とも言っていい人物だ。

女子高生ながら、凶暴な性質を持ち合わせる暴れん坊だ。

……そして、彼女が浮いているのは、彼女自身の異能力……反重力を操る異能によるものだ。


貉「……うるせぇな、それ全員に言ってんだろ?上辺だけのつまんねぇやつはさっさと本題に入れよ」


光「……これは手厳しい。分かりました。では皆さんご着席を。」


……五人全員が、椅子に座る。

重い空気の中……私は口を開いた。


光「……単刀直入に言わせていただきます。これより私は、ペンタゴンを離反させていただく、とね。」


沙織「……え?」


天音「……はい?」


梓忌「……ほう」


貉「……へぇ?」


私への視線が、あまりに冷たいものになった。

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