14.少し遅れた転校生③

ミコト「あ、君がうわさの転校生?こんにちは、私はスクールカウンセラーの比良坂ミコトだよ、よろしくね」


雫「あぁ、よろしくお願いします、比良坂先生。ボクは夢咲雫って言います。……それで、何の話ですか?”異能力者”、って……」


夜見「っ!?」


蓮夏「なんで、それ……」


雫「いやぁ、ボクのトクベツな力の中には相手の心を読める”テレパシー”があってね。今日の朝、倉橋さんの心を見たら、そんな事を考えてたから。で?異能力者、ってなに?ボクは超能力者なんだけど。」


夜見「……超能力者でも、異能力者でも、どっちでもいいけど……君のことだよ」


雫「ボクのこと?だとしても異能力者って言う言葉は普通出ないよね、普通は超能力者って考えるはずだよ」


夜見「……面倒だな」


雫「もしかして……この世の中には、ボク以外にもトクベツな力を持った人がいる、ってこと?」


ミコト「……察しがいいね、助かるよ」


雫「へぇ……そうなんですか、それはそれは……」


雫が、顔をしかめた。


雫「許せないなぁ、邪魔だなぁ……!」


夜見「は?」


雫「トクベツなのはボクだけでいいんだよ、ボク以外にトクベツが居たらもうそれはトクベツじゃない……そうしたらボクは皆の人気者じゃなくなる、皆がボクの言うことを聞く、ボクの楽園が無くなるってことだよね?」


雫「許せない許せない許せない……邪魔邪魔邪魔……そんなヤツはボクがこの手で消さなきゃ……!なぁ、君たちもそうなんだろ?」


夜見「……あの、これ不味くないですか?どちらかと言うと彼の方が……」


ミコト「……あぁ、そういう事?でもね、今日は盗聴器つけられる前に家出てきたから、遥さんは来ないよ」


夜見「……あぁ、そうなんですか。それなら対等な戦いになりそうですね。」


雫「何ゴチャゴチャ言ってんの?君たちがボクに勝てる訳ないだろ?消してやるよ……!」


ミコト「ちょっと待ってね、そうするにしても、学校の外にしようか。この学校この前カウンセリングルームが爆破されたばかりなんだ。これ以上壊れると困る。」


雫「うるさいな」


その瞬間に、ミコト先生は吹き飛ばされ、壁に激突した。


ミコト「っ……!?」


蓮夏「ミコト先生!?」


夜見「……お前」


雫「なんだ、雑魚じゃん……次は倉橋さん、お前だよ」


夜見「もう話は通じないか……ナイト!」


ナイト「はい、夜見!」


雫「……?なんだお前、まぁいいや、ボクの前から消えろよ……!」


雫があの時と同じように目を閉じる。

私は剣を即座に具現化して構え、雫と距離を詰める。

ナイトと挟み込む形になるように。


雫「消えろっ!」


そう言って雫はサイコキネシスでナイトを吹き飛ばす、が……


夜見「甘いね。」


私は雫の身体を、最低限傷つかないように切り付けた。

そう、傷つかないように、だ。

それなのに……


雫「いっ……たぁ……!何すんだよ、お前……あぁ、痛い、痛い痛い……!」


雫はその場に倒れ込んだ。


夜見「……?そんなに力、込めてないよ。」


雫「うるさいなぁ痛い痛い痛い痛い……集中できない……力が使えない……!ボクはトクベツなのに……!」


夜見「……はぁ。特別なんかじゃないよ。貴方が思ってるより、この世の中には異能力者がいる。」


雫「うるさい!!!ボクはトクベツなんだよ……!だって、前の学校でも、皆ボクの言うことを喜んで聞いてくれた……!!!」


夜見「そんなわけ、無いでしょ。強引に従わされて……きっと心のどこかで、皆嫌がってたよ」


雫「うそだうそだうそだ、テレパシーしても誰もそんなこと……そんなこと……あれ?どうだったっけ……いつの間にかテレパシーしなくなってたような……」


夜見「……はぁ、呆れるなぁ……」


雫「ボクはトクベツで、皆がボクに従って……あれ……?」


夜見「……特別なんかじゃないって。私が知ってるだけでも、まだ三人、同じような人はいるよ」


雫「……は……?じゃあ今までのはなんなんだよ、皆ボクなんていらないのか……?」


夜見「そんなことは無いよ。少なくとも私は君を必要としてる」


雫「……どういうことだよ?ボクはお前を消そうとしたんだぞ?」


夜見「……異能力を研究する、そういう機関がある。そいつらは、私達異能力者を研究材料にする為、命を狙ってくるんだ」


雫「……だからなんだ」


夜見「私達は奴らを潰したい。だから、君にも力を貸してほしい」


雫「……でも見ただろ、今こうしてボクはお前に負けた」


夜見「……プライド高いくせに、そこはすぐ認めるんだ」


雫「……うるさいな」


夜見「とにかく、力を貸してほしい。君は弱点を突かれないなら、かなり強いから」


雫「お世辞はよせよ」


夜見「いいから協力して。それともここで殺されたい?」


雫「……狂ってるな、お前」


夜見「答えになってないよ」


雫「……分かった、協力するよ」


夜見「……その答え、待ってたよ。」


蓮夏「……それじゃ、仲直りしようよ」


夜見「あ、蓮夏」


蓮夏「なにその居たの?みたいな反応……確かに私戦いはできないけど……夜見の仲間なんだよ?」


夜見「ごめんごめん」


蓮夏「とにかく……ほら、夢咲さん、ジュースあげる。飲んで?」


そう言って蓮夏は何処に持っていたのかペットボトルに入ったジュースを雫に手渡した。


雫「……ありがとう、えっと……」


蓮夏「蓮夏。水浮蓮夏だよ。」


雫「ありがとう、蓮夏……有難く飲ませてもら……!?」


雫がペットボトルのフタを開けた瞬間、勢いよくジュースが吹き出し、雫の顔にかかった。


雫「……?」


蓮夏「夜見ちゃんを消すだなんて言ったからだよ。戦闘中ずっとペットボトル振ってて良かった。」


夜見「狂ってる……!?」


雫「お前……許せねぇけど今のボクじゃお前らには勝てない……最悪の気分だ……!」


こうして、私達は少し遅れてやってきた転校生、夢咲雫と出会った。

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