13.少し遅れた転校生②

???「えー……ボクは夢咲雫。超能力者だよ。元々新学期早々にここに来るはずだったんだけど、色々あって遅れちゃって。まぁよろしくね」


……はぁ?

その言葉に男子は笑い、黄色い声をあげていた女子もしーんとした。

それは当然で、突然超能力者だと言われても、信じれる訳は無い。

でも……もしかしたら。私はこの時、嫌な予感がしていた。


……すると突然、男子の一人が席を立ち声を出した。

「本当に超能力者ならば、今ここで証明しろ」、と。

そりゃそうだ。ここで証明ができなければ、彼……夢咲雫は、一年間笑いものにされるだろう。

でも、そんな心配は杞憂だった。


雫「いいよ?どっちみち見せるつもりだったし、トクベツなボクのトクベツな力。ねぇ先生、そこの使われてない机、借りていい?」


塩崎「……え、いいけど。というかその机、夢咲くんの席だし」


雫「あ、そうなんだ?まぁいいや。じゃ、行くよ!」


そう言って彼が目を閉じると、その机が突然宙に浮かび上がった。

その光景を目にして、全員が唖然とした。

……私を除いて。


夜見『……ナイト』


ナイト『……はい。彼はきっと異能力者でしょう』


夜見『だよね。……また刺客?』


ナイト『にしては若過ぎますので、単なる異能力者のような気もしますが……』


雫「……”サイコキネシス”……物体を操る超能力だよ。これで分かったかな?ボクが超能力者だって。」


男子は声を出せず、女子は黄色い声を再びあげた。


雫「ま、自己紹介はこんなもんでしょ?なんか聞きたいことあるなら休み時間に聞いてよ」


そう言って彼……夢咲雫は、自分の席に座った。

……待って、よく見たら私の隣じゃん。

なんか意味不明な空いてる席あるなって思ってたけど……そういう事か。最初に言ってたこととも辻褄が合う。


雫「よろしくね、倉橋さん」


夜見「……あぁ、はい」


雫「……邪魔だなぁ」


隣の彼が、なにか小さい声で呟いた気がした。


夜見「……何か言った?」


雫「いやいや!何もないよ?」


夜見「……そう。」


そうしてホームルームが終わったけど、この日は一日中彼が注目の的だった。

男女問わず彼を囲む人混みができ、彼に色んな話を聞いていた。

これは転校生という理由だけでは無いのは明らかだ。

超能力者という噂を聞いて、ほかのクラスからも人が来たくらいだから。

……その間、私は蓮夏と話していた。


蓮夏「……ねぇ、あの転校生……夢咲さん、だっけ。超能力者だって皆騒いでるけど……もしかして……」


夜見「……蓮夏の考えてる通りだと思うよ。きっと彼は異能力者。でも、研究所の刺客にしては若過ぎるし、私を追ってきたならあそこまで目立つ必要は無い。」


蓮夏「……ってことは、夢咲さんは普通の異能力者ってこと……?いや、異能力者の時点で普通じゃないけど……」


夜見「多分、そうなんだと思う。」


蓮夏「……でも、それなら味方になってくれるんじゃないかな!」


夜見「……だといいけど。」


蓮夏「……?何か問題があるの?」


夜見「今日一日彼がクラスメイトと話してるのを聞いたけど……結構プライド高そうだから。味方にするなら、一筋縄じゃ行かないと思う」


蓮夏「……あー……」


そんな話をしていると、後ろから知った声が聞こえた。


ミコト「やぁ二人とも、こんにちは。何の話ししてたんだい?」


夜見「……あー、比良坂先生も知ってるでしょう、今話題の転校生の話ですよ」


ミコト「……あぁ、自己紹介でいきなり自分が超能力者だって言った子だよね?……で、本当に超能力者だった子。」


夜見「はい……きっと彼は異能力者です、でも多分、刺客では無いと思います。でも、プライドが高そうなので……味方にするのも、一筋縄ではいかないかと。」


ミコト「まぁ……態々転校生として来なくてもいいからね、にしても、プライドが高い、か……それは難しそうだね」


夜見「でしょう?味方にするにもどうしたものか……」


雫「ちょっと、なんの話ししてるんですか?ボクも聞きたいなぁ」


……後ろから、彼が来た。


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