18.突入準備②

その男は穏やかな顔をして、私に声をかけてきた。


???「……あぁ、おかえりなさい。少しお邪魔していますよ」


夜見「……貴方、誰?なんで家にいるの?」


???「……少し貴女……倉橋夜見さんとお話をしたく、家で待っていれば帰ってくるだろうと。」


夜見「……明里になにかしてないでしょうね」


???「あぁ、明里さんでしたら晩御飯を既に食べて眠っていますよ、とても可愛らしいお姿でした」


夜見「……何が目的?」


???「ですから、夜見さんとお話をすることです。」


夜見「……話って」


???「貴女がこれから相対する、ペンタゴンについてです。」


夜見「……それ、なんで知ってるの?」


???「なに、少し細工をしただけです。少し盗聴を……ね」


夜見「そう……貴方は敵なの?」


???「ええ……そうなってしまうでしょうね。なぜなら私は……」


???「そのペンタゴンが一人、敷山光なのですから」


夜見「っ……!?」


私は光と名乗った男から距離を取り、剣を構える。


光「まあそうカリカリせずに。なに、私とて貴女と争いたくは無い」


夜見「……どういうこと?ペンタゴンが、私になんの用?」


光「……夜とは、素晴らしいものでは無いですか?」


夜見「……は?」


光「暗く静まり返った世界……あぁ、これがずっと続けばいいのに。そう思ったことは?」


夜見「何を言いたいの……」


光「貴方なら、それが作れる。」


夜見「……どういうことよ」


光「今はまだ、知らぬ方がいいでしょう。……ですが私は、新たな夜の世界の支配者となる貴女を、お慕いしております。」


夜見「……?貴方はペンタゴン、敵でしょう?」


光「立場上はそうですね。しかし私が慕うのは新たなる永遠の闇をもたらすお方である貴女だ。ここはひとつ、お力添えをさせていただきたい。」


彼はそう言ってこちらに近づいてくる。


光「……聞いているのでしょう?ナイトとやら。」


……彼は、ナイトを呼んだ。


光「……出てきてもらっても、良いですか?これが聞こえているなら。」


その声に反応して、ナイトが姿を現した。


ナイト「……なんですか?」


光「あぁ、これはどうも……いえ、貴女と私は同じ立場の存在でしょう?」


ナイト「……はい?」


光「私も貴女も、夜見さんをお慕いし守る者……違いますか?」


ナイト「……貴方は……本当に夜見の事をそう思っているんですか?」


光「ええ、勿論ですとも……夜見さんの為ならば、今すぐペンタゴンを離脱して、今回の作戦に協力することも厭いませんよ?」


ナイト「……夜見?」


夜見「ここまで言うなら、私にとっても助かることだし……いいとは思うけれど……まず、貴方の異能を見せてもらってもいい?」


光「……あぁ、勿論ですよ。どうぞ。」


彼……光がそう言うと、住宅街一帯が、光り輝いた。


夜見「……え?」


光「こちらが私の異能……輝きを操る異能です。」


夜見「……?ペンタゴンは強大な力を持つと聞いたけれど……その程度なの?」


光「……今見せた限りでは、確かにそう思われてしまいますね。ですがこの異能は文字通りこの世の全ての輝きを操る能力なのです。」


夜見「……?」


光「わかりやすい所から言うと今からこの日本から輝きを消す……全国を一律で停電と同じような状態にできますし……あぁ、電力は使えてしまいますが。それに少し輝きという言葉の見方を変えてしまえば。

……人の心から輝きを奪い、集団自殺に導くことすら可能です。」


光は微笑を浮かべてそう言った。

……なるほど、そう思えば、かなり恐ろしいものかもしれない。


夜見「でも、何でそんなことを自分で認識できているの?」


光「……”やったことがある”からですよ」


夜見「……!」


光「まだ未熟で自身の異能を制御できなかった頃です、私は小さな集落に産まれました。

ある時、異能が暴走してしまいましてね。

……やってしまったのです、それを。」


夜見「そんなことを……」


光「その後私は研究所に確保され、今こうしている訳です。ですが……やはり諦めきれない。永遠に夜が続く世界を。だから、それができうる貴女に……こうして力添えを、と。」


夜見「最後のはよく分からないけど……分かった、それなら有難く力を貸してもらうよ」


光「あぁ、有り難きお言葉です。……そろそろ戻らなければ、処罰を受けるかもしれませんね。私はここで帰らせていただきます。それではまた明日。」


夜見「……うん、さようなら。光」


こうして……心強い味方ができた……?

まあいい、今は寝よう。


光「あぁ、最後に忠告を。私がいるとはいえ、残りの四人のペンタゴンもかなりの強者です。油断することなくをそれでは今度こそ、さようなら。」


そう言って光は去っていった。

……確かに、油断は禁物だ。その言葉を忘れないようにしながら、私は寝室に向かい、眠りについた。

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